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新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症

執筆者:

Mary T. Caserta

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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新生児単純ヘルペスウイルス感染症は通常,分娩時の感染によって発生する。典型的な徴候は水疱性の発疹であるが,これに全身型の病態が合併する場合や,後に全身型に進行する場合もある。診断はウイルス培養,PCR法,蛍光抗体法,または電子顕微鏡検査による。治療は高用量アシクロビルの静注と支持療法による。

新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症は,死亡率が高く,後遺症の発生も無視できない。発生率は出生3,000~20,000人当たり1例と推定される。HSV 1型よりもHSV 2型による症例の方が多い。

HSVは通常,分娩時に児が感染した母親の生殖路を通過する際に伝播される。一方で一部の症例では,ウイルスの経胎盤感染や病院職員または家族を介した新生児間の院内感染が原因になっていると考えられる。HSV感染症を発症した新生児の母親には,新たに生じた性器感染がみられる傾向があるが,その多くは分娩時点で無症状である。

症状と徴候

症候は一般に生後1~3週に生じるが,まれに生後4週まで発現しないこともある。新生児での感染には限局型と全身型の場合がある。皮膚の水疱はどちらの病型でも頻度が高く,全体の約70%にみられる。皮膚に水疱がみられない患児は,通常は限局型である中枢神経型の病像を呈する。皮膚または粘膜病変のみの新生児では,無治療のまま放置すると,しばしば進行性ないしより重篤な病型の病態が7~10日以内に出現する。

新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症の臨床像

限局型

限局型の病態を呈する新生児は2つの群に分けられる。1つ目の群では,神経所見,髄液細胞増多,およびタンパク質濃度高値で明らかとなる脳炎がみられ,皮膚,眼,および口腔の随伴病変はみられる場合もみられない場合もある。もう1つの群では,皮膚,眼,および口腔の病変のみがみられ,中枢神経系や諸臓器への感染を示す徴候は認められない。

全身型

全身型の患児の内臓障害では,肝炎,肺炎,播種性血管内凝固症候群が単独または複合してみられ,さらに脳炎や皮膚病変を伴う場合と伴わない場合がある。

その他の徴候としては,体温調節障害,嗜眠,筋緊張低下,呼吸窮迫,無呼吸,痙攣などが単独または複合して生じうる。

診断

  • HSV培養またはPCR法

  • ときに病変部検体での蛍光抗体法または電子顕微鏡検査

ウイルス培養またはHSV PCRによる迅速診断が不可欠である。検出頻度が最も高い部位は皮膚の水疱である。また上咽頭,眼,直腸,血液,および髄液の検体も検査すべきである。脳炎を起こした新生児では,中枢神経系にしかウイルスが認められない場合もある。新生児HSV感染症の診断は,病変部の擦過検体を用いた蛍光抗体法(特にモノクローナル抗体を用いる方法)により可能であるが,電子顕微鏡検査によっても診断できる。

ウイルス学的な診断設備が利用できない場合は,病変基底部のツァンク試験により特徴的な多核巨細胞と核内封入体を確認できるが,この検査法は培養より感度が低く,偽陽性が生じることがある。

予後

全身型の無治療での死亡率は85%であり,脳炎を起こした患児の無治療での死亡率は約50%である。無治療の場合,全身型または脳炎の生存者の65%以上に重度の神経学的後遺症がみられる。アシクロビル静注などの適切な治療を行うことにより,中枢神経型および全身型での死亡率は50%低下し,正常に発達を遂げる患児の割合は約35%から50~80%まで上昇する。

皮膚,眼,または口腔に病変が限局する新生児では,死亡はまれである。しかしながら,無治療の場合,このような新生児の多くは,気づかれることなく全身型または中枢神経型に進行することがある。

治療

  • アシクロビル静注

  • 支持療法

疑わしい症例では,確定診断の検査を待つ間も本症と仮定して,アシクロビルを直ちに開始すべきである。全身型または中枢神経型の患児には,20mg/kg,静注,8時間毎,21日間のレジメンで投与する。このレジメンの終了後は,中枢神経型の患児にはアシクロビル経口剤を300mg/m2,1日3回,6カ月間で投与する;この長期のレジメンにより,1歳時の神経発達が改善するが,好中球減少を起こす可能性がある。

適切な輸液,栄養補給,呼吸補助,凝固異常の是正,痙攣発作のコントロールなど,積極的な支持療法が必要である。

予防

新生児の感染を予防する試みは,あまり大きな成果を上げていない。全例スクリーニングは推奨されておらず,有効性も示されていないことに加え,伝播のリスクがある母体感染の大半が無症状である。しかしながら,性器病変のある満期の妊婦にはHSVの血清学的検査を行うべきであり,それによりHSVの診断を下して伝播のリスクを判定するとともに,曝露したが無症状の新生児に対する治療の指針を決定する。伝播リスクが高いことが判明している妊婦(例,満期時点で活動性の性器病変がある場合)での帝王切開は,伝播を減少させる効果が示されていることから,たとえ破水後でも帝王切開が推奨される。また,活動性の性器ヘルペスが疑われる妊婦の分娩時には,胎児頭皮用電極を使用してはならない。分娩時に活動性の性器病変のある女性から生まれた無症状の新生児には,HSV感染症に関する評価および検査を行うべきである。米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)から,さらなる情報を入手できる(1 予防に関する参考文献 新生児単純ヘルペスウイルス感染症は通常,分娩時の感染によって発生する。典型的な徴候は水疱性の発疹であるが,これに全身型の病態が合併する場合や,後に全身型に進行する場合もある。診断はウイルス培養,PCR法,蛍光抗体法,または電子顕微鏡検査による。治療は高用量アシクロビルの静注と支持療法による。 (成人におけるProfessional.See also page 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症および新生児感染症の概要を参照のこと。)... さらに読む 予防に関する参考文献 )。

性器HSVの既往がある女性には,妊娠の最後の数週間にわたりアシクロビルまたはバラシクロビルを経口投与することで,分娩時の再発を予防し,帝王切開を回避できる可能性がある。

予防に関する参考文献

要点

  • 新生児ヘルペスには,皮膚,眼,または口腔に限局する病型,中枢神経型,および全身型がある。

  • 脳炎および全身型の死亡率は高く,生存者にも神経学的後遺症がよくみられる。

  • 疑わしい症例では,推定に基づき治療を開始するとともに,髄液,血液,または病変部の検体を用いたHSV PCRによって迅速に診断を下すことが予後の改善に不可欠である。

  • 限局型と全身型には,ともにアシクロビルを静脈内投与する。

  • 満期時点で母親に活動性の性器ヘルペス病変がみられる場合は,帝王切開を行う。

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