プリンサルベージ経路の異常

執筆者:Matt Demczko, MD, Mitochondrial Medicine, Children's Hospital of Philadelphia
レビュー/改訂 2020年 4月
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    プリンは,細胞のエネルギー系(例,ATP,NAD),信号伝達(例,GTP,cAMP,cGMP),およびピリミジンとともにRNAおよびDNA産生に重要な成分である。

    プリンは,de novo合成される場合と,正常な異化からのサルベージ経路によって再利用される場合がある。

    完全なプリン異化の最終産物は尿酸である。

    プリンサルベージ経路の異常に加え,プリン代謝異常症には以下の疾患も含まれる(プリン代謝異常症の表も参照):

    遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチおよび遺伝性代謝疾患が疑われる場合の検査も参照のこと。

    レッシュ-ナイハン症候群

    ヒポキサンチン-グアニントランスフェラーゼ(HPRT)の欠損に起因するまれなX連鎖劣性遺伝疾患であり,個々の遺伝子変異毎に欠損の程度が(したがって臨床像も)異なる。HPRTが欠損すると,ヒポキサンチンおよびアデニンのサルベージ経路の障害が発生する。これらのプリンはその代わりに尿酸へと分解される。さらに,イノシトール一リン酸およびグアノシル一リン酸の増加により,5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)から5-ホスホリボシルアミンへの変換が亢進し,尿酸の過剰産生がさらに増悪する。高尿酸血症は痛風およびその合併症の素因となる。患者にはいくつかの認知機能および行動機能障害もみられるが,その病因は明らかにはなっておらず,尿酸との関係はないとみられる。

    この疾患は,通常生後3カ月から12カ月までの間に尿中のオレンジ色の砂状析出物(キサンチン)を伴って発症し,知的障害,痙直型脳性麻痺,不随意運動,および自傷行動(特に噛みつき)を伴う中枢神経系障害へと進行する。その後,慢性の高尿酸血症により痛風症状(例,尿路結石症,腎症,痛風性関節炎,痛風結節)を来す。

    レッシュ-ナイハン症候群の診断は,ジストニア,知的障害,および自傷行動の併発によって示唆される。血清中尿酸値は通常上昇するが,DNA解析による確定診断が行われる。

    中枢神経系機能障害に対する治療法は不明で,管理法は支持療法である。自傷行動には身体的拘束や抜歯,ときに薬物療法が必要になることがあり,様々な薬剤が使用されている。高尿酸血症の治療は,低プリン食療法(例,内臓肉,豆類,イワシの摂取回避)およびキサンチン酸化阻害物質であるアロプリノール(プリン異化経路における最終酵素)の投与である。アロプリノールは蓄積したヒポキサンチンの尿酸への変換を阻止し,ヒポキサンチンは非常に溶解度が高いため,容易に排泄される。

    アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症

    まれな常染色体劣性遺伝疾患であり,プリン合成でのアデニンの再利用を妨げる。蓄積したアデニンが酸化されて2,8-ジヒドロキシアデニンになり,これが尿路内で析出することで,尿酸腎症と同様の問題が生じる(例,腎仙痛,頻回の感染,診断が遅れた場合は腎不全)。あらゆる年齢で発生する。

    アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症の診断は,尿中の2,8-ジヒドロキシアデニン,8-ヒドロキシアデニン,およびアデニンの高値を検出することによって行われ,DNA解析によって確定されるが,血清中尿酸値は正常である。

    アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症の治療は,食事でのプリンの摂取制限,大量の水分摂取,および尿アルカリ化の回避による。アロプリノールでアデニンの酸化を防ぐことができ,末期腎臓病には腎移植が必要になることがある。

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