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神経芽腫

執筆者:

Renee Gresh

, DO, Nemours A.I. duPont Hospital for Children

レビュー/改訂 2019年 7月
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神経芽腫は,副腎から,またはより頻度は低いが後腹膜,胸部,頸部を含む副腎外の交感神経鎖から発生するがんである。診断は生検により確定される。治療には外科的切除,化学療法,放射線療法,造血幹細胞移植併用大量化学療法,シス-レチノイン酸投与,免疫療法などがある。

神経芽腫は, 乳児のがん 小児がんの概要 全体として,小児がんは比較的まれであり,0~14歳の小児における年間発生例数は13,500例未満,年間死亡例数は約1500例である。それに比べて成人では,年間発生例数は140万例,年間死亡例数は575,000例である。しかし,小児ではがんは外傷に次ぐ2番目の死因である。 小児期のがんには成人に発生するものも多く含まれる。... さらに読む として最も多くみられるものである。神経芽腫のほぼ90%が5歳未満の小児に発生する。神経芽腫のほとんどは自然発生的に生じるが,1~2%は遺伝性とみられる。一部のマーカー(例,がん遺伝子MYCNの増幅,高二倍体,病理組織像)が進行および予後と相関する。MYCN増幅は,約20%の神経芽腫症例でみられ,進行および予後不良と関連する。

パール&ピットフォール

  • 神経芽腫は,乳児において最も多くみられるがんである。

ほとんどの神経芽腫はカテコールアミンを産生し,これが尿中のカテコールアミン分解産物高値として検出される。神経芽腫は通常はアドレナリンを分泌しないため,典型的には重度の高血圧を引き起こさない。

神経芽腫は未熟かつ未分化の悪性腫瘍である。神経節芽細胞腫(ganglioneuroblastoma)は中間型の腫瘍であり,神経節腫(ganglioneuroma)は神経芽腫の完全に分化した良性変異型である。

診断時点で,約40~50%の患児が限局例または所属リンパ節転移例であり,50~60%では遠隔転移がみられる。神経芽腫は骨髄,骨,肝臓,リンパ節,または比較的まれではあるが皮膚や脳に転移する可能性がある。骨髄転移により貧血および/または血小板減少症が生じることがある。このような血管に富む腫瘍が出血を起こし,ヘモグロビン値が急激に下がると,ときに貧血もみられる。

症状と徴候

神経芽腫の症状および徴候は,原発がんの部位および病変の拡がるパターンにより異なる。最も多い症状は,腹部腫瘤による腹痛,不快感,膨満感である。

一部の症状は転移により起こる。そのような症状としては,広範は骨転移による骨痛,球後転移による眼周囲斑状出血と眼球突出,肝転移による腹部膨隆と呼吸障害などがある(特に乳児)。貧血の患児は蒼白となることがあり,血小板減少症の患児では点状出血が生じることがある。

がんの脊柱管内への直接進展により,患児はときに局所神経脱落症状または麻痺を呈する。頸部または上胸部の腫瘍は ホルネル症候群 ホルネル症候群 ホルネル症候群は,頸部交感神経の出力機能障害により眼瞼下垂,縮瞳,および無汗症が生じる病態である。 ( 自律神経系の概要も参照のこと。) ホルネル症候群は,視床下部から眼球へと走行する頸部交感神経の経路が遮断された場合に発生する。原因病変は原発性(先天性を含む)の場合もあれば,他の疾患に続発したものの場合もある。 通常,病変は以下のように分類される: 中枢性(例,脳幹虚血, 脊髄空洞症, 脳腫瘍) さらに読む ホルネル症候群 (眼瞼下垂,縮瞳,無汗症)を引き起こすことがある。小脳性運動失調,眼球クローヌス-ミオクローヌス,水様性下痢,高血圧などの 腫瘍随伴症候群 腫瘍随伴症候群 腫瘍随伴症候群とは,腫瘍またはその転移巣から離れた部位で生じる症状である。 発生機序は依然として明らかにされていないが,これらの症状は,腫瘍から分泌される物質によって二次的に発生したり,腫瘍を標的とした抗体が他の組織と交差反応した結果として発生したりする場合がある。症状は,いずれの臓器または生理系でも発生する可能性がある。がん患者の最大20%で腫瘍随伴症候群がみられるが,これらの症候群が認識されない場合も多い。... さらに読む 腫瘍随伴症候群 を呈することもある。

ROHHADNET(Rapid-onset Obesity with Hypothalamic dysfunction, Hypoventilation, Autonomic Dysregulation, and NeuroEndocrine Tumors)は,腹部および肺の神経節芽細胞腫および神経節腫を合併することのある,非常にまれな疾患である。

診断

  • CT/MRI

  • 生検

  • ときに骨髄穿刺または骨髄コア生検と尿中カテコールアミン中間代謝物の測定

神経芽腫は,ときに出生前のルーチン超音波検査で検出される。腹部症状または腫瘤のある患児にはCTまたはMRIを施行すべきである。同定された腫瘤のいずれかの部位の生検により,神経芽腫の診断が確定する。

別の方法として,原発腫瘍の生検や手術を行わずに,骨髄穿刺または骨髄生検における特徴的ながん細胞の所見と尿中のカテコールアミン中間代謝物の高値をともに確認することによっても診断を確定できる。このような診断法は広く行われているわけではないが,患児や腫瘍の状態により生検および/または手術自体のリスクが高いと考えられる状況では有用な場合がある。

尿中のバニリルマンデル酸(VMA)もしくはホモバニリン酸(HVA),またはその両方が,患者の90%以上において高値となる。24時間蓄尿を用いてもよいが,通常はスポット尿検査で十分である。神経芽腫の原発部位が副腎である場合は, ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍とは,腎芽,間質,上皮の各成分で構成される腎臓の胎児性がんである。遺伝子異常が発生機序に関与するとみられているが,家系内の遺伝は症例のわずか1~2%を占めるに過ぎない。診断は超音波検査,腹部CT,またはMRIにより行われる。治療には外科的切除,化学療法,放射線療法が含まれる。 ウィルムス腫瘍は通常5歳未満の小児にみられるが,ときにより年長の小児にも,まれに成人にも発生する。ウィルムス腫瘍は,15歳未満の... さらに読む やその他の腎腫瘤との鑑別が必要となる。また, 横紋筋肉腫 横紋筋肉腫 横紋筋肉腫は,骨格筋細胞へと分化する可能性をもつ胎児性間葉細胞から発生する小児がんである。あらゆる部位のほぼ全てのタイプの筋肉組織に発生しうるがんであり,臨床症状は極めて多様である。典型的にはCTまたはMRIにより発見され,生検により診断が確定される。治療には,外科手術,放射線療法,化学療法がある。 横紋筋肉腫は,中枢神経系外の固形の 小児がんのうち3番目に多い( ウィルムス腫瘍,... さらに読む 肝芽腫 肝芽腫 原発性肝癌は通常, 肝細胞癌である。肝癌の初期の臨床像は非特異的であるのが通常で,これが診断の遅れにつながる。進行期で診断された場合,予後は不良である。 その他の原発性肝癌は,一般的でないかまれである。診断には通常, 肝生検を要する。予後は一般的に不良である。 限局性のがんは切除可能な場合もある。切除または 肝移植は生存期間の延長につながりうる。 これは肝細胞癌の特殊型であり,悪性化した肝細胞の周囲に層状の線維性組織が張りめぐらされた特... さらに読む リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫は,網内系およびリンパ系から発生する不均一な一群の腫瘍である。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別される( ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の比較の表を参照)。 リンパ腫はかつて, 白血病とは全く異なる疾患と考えられていた。しかし現在では,細胞マーカーとそれらのマーカーを評価するツールについて理解が深まったことで,これら... さらに読む ,生殖器原発の腫瘍との鑑別が必要になる場合もある。

神経芽腫の病期診断

転移の評価のため以下を行うべきである:

  • 複数カ所(典型的には,両後腸骨稜)の骨髄穿刺または骨髄コア生検

  • 全身骨X線検査(skeletal servey)

  • 骨シンチグラフィーまたはヨウ素131標識メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)によるシンチグラフィー

  • 腹部,骨盤,および胸部のCTまたはMRI

症状または徴候から脳転移が示唆される場合は,CTまたはMRIによる頭部画像検査が適応となる。

これらの検査の結果により病期(進展範囲)が判定される。International Neuroblastoma Staging System(INSS)では,病期の判定のために手術の結果が必要となる。International Neuroblastoma Risk Group Staging System(INRGSS)は,神経芽腫の病期診断に,手術ではなく,画像検査により定義された危険因子を用いている。

神経芽腫には4S(INSSによる)またはMS(INGRSSによる)と呼ばれる特有の病期もあり,これらは無治療でも自然に退縮することが多い。この病期では,転移部位は,皮膚,肝臓,および/または骨髄に限られ,原発巣が限局している生後12カ月(4S)または18カ月(MS)未満の患児が含まれる。骨髄病変はわずかで,全有核細胞の10%未満に限定され,骨皮質に浸潤していないことが必要である。

診断時に,DNAインデックス(腫瘍細胞中のDNA量と正常細胞中の量との比;このためDNAインデックスは染色体の内容の量的尺度となる)およびがん遺伝子MYCNの増幅の分析を行うために,十分な腫瘍組織の採取を試みるべきである。

神経芽腫のリスク分類

病期診断後には,病期の情報と判明している予後因子(年齢,組織像,MYCN増幅,DNAインデックスなど)を用いて患児を分類し,治療の強度を決定する指針とし,予後および治療後再発の可能性を判定する。リスク分類は複雑であり,2つの主要なリスク群層別化システム,すなわちChildren's Oncology Group(COG)が開発したものとInternational Neuroblastoma Risk Group Staging Systemが開発したものが存在する。両システムにおいて,病期診断の因子および予後因子は低リスク,中間リスク,高リスクに患者を層別化するのに用いられ,これらの分類は予後の判定と治療方針の決定に役立つ。加えて,International Neuroblastoma Risk Groupは評価において染色体11qの異常を考慮する。

予後

神経芽腫の予後は診断時の年齢,病期,生物学的因子(例,病理組織像,乳児患者における腫瘍細胞の倍数性,MYCNの増幅)により異なる。限局性の乳児患者は,予後が最も良好である。

予後に関する参考文献

  • 1.Park JR, Kreissman SG, London WB, et al: A phase III randomized clinical trial (RCT) of tandem myeloablative autologous stem cell transplant (ASCT) using peripheral blood stem cell (PBSC) as consolidation therapy for high-risk neuroblastoma (HR-NB): A Children's Oncology Group (COG) study.J Clin Oncol 34(Suppl 18):LBA3-LBA, 2016.doi: 10.1200/JCO.2016.34.15_suppl.LBA3.

治療

  • 外科的切除

  • 通常は化学療法

  • ときに大量化学療法とその後の造血幹細胞移植

  • ときに放射線療法

  • 高リスク例での維持療法用のシス-レチノイン酸

  • 免疫療法

神経芽腫の治療はリスク分類に基づいて行う(米国国立がん研究所[National Cancer Institute]のNeuroblastoma Treatment—Health Professional Versionも参照)。

低リスクおよび中間リスクの患者では外科的切除が重要となる。切除はアジュバント化学療法を行って十分な外科的切除が行える可能性が高まるまで,しばしば延期される。

化学療法(典型的に使用される薬剤はビンクリスチン,シクロホスファミド,ドキソルビシン,シスプラチン,カルボプラチン,イホスファミド,エトポシドなど)は,中間リスクの患者で通常必要となる。造血幹細胞移植併用大量化学療法とシス-レチノイン酸の投与は,高リスク例にしばしば用いられる。

放射線療法は,中間リスクまたは高リスク例もしくは手術が不可能な腫瘍に対してときに必要となる。

高リスク例の治療に対する最新アプローチには,サイトカインを併用する,神経芽腫抗原に対するモノクローナル抗体を用いた免疫療法がある。

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