ガラクトース血症

執筆者:Matt Demczko, MD, Mitochondrial Medicine, Children's Hospital of Philadelphia
レビュー/改訂 2020年 4月
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ガラクトース血症は糖代謝異常症の1つであり,ガラクトースをグルコースに変換する酵素が遺伝学的に欠乏することによって引き起こされる。症状と徴候としては,肝および腎機能障害,認知障害,白内障,早発卵巣不全などがある。診断は赤血球の酵素分析およびDNA解析による。治療法は食事からのガラクトースの除去である。身体的予後は治療により良好となるが,認知性および動作性のパラメータはしばしば正常とならない。

ガラクトースは乳製品,果物,および野菜に含まれる。常染色体劣性の酵素欠損症は3つの臨床症候群を引き起こす。

遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症

この欠損症は古典的ガラクトース血症を引き起こす。発生率は出生62,000人当たり1例で,保因者の頻度は125人当たり1例である。乳児は,母乳またはラクトースを含有する人工乳を摂取してから数日ないし数週以内に食欲不振となり,黄疸が出現する。嘔吐,肝腫大,発育不良,嗜眠,下痢,および敗血症(通常は大腸菌[Escherichia coli])が発生するとともに,腎機能障害(例,タンパク尿,アミノ酸尿,ファンコニ症候群)を呈し,代謝性アシドーシスおよび浮腫に至る。溶血性貧血を起こすこともある。

無治療の場合,患児は青年になっても低身長にとどまり,認知機能,発語機能,歩行機能,およびバランス機能に障害が現れ,さらに白内障,骨軟化症(高カルシウム尿症が原因),および早発卵巣不全がみられることも多い。Duarte型の患者では表現型がはるかに軽症である。

ガラクトキナーゼ欠損症

浸透圧により水晶体線維に損傷を与えるガラクチトールの産生により白内障を発症し,まれに特発性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)を来す。発生率は出生40,000人当たり1例である。

ウリジン二リン酸ガラクトース4-エピメラーゼ欠損症

良性および重症の表現型が存在する。良性型の発生率は,日本において出生23,000人当たり1例であるが,より重症型の発生率についてはデータが得られていない。良性型は酵素欠損が赤血球および白血球に限られ,臨床的な異常を生じない。重症型は古典的ガラクトース血症と鑑別不能な症候群を引き起こすが,ときに難聴を伴うことがある。

診断

  • ガラクトース値

  • 酵素分析

ガラクトース血症の診断は臨床的に示唆され,尿中のガラクトースの高値およびグルコース以外の還元性物質(例,ガラクトース,ガラクトース1-リン酸)の検出によって裏付けられ,DNA解析または赤血球,肝組織,もしくはその両方の酵素分析によって確定される。米国の大半の州では,ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の新生児スクリーニングをルーチンに行うよう義務づけられている。(遺伝性代謝疾患が疑われる場合の検査も参照のこと。)

治療

  • ガラクトース制限食

ガラクトース血症の治療法は食事中のガラクトース源全ての除去であるが,その中でも最も重要なガラクトース源であるラクトースは,母乳のほか,ミルクベースの乳児用人工乳など,あらゆる乳製品に含まれており,甘味料として多くの食品に使用されている。ラクトースを含まない食事によって急性毒性を予防でき,一部の臨床像(例,白内障)が回復するが,神経認知障害は予防できないことがある。多くの患者がカルシウムおよびビタミンの補充を必要とする。エピメラーゼ欠損症の患者では,様々な代謝過程へのウリジン-5-二リン酸-ガラクトース(UDP-ガラクトース)の供給を確保するために一定量のガラクトース摂取が不可欠である。

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