尿管奇形

執筆者:Ronald Rabinowitz, MD, University of Rochester Medical Center;
Jimena Cubillos, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2020年 9月
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    尿管奇形は高率で腎奇形を伴うが,単独で発生することもある。合併症としては以下のものがある:

    • 閉塞,膀胱尿管逆流,感染症,および結石形成(尿停滞による)

    • 尿失禁(尿管が膀胱を迂回して尿道,会陰部,または腟に連絡することによる)

    尿管奇形の診断は,ルーチンの出生前超音波検査の異常(例,水腎症)や,ときに身体診察での異常(例,異所性外尿道口の所見または触知可能な腫瘤)から示唆されることがある。腎盂腎炎または反復する尿路感染症の既往がある小児,および持続的な尿失禁がみられる女児では尿管奇形を疑うべきである。検査としては,典型的には排尿前後の腎臓,尿管,および膀胱の超音波検査とその後にX線透視下で排尿時膀胱尿道造影を施行する。

    尿路奇形の治療は手術による。

    尿管異所開口

    単一の尿管または重複尿管の開口部が,外側膀胱壁上,膀胱三角部沿いの遠位部,膀胱頸部,括約筋より遠位の女性尿道(正常な排尿パターンにかかわらず持続性尿失禁を来す),生殖器系(男性では前立腺および精巣,女性では子宮または腟),または体外表に異所性にみられることがある。側方の異所開口では高率で膀胱尿管逆流を来すのに対し,遠位の異所開口では閉塞および失禁を来すことが多い。閉塞および失禁のため,またときに膀胱尿管逆流のため,手術が必要となる。

    大静脈後尿管

    大静脈の発生異常(尿管前大静脈)が原因で腎臓下部大静脈が尿管(通常は右側尿管)の前方に形成された状態であり,左側の大静脈後尿管は左主静脈系の遺残か完全内臓逆位がある場合にのみ発生する。

    大静脈後尿管では尿管閉塞を来すことがある。著明な尿管閉塞には,尿管を外科的に分断した後,大静脈または腸骨血管の前方で尿管-尿管吻合を行う。

    尿管の重複奇形

    尿管はその片方または両方が部分的または完全に重複することがあり,さらに同側腎盂の重複も伴う。完全重複では,腎上極から出る尿管が下極尿管の開口部よりも尾側に開口する。その結果,病態を呈する場合には,下極では逆流が起きやすく,上極では閉塞が起きやすい。片側または両側の尿管口の位置異常または狭窄,下方または両方の尿管への膀胱尿管逆流,および尿管瘤形成を来すことがある。閉塞,膀胱尿管逆流,または尿失禁がある場合には,手術が必要になることがある。不完全重複の場合,臨床的意義はほとんどない。

    尿管狭窄

    尿管の狭小化はあらゆる部位で発生しうるが,腎盂尿管移行部で最も多くみられ,尿管膀胱移行部での発生(原発性巨大尿管症)は比較的まれである。その結果として,感染,血尿,閉塞などが生じる。狭窄はしばしば成長とともに解消されていく。

    原発性巨大尿管症では,拡張が増強するか感染または閉塞が発生する場合に,尿管のテーパリングや再填術が必要になることがある。腎盂尿管移行部閉塞では,腎盂形成術(閉塞部の切除と再吻合)を開腹,腹腔鏡下,またはロボット手術で施行することができる。

    尿管瘤

    局所的な閉塞を伴って尿管下端が膀胱内に脱出した状態であり,進行性の尿管拡張症,水腎症,感染,ときに結石形成,および腎機能障害を引き起こす可能性がある。尿管瘤の治療選択肢としては,内視鏡的経尿道的切開術や観血的修復などがある。

    尿管瘤が重複尿管の上極に発生する場合は,高頻度で腎臓の異形成を伴うため,治療は問題の腎分節の機能に基づき決定される。腎機能が部分的にも認められない場合または重大な腎異形成が疑われる場合は,閉塞部を修復するよりも腎臓と尿管の障害分節を摘出する方が望ましい場合がある。あるいは,同側尿管尿管吻合術を施行して閉塞部をバイパスしてもよい。

    まれな例では,尿管瘤が膀胱頸部を越えて脱出し,下部尿路閉塞を引き起こす。これは女児では陰唇間腫瘤(interlabial mass)として現れる。

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