微小欠失症候群および微小重複症候群

執筆者:Nina N. Powell-Hamilton, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2020年 6月
意見 同じトピックページ はこちら

    微小欠失症候群および微小重複症候群は,染色体の特定部分に隣接して存在する遺伝子群の超顕微鏡的な欠失または重複によって引き起こされる疾患群である。出生後診断では,臨床的な外観から疑い,できれば染色体マイクロアレイ解析または蛍光in situハイブリダイゼーションによって確定するのが望ましい。

    染色体異常症の概要も参照のこと。)

    微小欠失症候群の方が微小重複症候群より明確に定義されており,多くの微小重複の意義は依然として不明である。近年,22q11.2や7q11.23などのよく認識されている微小欠失に対応する重複がより明確に定義されるようになった。

    染色体欠失症候群では,その大きなサイズ(典型的には500万塩基以上)のため,通常は核型分析でその異常を観察できるが,その一方で微小欠失症候群の異常は比較的小さな分節内(典型的には100万~300万塩基)で発生するため,蛍光プローブ(蛍光in situハイブリダイゼーション)や染色体マイクロアレイ解析によってのみ検出可能であることから,微小欠失症候群は染色体欠失症候群とは異なるものである。ある遺伝子分節は,欠失することと重複すること(相互重複[reciprocal duplication]と呼ばれる)がある。微小重複の臨床的な影響は同じ分節の欠失によるものと類似する傾向があるが,同じ分節の欠失と比べると重症度は低い。隣接遺伝子症候群という用語は,典型的には微小欠失と関連することが多い疾患を指すが,,微小重複(遺伝子がクラスターを形成する)と関連する疾患を指すこともある。(次世代シークエンシング技術も参照のこと。)

    臨床的に有意な微小欠失および微小重複の大半は散発的に発生したもののように見えるが,実際には児の異常が判明した後に親の検査を行ってみると,親が軽症例と診断されることがありうる。

    数多くの微小欠失症候群が同定されており,臨床像は極めて多岐にわたる( see table 微小欠失症候群の例)。

    染色体17p11.2の欠失に対応する微小重複はPotocki-Lupski症候群に関連する。この疾患を有する乳児では筋緊張低下,授乳困難,発育不良,心臓の異常,発達遅滞,および自閉症がみられる。

    表&コラム
    quizzes_lightbulb_red
    Test your KnowledgeTake a Quiz!
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS