スタージ-ウェーバー症候群

執筆者:M. Cristina Victorio, MD, Akron Children's Hospital
レビュー/改訂 2020年 3月
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スタージ-ウェーバー症候群は,顔面のポートワイン母斑,軟膜血管腫,および神経合併症(例,痙攣発作,局所神経脱落症状,知的障害)を特徴とする先天性血管障害である。診断は臨床的に行う。治療は対症療法である。

スタージ-ウェーバー症候群は,50,000人に1人の頻度で発生する神経皮膚症候群である。スタージ-ウェーバー症候群は遺伝しない。染色体9q21にあるGNAQ遺伝子の体細胞突然変異(受胎後に罹患領域の前駆細胞に発生したDNA変化)が原因である。

スタージ-ウェーバー症候群では,ポートワイン母斑と呼ばれる(ときにポートワイン血管腫とも呼ばれる)毛細血管奇形がみられ,その病変は典型的には前額部および上眼瞼の三叉神経第1枝および/または第2枝の分布域に生じる。同様の血管病変である軟膜血管腫は,ポートワイン母斑が一側の上眼瞼と下眼瞼にみられる場合は90%の症例で発生するが,いずれかの眼瞼のみの場合は10~20%にしか発生しない。通常,母斑と軟膜血管腫は一側性であるが,まれに三叉神経第1枝の分布域に両側性のポートワイン母斑と両側性の軟膜血管腫がみられることがある。

ポートワイン母斑が軟膜血管腫やそれに伴う神経徴候を認めずに発生することもあり,そのような場合,眼や眼瞼に病変が及ぶことともあれば及ばないこともある。まれに,ポートワイン母斑および眼病変を伴わず,軟膜血管腫が発生することがある。

スタージ-ウェーバー症候群の神経合併症としては,痙攣発作,局所神経脱落症状(例,不全片麻痺),知的障害などがみられる。

スタージ-ウェーバー症候群は,緑内障および血管狭小化を引き起こすこともあり,その結果,血栓症,静脈閉塞,または梗塞による脳卒中のリスクが増大する可能性がある。

しばしば,侵された大脳半球が進行性に萎縮する。

症状と徴候

ポートワイン母斑の大きさと色調は多様であり,色調は明桃色から深紫色まである。

痙攣発作は全症例の約75~90%でみられ,典型例では1歳までに始まる。通常は焦点発作であるが,全般化する可能性がある。ポートワイン母斑の対側の不全片麻痺が全症例の25~50%でみられる。特に痙攣のコントロールができない症例ではときに不全片麻痺が悪化する。

全症例の約50%で知的障害がみられ,より多くの患者で学習面に何らかの困難がみられる。発達が遅れることがある。

緑内障は出生時またはその後にみられることがある。眼球が腫大して眼窩から突出する(牛眼)ことがある。

診断

  • 脳MRIまたは頭部CT

スタージ-ウェーバー症候群の診断は,特徴的なポートワイン母斑から示唆される。

軟膜血管腫の確認には造影脳MRIが用いられるが,非常に若年の小児ではまだ血管腫が現れていない場合がある。MRIを利用できない場合は頭部CTを施行するが,軟膜血管腫の下部の皮質に石灰化を認めることがある。古い文献で言及されている頭部X線撮影での鉄道線路に似た並行した曲線状の石灰化病変は,成人期に発生する。

神経学的合併症の有無を確認するために神経学的診察を行い,眼の合併症の有無を確認するため眼科診察を行う。

治療

  • 対症療法

スタージ-ウェーバー症候群の治療は症状に焦点を合わせる。抗てんかん薬および緑内障治療薬が使用される。痙攣発作が難治性の場合には,ときに半球切除術が施行される。

通常は低用量でアスピリンが投与され,診断時に開始されるが,これは,おそらくは異常な毛細血管における凝集を阻止することにより,脳卒中の予防または進行性半球萎縮の軽減に役立つ。

選択的光熱融解(selective photothermolysis;パルス色素レーザー)によって,ポートワイン母斑の色を薄くすることが可能である。β遮断薬の局所投与による治療に関する試験が進行中である。

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