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慢性的な健康障害を有する小児

執筆者:

Deborah M. Consolini

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

レビュー/改訂 2020年 3月
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慢性的な健康障害(chronic health condition:慢性疾患と慢性的な身体障害の両方を指す)とは,12カ月以上継続し,通常の活動に何らかの制約が生じる健康状態と一般的に定義される。基準によるが,10~30%の小児が慢性的な健康障害をもつと推定されている。慢性疾患の例としては, 喘息 乳幼児における呼気性喘鳴および喘息 呼気性喘鳴(wheezing)とは,末梢気道の狭小化したまたは圧迫された部位を空気が通る際に生じる比較的高調な笛様の雑音である。生後数年間に最もよくみられ,典型的には気道のウイルス感染または喘息により起こるが,可能性のある他の原因として刺激物またはアレルゲンの吸入,食道逆流,および心不全などがある。 (成人における 呼気性喘鳴および 喘息も参照のこと。) 反復性の呼気性喘鳴は生後数年間はよくみられる;小児3人に1人が,3歳までに少なくと... さらに読む 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症は,主に消化器系と呼吸器系を侵す外分泌腺の遺伝性疾患である。慢性肺疾患,膵外分泌機能不全,肝胆道疾患,および汗の電解質濃度の異常高値を引き起こす。診断は,新生児スクリーニング検査で陽性と判定された患者または特徴的な臨床的特徴を認める患者において,汗試験を行うか,嚢胞性線維症の原因遺伝子変異を2つ同定することによる。治療は,積極... さらに読む 嚢胞性線維症 先天性心疾患 心血管系の先天異常の概要 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む 心血管系の先天異常の概要 糖尿病 小児および青年における糖尿病 糖尿病にはインスリン分泌の欠乏(1型)または末梢のインスリン抵抗性(2型)が関連し,結果,高血糖が生じる。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および体重減少などがある。診断は血漿血糖値の測定による。治療は病型によって異なるが,血糖降下薬,食事,および運動などである。 (成人の 糖尿病も参照のこと。) 小児の糖尿病の種類は成人のものと同様であるが,心理社会的な問題が異なり,これが治療を複雑にする。... さらに読む 注意欠如・多動症 注意欠如・多動症(ADD,ADHD) 注意欠如・多動症(ADHD)は,不注意,多動性,および衝動性から構成される症候群である。不注意優勢型,多動性・衝動性優勢型,混合型の3つの病型に分類される。診断は臨床的な基準により下される。治療では通常,精神刺激薬による薬物療法,行動療法,教育的介入などが行われる。 注意欠如・多動症(ADHD)は,神経発達障害と考えられている。神経発達障... さらに読む うつ病 小児および青年における抑うつ障害 抑うつ障害は,機能の障害やかなりの苦悩を発生させるほど重度または持続的な悲しみまたは易怒性を特徴とする。診断は病歴および診察による。治療は,抗うつ薬,支持療法および認知行動療法,またはこれらの治療法の組合せによる。 (成人における 抑うつ障害群の考察も参照のこと。) 小児および青年の抑うつ障害としては以下のものがある: 重篤気分調節症 うつ病 さらに読む などが挙げられる。慢性的な身体障害の例には, 脊髄髄膜瘤 二分脊椎 二分脊椎とは,脊柱の閉鎖に欠陥が生じた状態のことである。原因は不明であるが,妊娠中の葉酸低値によりリスクが増大する。無症状の患児もいるが,病変より下位に重度の神経機能障害を呈する患児もいる。開放性二分脊椎は,超音波検査による出生前診断が可能であり,母体血清中または羊水中α-フェトプロテイン濃度の高値からも示唆される。典型例では,出生後に背部に病変を見ることができる。通常,治療法は手術である。... さらに読む 聴覚障害 小児の聴覚障害 難聴の一般的な原因は,新生児では遺伝子異常,小児では耳の感染症および耳垢である。多くの症例がスクリーニングにより検出されるが,小児が音に反応しない場合または言語発達の遅滞がみられる場合は,難聴を疑うべきである。診断は通常,新生児では電気診断検査(誘発耳音響放射検査および聴性脳幹反応)により,小児では診察およびティンパノメトリーによる。不可... さらに読む 小児の聴覚障害 または視覚障害, 脳性麻痺 脳性麻痺症候群 脳性麻痺は,出生前の発育異常または周産期もしくは出生後の中枢神経系損傷に起因する,随意運動または姿勢制御の障害を特徴とする非進行性の症候群である。症状は2歳までに出現する。診断は臨床的に行う。治療法としては,理学療法,作業療法,装具,薬物療法またはボツリヌス毒素の注入,整形外科手術,バクロフェンの髄腔内投与,特定の症例における脊髄後根切断... さらに読む ,四肢機能の喪失などがある。

小児に及ぼす影響

慢性的な健康障害をもつ小児には,何らかの活動制限,頻繁な疼痛および不快,成長および発達の異常がみられる可能性があり,またより頻回の入院,外来通院,薬物療法が必要になる場合がある。重度の障害をもつ小児は,ときとして学校生活や仲間との活動に参加できない場合もある。

慢性的な健康障害に対する小児の反応は,その障害がどの発達段階で発生するかに大きく依存する。慢性的な障害が乳児期に発症する場合と,青年期に発症する場合とでは,小児は異なる反応をみせる。学齢期の場合,通学できないことや仲間との関係を築けないことが小児に最も大きな影響を与えうる。青年では,もし日常生活の多くの場面で親や他の人からの補助を必要とする場合,自立できないことに対して苦悩する可能性がある;親は子どもの能力の範囲内での独立独行を奨励し,過保護を避けるべきである。青年期は,仲間と同様であることが非常に重要な時期であるため,他の同世代の人と違っているとみられることに特につらさを感じる(1 総論の参考文献 慢性的な健康障害(chronic health condition:慢性疾患と慢性的な身体障害の両方を指す)とは,12カ月以上継続し,通常の活動に何らかの制約が生じる健康状態と一般的に定義される。基準によるが,10~30%の小児が慢性的な健康障害をもつと推定されている。慢性疾患の例としては, 喘息, 嚢胞性線維症, 先天性心疾患, 糖尿病, 注意欠如・多動症, うつ病などが挙げられる。慢性的な身体障害の例には,... さらに読む )。

医療従事者は,慢性的な健康障害をもつ小児が適切な医療サービスを受けるための代弁者となることができる。年齢相応の遊戯室の設置や,訓練を受けたチャイルド・ライフ・スペシャリストの監視下における学校プログラムの開始が可能である。小児には,可能であればいつでも友人と交流するように励ます。処置および計画は全て,いつでも可能な時に家族および患児に説明すべきであり,これにより家族は入院中に何が起こりうるのかを知り,不確かさから生じる不安を軽減することができる。

家族に及ぼす影響

家族にとって慢性的な健康障害の子どもをもつことは,「理想の」子どもへの希望の喪失,同胞に対する注意の欠如,大きな支出や時間の工面,医療制度の矛盾から生じる困惑,機会の喪失(例,児の世話を主に行っている家族が,そのために職場復帰ができない),社会的孤立などにつながりうる。同胞は,障害をもつ児に多くの注意が向けられることに反感を抱くことがある。そのようなストレスは,特にすでに家族機能に問題が生じている場合には,家族崩壊の原因となりうる。

乳児の身体的外観に影響する病態(例, 口唇口蓋裂 口唇裂および口蓋裂 口唇裂,口唇口蓋裂,および単独の口蓋裂を総称して,口腔裂と呼ぶ。口腔裂は最も頻度の高い頭頸部先天奇形であり,全体での有病率は出生1000人当たり2.1例である。環境因子と遺伝因子の両方が原因として推定されている。出生前の母親による喫煙および飲酒によってリスクが増大する。罹患児が1人いると,2人目の罹患リスクが高くなる。このリスクは,受胎前から第1トリメスターにかけて葉酸を摂取することで低減できる。... さらに読む 口唇裂および口蓋裂 水頭症 水頭症 水頭症とは,過剰な量の髄液が集積した状態であり,脳室拡大および/または頭蓋内圧亢進が生じる。症状と徴候には,頭部拡大,泉門膨隆,易刺激性,嗜眠,嘔吐,痙攣などがある。診断は,閉鎖前の泉門がある新生児および幼若乳児では超音波検査により,月齢の高い乳児および小児ではCTまたはMRIによる。治療は重症度と症状の進行度に応じて,経過観察から外科的介入までに及ぶ。 水頭症では,頭蓋腔内の過剰な髄液に起因する内圧上昇により,頭蓋骨が異常に拡大するこ... さらに読む 水頭症 )は,児と家族または養育者との絆にも影響を及ぼしうる。一旦,異常との診断が下されると,親はショック,否定,怒り,悲しみまたは抑うつ,自責の念,不安などの反応を示す。こうした反応は,児の発達のどの時期でも起こることがあり,また父親と母親とで受容の段階が異なる場合があるため,両親の間でコミュニケーションが困難となりうる。親は医療従事者に対して怒りを表すこともあり,また現実を否定するあまりに,児の状態について様々な意見を聞いて回ることもある。

ケアの連携

サービスの連携なしには,ケアは危機志向(crisis-oriented)になる。サービスが重複することもあれば,おろそかにされることもある。ケアの連携には,患児の状態,家族および支援システム,患児や家族が生活する地域社会についての情報が必要となる。

慢性的な健康障害を有する小児のケアを担当する全ての専門家は,確実に誰かがケアの連携を図るよう調整しなければならない。ときには親が連携役になることも可能である。しかしながら,制度利用のための交渉はしばしば非常に複雑であるため,いかに有能な親でも支援が必要になる場合がある。他の調整役候補としては,プライマリケア医,専門のプログラムスタッフ,地域の保健師,第三者支払い機関のスタッフが挙げられる。誰がサービスの連携を行うにしろ,家族と患児がその過程に参画しなければならない。一般に,低所得家庭の慢性障害をもつ小児は他と比べて状況が良くないが,この理由として1つには医療およびケアの連携へのアクセスが不足していることが挙げられる。末期疾患の小児には, ホスピスケア ホスピス 臨死患者には,他の患者とは異なるニーズがある可能性がある。このニーズを満たすために,まずどの患者が臨死状態にあるかを同定する必要がある。死に至る前に,患者は3種類の一般的な機能低下の軌跡の1つをたどる傾向がある: 限定的な期間で機能低下が着実に進行(例,進行性のがんに典型的) 着実に進行しないこともある重度の機能障害が,長期かつ不確定な期... さらに読む が有益となりうる。

総論の参考文献

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