人工乳による授乳

執筆者:Deborah M. Consolini, MD, Thomas Jefferson University Hospital
レビュー/改訂 2019年 9月
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    生後1年間に母乳栄養に代わるものとして容認できるのは人工乳のみである;水は低ナトリウム血症を引き起こす可能性があり,牛乳(成分無調整)は栄養的に不完全である。人工乳を与える利点としては,栄養の摂取量を定量化できること,家族が授乳に参加できることなどが挙げられる。しかし,それ以外の因子が等しい状況では,こうした利点よりも,母乳栄養の,議論の余地のない,健康上の便益の方が上回る。

    市販の乳児用人工乳には粉乳,濃縮液状,希釈済み液状の製品(即授乳できる)がある;各製品ともビタミンを含み,ほとんどに鉄分が付加されている。人工乳はフッ素濃度調整水を使用して作るべきである;フッ素濃度調整水が使用できない地域の場合,およびフッ素を含まない希釈済み液状の人工乳の場合は,生後6カ月以降に経口フッ素滴下剤(0.25mg/日)を与えるべきである。

    人工乳は乳児の必要に応じて選択する。溢乳,下痢(血性または非血性),発疹(蕁麻疹),あるいは体重増加不良など,牛乳タンパク質への感受性(アレルギー)または乳糖不耐症(新生児では極めてまれ)を示唆する所見がなければ,牛乳をベースにした人工乳が標準的であるが,このような所見がみられる場合には人工乳の変更が推奨される。米国の大豆乳は全て乳糖を含んでいないが,牛乳タンパク質アレルギーの乳児の中には,大豆タンパク質アレルギーを示す者もいるため,そのような場合は加水分解乳が適応とされる。加水分解乳は牛乳由来であるが,タンパク質が短鎖に分解されているためアレルゲン性が低下している。加水分解乳にもアレルギー反応を示す,ごく一部の乳児には,遊離アミノ酸から製造された真のアミノ酸乳(true elemental formula)が利用可能である。

    人工乳は乳児の要求に応じて授乳するが,母乳に比べて消化に時間がかかるため,授乳の間隔がより長くなるのが典型的であり,初期は3~4時間毎になる。初期授乳量は15~60mL(0.5 ~ 2オンス)とし,生後1週間で1日約6回,90mL(3オンス)まで徐々に授乳量を増やすことができる;これにより3kgの乳児に対し1週間の時点で約120kcal/kgを補給する。

    乳児の栄養も参照のこと。)

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