他の多くの アミノ酸・有機酸代謝異常症 アミノ酸・有機酸代謝異常症の概要 腎臓はかなりの量のアミノ酸を能動的に再吸収する。尿細管におけるアミノ酸輸送の異常としては シスチン尿症および ハートナップ病があり,これらについては別の箇所で考察している。アミノ酸・有機酸代謝異常症としては以下のものがある: 分枝鎖アミノ酸の代謝異常症 メチオニン代謝異常症 フェニルケトン尿症 チロシン代謝異常症 さらに読む と同様,尿素サイクル異常症とその関連疾患にも多数の病型がある(表 尿素サイクル異常症とその関連疾患 を参照)。 遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチ 遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチ 遺伝性代謝疾患(先天性代謝異常症)は大半がまれであるため,診断するには強く疑う必要がある。適切な時期に診断を下すことができれば,早期治療が可能となり,急性および慢性の合併症や発達障害,さらには死を回避できる可能性がある。 症状と徴候は非特異的となる傾向があり,それらは遺伝性代謝疾患以外の原因(例,感染)によって生じることの方が多いため,そうしたより可能性の高い原因も検討すべきである。... さらに読む も参照のこと。
原発性尿素サイクル異常症(UCD)には,カルバモイルリン酸合成酵素(CPS)欠損症,オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症,アルギニノコハク酸合成酵素欠損症(シトルリン血症),アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症(アルギニノコハク酸尿症),およびアルギナーゼ欠損症(アルギニン血症)がある。さらに,N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症も報告されている。酵素欠損がより「近位」になるほど高アンモニア血症の重症度も高くなるため,各疾患の重症度の順序は,高い方からNAGS欠損症,CPS欠損症,OTC欠損症,シトルリン血症,アルギニノコハク酸尿症,アルギニン血症となる。
UCDの遺伝形式は,OTC欠損症が X連鎖性 X連鎖劣性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む である以外は全て 常染色体劣性 常染色体劣性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む である。
症状と徴候
臨床像は軽度(例,発育不良,知的障害,発作性の高アンモニア血症)から重度(例,精神状態の変容,昏睡,死亡)まで様々である。OTC欠損症の女性患者における臨床像は,発育不全,発達遅滞,精神異常,発作性(特に分娩後)の高アンモニア血症を認めるものから男性患者と同様の表現型(すなわち,繰り返す嘔吐,易刺激性,嗜眠,高アンモニア血症による昏睡,脳浮腫,痙性,知的障害,痙攣発作,死亡)まで様々である。
診断
アミノ酸の血清中プロファイル
尿素サイクル異常症の診断は アミノ酸プロファイル 初回検査 遺伝性代謝疾患(先天性代謝異常症)は大半がまれであるため,診断するには強く疑う必要がある。適切な時期に診断を下すことができれば,早期治療が可能となり,急性および慢性の合併症や発達障害,さらには死を回避できる可能性がある。 症状と徴候は非特異的となる傾向があり,それらは遺伝性代謝疾患以外の原因(例,感染)によって生じることの方が多いため,そうしたより可能性の高い原因も検討すべきである。... さらに読む に基づく。例えば,オルニチンの高値はCPS欠損症またはOTC欠損症を意味し,一方シトルリンの高値はシトルリン血症を意味する。OTC欠損症でカルバモイルリン酸が蓄積すると,オロト酸への代替代謝が生じることから,CPS欠損症とOTC欠損症の鑑別にはオロト酸の測定が役立つ。遺伝子検査により診断を確定できる。
治療
タンパク質制限食
アルギニンまたはシトルリン補充
フェニル酪酸ナトリウム
場合により肝移植
尿素サイクル異常症の治療は食事でのタンパク質摂取制限であるが,同時に発育,発達,および正常なタンパク質代謝回転を維持できる十分な量のアミノ酸を与える。
現在ではアルギニンが治療の不可欠な要素となっている。それにより尿素サイクルの中間体を十分に供給することで,より多くの窒素成分が尿素サイクルの中間体に組み込まれるようにして,それらの中間体の排泄を促進する。アルギニンはまた,アセチルグルタミン酸合成の正の調節因子でもある。最近の研究では,OTC欠損症患者においてシトルリンの経口投与の方がアルギニンより効果的であることが示唆されている。
その他の治療は,安息香酸ナトリウム,フェニル酪酸,またはフェニル酢酸によるもので,これらはグリシン(安息香酸ナトリウム)およびグルタミン(フェニル酪酸およびフェニル酢酸)と抱合することによって「窒素排出(nitrogen sink)」を達成する。
このような治療法の進歩にもかかわらず,UCDの多くが依然として治療困難であり,最終的には多くの患者で肝移植が必要となる。肝移植のタイミングが極めて重要である。できれば乳児が成長して移植によるリスクが低下する年齢(1歳以上)に達するまで待機すべきであるが,中枢神経系に回復不能な障害を引き起こす高アンモニア血症(しばしば疾患に合併する)が併発するほど長く待たないことが重要である。