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空回腸閉鎖

執筆者:

William J. Cochran

, MD, Geisinger Clinic

レビュー/改訂 2019年 8月
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空回腸閉鎖は,小腸の一部の形成が不完全となる病態である。診断は腹部X線による。治療は外科的修復である。

空回腸閉鎖がある新生児では,通常,出生当日の後半から生後2日目までに,増強する腹部膨隆,便通不全,嘔吐,および哺乳困難で発症する。

病因

空回腸閉鎖は,在胎中の虚血性損傷の結果として発生する。虚血性損傷は, 腸重積 腸重積症 腸重積症とは,腸管の一部(内筒)が隣接部位(外筒)に嵌入した状態のことで,腸閉塞やときに腸管虚血を引き起こす。診断は超音波検査による。治療は空気注腸のほか,ときに手術による。 腸重積症は一般に,生後6カ月から3歳までに発生し,そのうち65%が1歳未満,80~90%は2歳未満で発生する。本症は,この年齢層における腸閉塞の原因として最も頻度の高い病態であり,4歳未満の小児にほぼ男女差なく発生する。4歳以上の小児では,腸重積症は男性ではるかに... さらに読む 穿孔 消化管の急性穿孔 消化管の穿孔はいずれの部位にも生じる可能性があり,胃や腸管の内容物が腹腔内に放出される。原因は様々である。症状は重度の疼痛を伴って突然出現し,その直後にショックの徴候が出現する。診断は通常,画像検査で腹腔内に遊離ガスが認められることで下される。治療は輸液蘇生(fluid resuscitation),抗菌薬,および手術による。死亡率は高く,基礎疾患および患者の全体的な健康状態によって異なる。... さらに読む 消化管の急性穿孔 ,腸捻転,ヘルニアに伴う腸管の絞扼,または血栓塞栓症によって生じうる。母体の喫煙とコカイン使用が腸閉鎖と関連することが報告されている。推定発生率は出生10,000人当たり約1~3例である。本症は男女に等しく発生する。空回腸閉鎖は,空腸と回腸で同等に発生する。

先天異常の合併がみられる頻度は,空回腸閉鎖の方が 十二指腸閉鎖 十二指腸閉鎖 十二指腸は閉鎖,狭窄,または腫瘤からの外的圧力によって閉塞する可能性がある。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) この奇形は消化管閉鎖で3番目に頻度が高い。推定発生率は出生5000~10,000人当たり1例である。十二指腸閉鎖の原因は,胎児十二指腸における疎通の異常である。この異常には,虚血または遺伝因子が関連している可能性がある。 十二指腸閉鎖は他の腸閉鎖と異なり,... さらに読む 十二指腸閉鎖 より少ない。最も高頻度に合併する病態は, 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症は,主に消化器系と呼吸器系を侵す外分泌腺の遺伝性疾患である。慢性肺疾患,膵外分泌機能不全,肝胆道疾患,および汗の電解質濃度の異常高値を引き起こす。診断は,新生児スクリーニング検査で陽性と判定された患者または特徴的な臨床的特徴を認める患者において,汗試験を行うか,嚢胞性線維症の原因遺伝子変異を2つ同定することによる。治療は,積極... さらに読む 嚢胞性線維症 腸回転異常症 腸回転異常症 腸回転異常症とは,子宮内での発生過程において腸管が腹腔内の正常な位置に収納されなかった状態である。診断は腹部X線による。治療は外科的修復である。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) 腸回転異常症は,最も頻度の高い小腸の先天奇形である。出生200人当たり1例に無症候性の腸回転異常症がみられるが,症候性の腸回転異常症の頻度はこれよりも低い(出生6000人当たり1例)。 発生過程において,原始腸管は一度腹腔内から脱出する。その後腹腔... さらに読む 腸回転異常症 ,および 腹壁破裂 腹壁破裂 腹壁破裂は,腹壁全層の欠損部から腹部内臓が脱出した状態であり,通常は臍帯付着部の右側に発生する。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) 推定発生率は出生2500人当たり1例である(臍基部の正中部欠損孔から腹部内臓が脱出する 臍帯ヘルニアより多い)。腹壁破裂では,臍帯ヘルニアとは異なり腸管が膜で覆われておらず,腸管は著明な浮腫および発赤を呈し,しばしばフィブリンのマットに包まれる。これらの所見は,腸管が羊水に直接曝露していたために... さらに読む 腹壁破裂 であり,いずれも本症の症例の約10%でみられる。腹膜石灰化は,胎便性腹膜炎の存在を示唆するもので,これは子宮内での腸穿孔の徴候であり,約10%の症例でみられる。胎便性腹膜炎を認めた場合, 胎便性イレウス 胎便性イレウス 胎便性イレウスは,異常に粘稠度の高い胎便によって生じる回腸末端の閉塞であり,嚢胞性線維症の新生児で最もよく起こる。胎便性イレウスは,新生児の小腸閉塞の最大33%を占める。症状としては,胆汁性嘔吐,腹部膨隆,出生後数日間の胎便の排泄不全などがある。診断は臨床像およびX線検査に基づく。治療はX線透視下に行う希釈造影剤の注腸,および注腸が失敗した場合は手術による。 胎便性イレウスは,消化管分泌物が極めて粘稠となり腸管粘膜への接着性が増大する... さらに読む と嚢胞性線維症を疑うべきである。

分類

空回腸閉鎖は5つの病型に大別される:

  • I型は,膜によって回腸が完全閉塞されるが,腸管自体に異常はないものである。

  • II型は,腸管の間隙に口側と肛門側をつなぐ線維索を伴うものである。

  • IIIA型は,腸間膜が間隙となり,間隙部分に一切連絡が存在しないものである。

  • IIIB型は,空腸閉鎖に加えて肛門側の上腸間膜動脈の欠損を伴うもので,肛門側の小腸は剥かれたリンゴの皮に似たコイル状の形態を呈し,腸管が短縮する。

  • IV型は,複数の分節から構成されるものである(ソーセージ様に見える)。

診断

  • 腹部X線

腹部単純X線を施行し,鏡面像を伴う小腸係蹄の拡張と結腸内および直腸内の空気の欠乏を認める。下部消化管造影により(廃用に起因する)microcolonが明らかになる。

治療

  • 外科的修復

空回腸閉鎖の術前管理は,経鼻胃管の挿入,経口栄養の禁止,および輸液から成る。

外科的修復が根治的治療である。手術時には,腸管全体を調べて閉鎖部が複数存在していないか確認すべきである。閉鎖部を切除し,通常は一次吻合を行う。回腸の口側部が極度に拡張し,使われていない肛門側腸管との吻合が困難な場合は,二連銃式回腸瘻造設術を施行し,拡張した口側腸管の直径が小さくなるまで吻合手術を延期する方がより安全となる場合もある。

空回腸閉鎖の乳児の予後は非常に良好であり,生存率は90%を超えている。予後は残存小腸の長さと回盲弁の有無に基づく。後に 短腸症候群 短腸症候群 短腸症候群は,小腸の広範切除(通常,小腸の全長の3分の2以上)に起因する吸収不良である。生じる症状は残存小腸の長さおよび機能に依存するが,下痢は重度となることがあり,栄養欠乏がよくみられる。治療は,食事を少量ずつ摂ることと止瀉薬のほか,ときに完全静脈栄養または小腸移植による。 短腸症候群は 吸収不良を引き起こす疾患である。 広範切除の理由として頻度が高いものは, クローン病,... さらに読む を発症した乳児には,長期にわたる完全静脈栄養(TPN)が必要になる。このような患児には,腸管適応の促進,吸収能の強化,およびTPN施行の最少化のために,腸管栄養を継続的に行うべきである。また,吸啜および嚥下能力を維持するため,経口栄養も少量で行うべきである。腸管延長術(例,serial transverse enteroplasty procedure[STEP])などの新しい術式が考案され,内科的治療が改良され,小腸移植が可能になったことにより,短腸症候群の乳児の予後は大幅に改善している(1 治療に関する参考文献 空回腸閉鎖は,小腸の一部の形成が不完全となる病態である。診断は腹部X線による。治療は外科的修復である。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) 空回腸閉鎖がある新生児では,通常,出生当日の後半から生後2日目までに,増強する腹部膨隆,便通不全,嘔吐,および哺乳困難で発症する。 空回腸閉鎖は,在胎中の虚血性損傷の結果として発生する。虚血性損傷は, 腸重積, 穿孔,腸捻転,ヘルニアに伴う腸管の絞扼,または血栓塞栓症によって生じうる。母体... さらに読む 治療に関する参考文献 , 2 治療に関する参考文献 空回腸閉鎖は,小腸の一部の形成が不完全となる病態である。診断は腹部X線による。治療は外科的修復である。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) 空回腸閉鎖がある新生児では,通常,出生当日の後半から生後2日目までに,増強する腹部膨隆,便通不全,嘔吐,および哺乳困難で発症する。 空回腸閉鎖は,在胎中の虚血性損傷の結果として発生する。虚血性損傷は, 腸重積, 穿孔,腸捻転,ヘルニアに伴う腸管の絞扼,または血栓塞栓症によって生じうる。母体... さらに読む 治療に関する参考文献 , 3 治療に関する参考文献 空回腸閉鎖は,小腸の一部の形成が不完全となる病態である。診断は腹部X線による。治療は外科的修復である。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) 空回腸閉鎖がある新生児では,通常,出生当日の後半から生後2日目までに,増強する腹部膨隆,便通不全,嘔吐,および哺乳困難で発症する。 空回腸閉鎖は,在胎中の虚血性損傷の結果として発生する。虚血性損傷は, 腸重積, 穿孔,腸捻転,ヘルニアに伴う腸管の絞扼,または血栓塞栓症によって生じうる。母体... さらに読む 治療に関する参考文献 )。

治療に関する参考文献

1.Thompson JS, Rochling FA, Weseman RA, Mercer DF: Current management of short bowel syndrome.Curr Probl Surg 49:52–115, 2012. doi: 10.1067/j.cpsurg.2011.10.002.

2.Infantino BJ, Mercer DF, Hobson BD, et al: Successful rehabilitation in pediatric ultrashort small bowel syndrome.J Pediatr 163:1361–1366, 2013.doi: 10.1016/j.jpeds.2013.05.062.

3.Squires RH, Duggan C, Teitelbaum DH, et al: Natural history of pediatric intestinal failure: Initial report from the Pediatric Intestinal Failure Consortium.J Pediatr 161:723–728, 2012. doi: 10.1016/j.jpeds.2012.03.062.

要点

  • 通常,空回腸閉鎖は腸閉塞の徴候を伴って生後1~2日時点で明らかになる。

  • 嚢胞性線維症,腸回転異常症,および腹壁破裂がそれぞれ約10%の症例でみられる。

  • 経口栄養を禁止し,外科的修復まで経鼻胃管吸引と輸液を行う。

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