フルクトース代謝異常症

執筆者:Matt Demczko, MD, Mitochondrial Medicine, Children's Hospital of Philadelphia
レビュー/改訂 2020年 4月
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    フルクトース代謝酵素の欠損は,無症状のことも,低血糖を引き起こすこともある。

    フルクトースは単糖類で,果実および蜂蜜に高濃度で含まれ,スクロースおよびソルビトールの構成成分の1つである。フルクトース代謝異常症は,数多くある糖代謝異常症の1つである。

    遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。

    フルクトース1-リン酸アルドラーゼ(アルドラーゼB)欠損症

    この欠損症は遺伝性フルクトース不耐症の臨床症候群を引き起こす。遺伝形式は常染色体劣性であり,発生率は出生20,000人当たり1例と推定されている。乳児はフルクトースを摂取するまでは健康であるが,摂取後はフルクトース1-リン酸の蓄積により,低血糖,悪心および嘔吐,腹痛,発汗,振戦,錯乱,嗜眠,痙攣発作,ならびに昏睡を来す。フルクトースの摂取を続けると,肝硬変,精神遅滞,ならびにリン酸塩およびグルコースの尿中への喪失を伴う近位尿細管性アシドーシスを起こすことがある。

    フルクトース1-リン酸アルドラーゼ欠損症の診断は,直近のフルクトース摂取に関係する症状によって示唆され,DNA解析により確定される。過去には診断確定のための検査として,肝生検またはフルクトース200mg/kgの静注による低血糖の誘発が行われていた。

    遺伝子変異がヘテロ接合体の保因者の診断および同定は,直接DNA分析によっても可能である。(遺伝性代謝疾患が疑われる場合の検査も参照のこと。)

    フルクトース1-リン酸アルドラーゼ欠損症の短期的治療は,低血糖に対するブドウ糖投与であり,長期的治療は食事からのフルクトース,スクロース,およびソルビトールの除去である。多くの患者はフルクトースを含有する食物に対して自然に嫌悪感を示す。治療を行えば,予後は極めて良好である。

    フルクトキナーゼ欠損症

    この欠損症は,血中および尿中フルクトース値の無害な上昇を引き起こす(良性フルクトース尿症)。遺伝形式は常染色体劣性であり,発生率は出生130,000人当たり約1例である。

    この病態は無症状であり,尿中にグルコース以外の還元性物質が検出されることで偶発的に診断される。

    フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症

    この欠損症では,糖新生が障害されることにより,空腹時低血糖,ケトーシス,および代謝性アシドーシスが引き起こされる。新生児では,この欠損症により死に至ることがある。遺伝形式は常染色体劣性であり,発生率は不明である。熱性疾患が誘因となって発症することがある。

    フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症の急性期の治療は,ブドウ糖の経口または静脈内投与である。絶食への耐容性は一般的に年齢とともに高まる。

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