乳児および小児における睡眠

執筆者:Deborah M. Consolini, MD, Thomas Jefferson University Hospital
レビュー/改訂 2019年 9月
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睡眠行動は文化的に決定されるものであり,受容された慣習や規範から逸脱した行動が問題として定義される傾向がある。同じ家屋内で小児が親と別の部屋で眠る文化においては,睡眠に関する問題は親と児が直面する最も一般的な問題の1つである。

乳児突然死症候群(SIDS)のリスクを低減するため,乳児の睡眠時の体位は常に仰臥位とすることが推奨される。腹臥位または側臥位での睡眠はSIDSのリスクを高める要因であり,側臥位で寝かせた乳児がうつ伏せになっていた場合には特にリスクが高くなる。

co-sleepingとは,親と乳児が互いに見る,聞く,触ることができるように近く(同じベッドまたは別々のベッド)で眠ることである。co-sleepingの形態としては以下のものがある:

  • bed-sharing(添い寝)(乳児と親が同じベッドで寝る)

  • room-sharing(乳児と親が同じ部屋の非常に近い場所で寝る)

親と乳児の添い寝はよくみられるが,これには議論がある。親が添い寝を選択する理由は,しばしば文化的,個人的なものであり,例えば,授乳に便利である,絆が深まる,親による監視が乳児の安全を保つ唯一の方法と考えている,同じベッドであれば睡眠中でも監視できると考えているなどがある。しかしながら,添い寝は窒息,絞扼,身体的拘束による乳児の負傷ないし死亡に加えて,SIDSのリスク増大との関連も報告されている。

添い寝をしないroom-sharingであれば,乳児との距離も近く,授乳したり,なだめたり,様子を見たりすることが容易にできるため,添い寝や1人で眠らせる(乳児が別の部屋で寝る)より安全であり,また,SIDSのリスクの低減にもつながる。以上の理由から,生後数カ月間は同じ部屋の別のベッドで寝ることが,親と乳児に推奨される睡眠の形態である。

乳児は通常,生後4カ月から6カ月の間に昼夜サイクルに基づいた睡眠スケジュールに適応していく。このような月齢以降の睡眠の問題は様々な形を取り,夜の寝つきが悪い,夜間に頻回に目を覚ます,非典型的な昼寝,授乳や抱っこをしないと寝ないなどが挙げられる。これらの問題は,親の期待,小児の気質および生物学的リズム,親子の相互作用と関連する。

睡眠パターンに影響する因子は年齢によって異なる。乳児では,生来の生物学的なパターンが中心となる。生後9カ月時と生後約18カ月時に睡眠障害が多くみられるが,その理由として以下が挙げられる:

  • 分離不安が生じる。

  • 1人で動いて環境をコントロールすることができるようになる。

  • 夕方近くに長時間昼寝をすることがある。

  • 就寝前に遊んで興奮状態になることがある。

  • 悪夢をみることが多くなる傾向がある。

眠りからの不完全な覚醒は全ての年齢群で一般的である。乳児が眠りに落ちるのを助けるために常に抱っこしたり,揺らしたり,車に乗せたりしていると,乳児は自身の典型的な睡眠環境で1人で眠りにつくことを学ばないため,頻繁な夜間覚醒の問題が発生する場合がある。このような問題は,うとうとしているがまだ起きているときに常に乳児をベビーベッドや新生児用ベッドに寝かせ,1人で寝つくことができるようにすることで避けられる。幼児および児童では,感情的要因および確立された習慣がより重要となる。児童では,ストレスの強い出来事(例,引越し,疾病)が原因で急性の睡眠障害が起きることがある。

評価

病歴

病歴の聴取では,小児の睡眠環境,就寝時間の一貫性,就寝時の日課,親の期待に焦点を置くべきである。小児の普段の生活に関する詳細な説明が有用となりうる。学校生活での問題のほか,刺激の強いテレビ番組の視聴やカフェイン入り飲料(例,炭酸飲料)の摂取といった小児の生活にあるストレス因子を病歴聴取で探るべきである。就寝時間が一定でない,睡眠環境が無秩序ないし騒がしい,あるいは小児が睡眠行動を利用して親に言うことを聞いてもらおうとすることが多いなどの報告があれば,生活習慣の改善の必要性が示唆される。親に極端な欲求不満がみられる場合は,家族間に緊張関係がある,または親が一貫性や堅固な意志をなかなかもてていないことが示唆される。

数日間にわたる睡眠日記を作成させると,睡眠パターンの異常や睡眠障害(例,睡眠時遊行症,夜驚症)を特定するのに役立つことがある。児童や青年の場合,学校,友人,不安,抑うつ症状,そして全体的な心の状態について注意深く聴取すると,睡眠障害の原因が明らかになることが多い。

身体診察と検査

一般に,診察や診断検査で有用な情報が得られることはほとんどない。

治療

  • 親のための選択肢

  • 小児がひとりでに眠れるようにするための対策

治療における臨床医の役割は,親への説明および選択肢を提供することであり,親は児に受容できる睡眠スケジュールを身につけさせるべく,変更を実行しなければならない。アプローチは年齢と状況により異なる。乳児は,おくるみや,周辺雑音,揺り動かすことでしばしば安らぐ。しかしながら,常に乳児を揺らして寝かしつけていると,発達上の重要な課題である,1人で寝つくということを覚えられない。揺らす代わりに,乳児が眠るまでベビーベッドの傍らに静かに座っていると,乳児は最終的に安らぐことや抱っこ無しで眠ることを覚える。

小児はみな夜間に目を覚ますものであるが,1人で眠ることを教えられた児は通常また1人で眠りにつく。再び眠りにつくことができない場合,親は児の安全を確かめ安心感を与えるために,児の様子を見に行ってもよいが,その場合も児を1人で眠りにつかせるようにすべきである。

より年長の小児の場合,就寝時に本の読み聞かせなどの静かな活動によるくつろぎの時間をもつと眠りやすくなる。幼児には就寝時間を一定にすることが重要であり,決まった儀式があれば助けになる。十分に言葉を話せる小児には,その日に起こったことを話すよう促すと,悪夢や目覚めがしばしばなくなる。日中によく運動させ,怖いテレビ番組や映画を見させないようにし,就寝時間を親に自分の言うことをきかせるための要素にさせないことも,睡眠障害の予防に役立つ可能性がある。

ストレスの強い出来事が原因である場合は,安心させ励ますことが最終的には常に効果的となる。そのような場合に小児を親のベッドで寝かせると,問題を解決するどころかかえって長引かせるのが常である。

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