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新生児呼吸窮迫症候群

(肺硝子膜症)

執筆者:

Arcangela Lattari Balest

, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine

レビュー/改訂 2019年 10月
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呼吸窮迫症候群は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。

出生の過程には広範な 生理的変化 周産期の生理 子宮内での生活から子宮外での生活への移行には,生理および機能に多種多様な変化を伴う。また Professional.see chapter 周産期における問題を参照のこと。 ( 肝臓の構造および機能と 新生児高ビリルビン血症も参照のこと。) 老化または損傷した胎児赤血球は網内系細胞によって循環血中から除去され,ヘムがビリルビンに変換される... さらに読む を伴うため,ときに子宮内での生活中には問題とはならなかった状態が明らかになる場合がある。そのため,全ての出産に 新生児蘇生 新生児の蘇生 出生の過程には広範な 生理的変化を伴うため,ときに子宮内での生活中には問題とはならなかった状態が明らかになる場合がある。そのため,全ての出産に新生児蘇生の技能を有する人物の立ち会いが必要である。 在胎期間と 成長パラメータは,新生児の病態のリスクを同定するのに役立つ。 新生児の約10%は,分娩時に何らかの呼吸補助を必要とする。新生児の1%未満が,より包括的な蘇生を必要とする。出生時に蘇生を必要とする抑制の原因は数多くある(... さらに読む の技能を有する人物の立ち会いが必要である。 在胎期間 在胎期間 在胎期間と 成長パラメータは,新生児の病態のリスクを同定するのに役立つ。在胎期間は器官成熟の第1の決定因子である。 在胎期間は,大まかには,最後の正常な月経がみられた日から分娩日までの週数として定義されている。より正確には,在胎期間は受胎日の14日前から分娩日までの期間を指す。在胎期間は実際の胎齢とは異なるが,産科医および新生児専門医が胎... さらに読む 成長パラメータ 新生児の成長パラメータ 成長パラメータおよび 在胎期間は,新生児の病態のリスク同定に有用である。成長は,遺伝因子および栄養因子ならびに子宮内環境に影響される。出生時に評価した成長パラメータは,その後の成長および発達ならびに疾患リスクの予測に有用である。パラメータには, 身長, 体重,および 頭囲がある。 在胎期間に対して体重をプロットし,それぞれの新生児を出生時に以下のように分類する: SGA(small... さらに読む は,新生児の病態のリスクを同定するのに役立つ。

病因

サーファクタントは在胎期間の比較的後期(34~36週)になるまで十分な量が産生されないため,呼吸窮迫症候群(RDS)のリスクは 未熟性 早産児 在胎37週未満で出生した児は早産児とみなされる。 未熟性は出生時点での 在胎期間により定義される。かつては,体重2.5kg未満の新生児であればいずれも未熟児と呼ばれていた。早産児は小さい傾向にあるが,多くの体重2.5kg未満の乳児は成熟している場合や 過期産児および過熟児である場合,および 在胎不当過小である場合もあるため,この体重に基づいた定義は不適切である;このような新生児は外観も異なれば,抱える問題も異なる。... さらに読む が増すほど上昇する。その他の危険因子としては, 多胎妊娠 多胎妊娠 多胎妊娠では子宮内に胎児が複数存在する。 多胎児(多胎)妊娠は,最大で分娩30件当たり1件発生する。 多胎妊娠の危険因子としては以下のものがある: 排卵誘発(通常クロミフェンまたはゴナドトロピンによる) 生殖補助医療(例,体外受精) さらに読む 母体糖尿病 妊娠中の糖尿病 妊娠は,既存の1型(インスリン依存性)および2型(インスリン非依存性) 糖尿病を増悪させるが,糖尿病網膜症,腎症,または神経障害を悪化させることはないようである( 1)。 妊娠糖尿病(妊娠中に始まる糖尿病[ 2])は,過体重,高インスリン血症,インスリン抵抗性の妊婦,またはやせ型,相対的にインスリンの不足している妊婦に発生しうる。妊娠糖尿病は全妊娠の少なくとも5%に起こるが,特定の集団(例,メキシコ系アメリカ人,アメリカンインディアン,... さらに読む ,白人男性などがある。

まれに遺伝性の場合があり,サーファクタントタンパク質(SP-BおよびSP-C)ならびにATP結合カセット輸送体A3(ABCA3)の遺伝子変異によって引き起こされる。

病態生理

サーファクタントが欠乏している場合,肺胞を開くためにより高い圧力が必要となる。十分な気道内圧がなければ,びまん性無気肺となり,炎症および 肺水腫 肺水腫 肺水腫は,肺静脈性肺高血圧と肺胞内の液貯留(alveolar flooding)を伴った重度の急性左室不全である。所見は,重度の呼吸困難,発汗,喘鳴,ときに泡沫状の血痰である。診断は臨床的に行われ,胸部X線による。治療には酸素,硝酸薬静注,利尿薬のほか,ときにモルヒネを使用するとともに,駆出率が低下した心不全患者には,短期間の陽性変力薬の静注と補助換気(気管挿管と機械的人工換気または二相性陽圧換気)を行う。... さらに読む 肺水腫 が引き起こされる。無気肺の部分を通過する血液は酸素化されない(肺内右左短絡が形成される)ので,患児は低酸素血症となる。肺コンプライアンスが低下して,これにより呼吸仕事量が増加する。重症例では,横隔膜および肋間筋が疲労し,CO2貯留および 呼吸性アシドーシス 呼吸性アシドーシス 呼吸性アシドーシスは二酸化炭素分圧(Pco2)の一次性上昇で,重炭酸イオン(HCO3)の代償性の増加を伴う場合と伴わない場合とがある;pHは通常低いが,正常範囲に近いこともある。原因は呼吸数および/または呼吸量の減少(低換気)であり,典型的には中枢神経系疾患,肺疾患,または医原性の病態に起因する。呼吸性アシドーシスには急性と慢性がある;慢性型は無症状であるが,急性型(増悪型)は頭痛,錯乱,および眠気を引き起こす。... さらに読む が生じる。

合併症

RDSの合併症には, 脳室内出血 脳室内出血および/または脳実質内出血 分娩時の力により,ときに新生児に身体的損傷が引き起こされる。難しい回転術, 吸引分娩, 中位鉗子分娩または高位鉗子分娩に代わり 帝王切開を用いることが増えているため,困難な分娩または外傷を引き起こしうる分娩に起因する新生児の損傷発生率は低下している。 新生児が 在胎期間に対して大きい場合( 母体糖尿病に関連する場合がある)や, 骨盤位や他の異常胎位である場合(特に初産婦において)などに,外傷のリスクが上昇する。... さらに読む 脳室内出血および/または脳実質内出血 ,脳室周囲白質部の損傷, 緊張性気胸 気胸(緊張性) 緊張性気胸は圧力下での胸腔内に空気が貯留した状態のことであり,肺を圧迫し,心臓への静脈還流量を減少させる。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。) 肺または胸壁の損傷が,空気が胸腔に入ることが可能でも出ていくことができない損傷(一方向弁)である場合に,緊張性気胸が発生する。その結果,空気が貯留して肺を圧迫し,最終的に縦隔を偏移させ,対側肺が圧迫され,心臓への静脈還流量が減少するほどに胸腔内圧が上昇し,... さらに読む 気胸(緊張性) 気管支肺異形成症 気管支肺異形成症(BPD) 気管支肺異形成症は典型的には長期間の人工換気によって生じる新生児慢性肺疾患であり,早産児の在胎期間および酸素投与所要量の程度によってさらに定義される。診断は酸素投与の必要性のほか,場合による換気補助の必要性が長期にわたったかどうかに基づく。治療は支持療法により行い,具体的には栄養補給,水分制限,利尿薬投与などのほか,ときに吸入気管支拡張薬や,最後の手段として吸入コルチコステロイドが用いられることもある。... さらに読む 気管支肺異形成症(BPD) 敗血症 新生児敗血症 新生児敗血症は,新生児期に発生する侵襲性感染症であり,通常は細菌性である。徴候は非特異的なものが多数あり,具体的には自発運動の減少,哺乳力低下,無呼吸,徐脈,体温調節障害,呼吸窮迫,嘔吐,下痢,腹部膨隆,jitteriness,痙攣,黄疸などがある。診断は臨床所見と培養結果に基づいて行う。治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシンまたはセフォタキシムと併用し,できるだけ速やかに起因菌に応じた薬剤に変更する。... さらに読む ,および新生児死亡などがある。頭蓋内合併症は,低酸素血症,高炭酸ガス血症,低血圧,動脈血圧の変動,および脳灌流の低下との関係が示されている( Professional.see page 頭蓋内出血 頭蓋内出血 分娩時の力により,ときに新生児に身体的損傷が引き起こされる。難しい回転術, 吸引分娩, 中位鉗子分娩または高位鉗子分娩に代わり 帝王切開を用いることが増えているため,困難な分娩または外傷を引き起こしうる分娩に起因する新生児の損傷発生率は低下している。 新生児が 在胎期間に対して大きい場合( 母体糖尿病に関連する場合がある)や, 骨盤位や他の異常胎位である場合(特に初産婦において)などに,外傷のリスクが上昇する。... さらに読む  頭蓋内出血 )。

症状と徴候

RDSの症状および徴候には出生直後または数時間以内に発症する急速な努力性の呻吟呼吸があり,胸骨上部および下部の陥凹および鼻翼呼吸を伴う。無気肺および呼吸不全が進行するにつれ症状が悪化し,チアノーゼ,嗜眠,不規則呼吸,および無呼吸が現れ,十分な肺の膨張,換気,および酸素化が確立されなければ最終的に心不全に至ることがある。

体重1000g未満の新生児では,分娩室において呼吸を開始または維持できないほど肺が硬化している場合がある。

診察では呼吸音の減弱を認め,断続性ラ音が聴取されることがある。

診断

  • 臨床的評価

  • 動脈血ガス分析(低酸素血症および高炭酸ガス血症)

  • 胸部X線

  • 血液,髄液,および気管吸引液の培養

RDSの診断は臨床像によって行い,危険因子の認識,低酸素血症および高炭酸ガス血症を示す動脈血ガス,胸部X線が含まれる。胸部X線ではびまん性無気肺(明らかな気管支透亮像[air bronchogram]および肺の低膨張を伴うすりガラス陰影と従来から表現されている)がみられ,X線像は臨床的重症度に大まかに相関する。

鑑別診断としては以下のものがある:

新生児では通常,血液培養が必要となる。早発型敗血症に合併する髄膜炎の発生率は低いため,髄液培養が出生後ルーチンに行われることはないが,特定の症例(例,血液培養でグラム陰性桿菌が陽性となる,遅発型敗血症が懸念される)では行われることがある(1 診断に関する参考文献 呼吸窮迫症候群は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。... さらに読む )。臨床的に,B群レンサ球菌肺炎はRDSと鑑別することが極めて難しいため,培養結果が出るまでの間に抗菌薬投与を開始すべきである。

スクリーニング

RDSは,羊水穿刺または腟から採取(破水している場合)した羊水を用いて行う胎児肺熟成度検査により出生前から予測可能であり,またこの検査は最適な分娩時期を決定するのに役立つ可能性がある。このような検査は選択的分娩に対しては,胎児心音,ヒト絨毛性ゴナドトロピン値,および超音波測定値によって在胎期間を確定できない場合は39週目までが適応となり,選択的分娩ではない場合は34週から36週目の間が適応となる。

羊水検査の項目としては以下のものがある:

  • レシチン/スフィンゴミエリン比

  • 泡沫安定指数試験(羊水中のサーファクタントが多いほど,羊水をエタノールと混合し震盪することにより形成された泡沫の安定性が高い)

  • サーファクタント/アルブミン比

レシチン/スフィンゴミエリン比が > 2,ホスファチジルグリセロールが存在する,泡沫安定指数が47,またはサーファクタント/アルブミン比が > 55mg/gの場合は,RDSのリスクは低い。

診断に関する参考文献

  • 1.Srinivasan L, Harris MC, Shah SS: Lumbar puncture in the neonate: Challenges in decision making and interpretation.Semin Perinatol 36(6):445–453, 2012.doi: 10.1053/j.semperi.2012.06.007.

予後

治療した場合の予後は極めて良好であり,死亡率は10%未満である。十分な換気補助のみでも,サーファクタントの産生がやがて始まり,一旦産生が始まればRDSは4~5日で消失する。しかし,その間に重度の低酸素血症により多臓器不全および死亡に至ることもある。未熟性の高さは,慢性肺疾患,気管支肺異形成症,またはその両方のリスク上昇と関連する。

治療

  • 適応があれば,サーファクタント気管内投与

  • 必要に応じて酸素投与

  • 必要に応じて機械的人工換気

経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP 持続陽圧呼吸療法(CPAP) 最初の安定化手技として,軽度の触覚刺激,頭部のポジショニング,および口腔と鼻腔の吸引を行い,その後必要に応じて以下を実施する: 酸素投与 持続陽圧呼吸療法(CPAP) 非侵襲的陽圧換気(NIPPV) バッグマスク換気または機械的人工換気 さらに読む )などの侵襲性の低い換気技術の使用を支持するエビデンスが増えてきており,これは極早産児においても同様である(1 治療に関する参考文献 呼吸窮迫症候群は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。... さらに読む )。経鼻的CPAPを受けており,吸入気酸素分画(FIO2)を高める必要があるRDSの乳児では,サーファクタントを投与するため短時間の挿管をした後,直ちに抜管することが有益であることが示されている(1 治療に関する参考文献 呼吸窮迫症候群は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。... さらに読む )。細いカテーテルによるサーファクタント気管内投与は新しい手技であり,これはBPDのリスク低下にも有益であることが示されている。いずれの手法でも,BPDの症例数が減少する傾向が示されているが,機械的人工換気の日数は減少していない(2, 3 治療に関する参考文献 呼吸窮迫症候群は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。... さらに読む )。

サーファクタントは回復を促進し, 気胸 気胸 肺エアリーク症候群では,正常時に空気が存在する肺内の部位からその外部へと空気が漏出する。 ( 周産期の呼吸器疾患の概要も参照のこと。) 出生の過程には広範な 生理的変化を伴うため,ときに子宮内での生活中には問題とはならなかった状態が明らかになる場合がある。そのため,全ての出産に 新生児蘇生の技能を有する人物の立ち会いが必要である。 在胎期間と 成長パラメータは,新生児の病態のリスクを同定するのに役立つ。... さらに読む 間質性気腫 間質性肺気腫(PIE) 肺エアリーク症候群では,正常時に空気が存在する肺内の部位からその外部へと空気が漏出する。 ( 周産期の呼吸器疾患の概要も参照のこと。) 出生の過程には広範な 生理的変化を伴うため,ときに子宮内での生活中には問題とはならなかった状態が明らかになる場合がある。そのため,全ての出産に 新生児蘇生の技能を有する人物の立ち会いが必要である。 在胎期間と 成長パラメータは,新生児の病態のリスクを同定するのに役立つ。... さらに読む 脳室内出血 脳室内出血および/または脳実質内出血 分娩時の力により,ときに新生児に身体的損傷が引き起こされる。難しい回転術, 吸引分娩, 中位鉗子分娩または高位鉗子分娩に代わり 帝王切開を用いることが増えているため,困難な分娩または外傷を引き起こしうる分娩に起因する新生児の損傷発生率は低下している。 新生児が 在胎期間に対して大きい場合( 母体糖尿病に関連する場合がある)や, 骨盤位や他の異常胎位である場合(特に初産婦において)などに,外傷のリスクが上昇する。... さらに読む 脳室内出血および/または脳実質内出血 気管支肺異形成症 気管支肺異形成症(BPD) 気管支肺異形成症は典型的には長期間の人工換気によって生じる新生児慢性肺疾患であり,早産児の在胎期間および酸素投与所要量の程度によってさらに定義される。診断は酸素投与の必要性のほか,場合による換気補助の必要性が長期にわたったかどうかに基づく。治療は支持療法により行い,具体的には栄養補給,水分制限,利尿薬投与などのほか,ときに吸入気管支拡張薬や,最後の手段として吸入コルチコステロイドが用いられることもある。... さらに読む 気管支肺異形成症(BPD) のリスクを低減し,入院中および1年後の新生児死亡率を低下させる。サーファクタント補充の選択肢としては,以下のものがある:

  • ベラクタント(beractant)

  • ポラクタントアルファ(poractant alfa)

  • カルファクタント(calfactant)

  • ルシナクタント(lucinactant)

ベラクタント(beractant)は,Bタンパク質およびCタンパク質,パルミチン酸コルホセリル,パルミチン酸,ならびにトリパルミチンを含有する脂質ウシ肺抽出物で,100mg/kgを必要に応じて6時間毎に最高4回まで投与する。

ポラクタントアルファ(poractant alfa)は,リン脂質,中性脂質,脂肪酸,ならびにサーファクタント関連Bタンパク質およびCタンパク質を含有する改変ブタ由来肺ミンチ抽出物で,200mg/kg投与後,100mg/kgを必要に応じて12時間毎に最高2回まで投与する。

カルファクタント(calfactant)は,リン脂質,中性脂質,脂肪酸,ならびにサーファクタント関連Bタンパク質およびCタンパク質を含有する子ウシ肺抽出物で,105mg/kgを必要に応じて12時間毎に最高3回まで投与する。

ルシナクタント(lucinactant)は,肺サーファクタントBタンパク質アナログ,シナプルチド(KL4)ペプチド,リン脂質,および脂肪酸による合成サーファクタントで,175mg/kgを6時間毎に最高4回まで投与する。

本療法後,肺コンプライアンスは速やかに改善しうる。肺エアリークのリスクを低減するため,呼吸器の最大吸気圧を速やかに低下させる必要がある。人工呼吸器のその他のパラメータ(例,FIO2,換気回数)も下げる必要がある場合がある。

治療に関する参考文献

  • 1.Blennow M, Bohlin K: Surfactant and noninvasive ventilation.Neonatology 107(4):330–336, 2015.doi: 10.1159/000381122.

  • 2.Bohlin K, Gudmundsdottir T, Katz-Salamon M, et al: Implementation of surfactant treatment during continuous positive airway pressure.J Perinatol 27(7):422–427, 2007.doi: 10.1038/sj.jp.7211754.

  • 3.Aldana-Aguirre JC, Pinto M, Featherstone RM, Kumar M: Less invasive surfactant administration versus intubation for surfactant delivery in preterm infants with respiratory distress syndrome: A systematic review and meta-analysis.Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 102(1):F17–F23, 2017.doi: 10.1136/archdischild-2015-310299.

予防

要点

  • 呼吸窮迫症候群(RDS)は肺サーファクタント欠乏が原因で発生し,典型的には在胎37週未満出生の新生児に起こるもので,未熟性が高いほど欠乏の程度も高い。

  • サーファクタントが欠乏すると,肺胞が閉鎖するかまたは開かず,肺はびまん性の無気肺状態となり,炎症および肺水腫が引き起こされる。

  • 呼吸機能不全を引き起こすほか,RDSは脳室内出血,緊張性気胸,気管支肺異形成症,敗血症,および死亡のリスクを増大させる。

  • 診断は胸部X線を用い臨床的に行い,肺炎および敗血症を適切な培養により除外する。

  • 早産が予測される場合,羊水のレシチン/スフィンゴミエリン比,泡沫安定性,またはサーファクタント/アルブミン比を検査し肺の成熟度を評価する。

  • 必要に応じて呼吸補助を行い,直ちに挿管が必要な乳児または経鼻的持続陽圧呼吸療法を行っていても呼吸状況が悪化している乳児には,サーファクタント気管内投与による治療を行う。

  • 在胎24~34週での分娩が避けられない場合は,時間が許せば母親にコルチコステロイド(ベタメタゾン,デキサメタゾン)を非経口(parenteral)にて数回投与する;コルチコステロイドは胎児のサーファクタント産生を誘発しRDSのリスクおよび/または重症度を低減する。

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