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小児の咳嗽

執筆者:

Deborah M. Consolini

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

レビュー/改訂 2020年 6月
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咳嗽は,気道からの分泌物除去を助け,異物誤嚥から気道を保護し,疾患の症状にもなりうる1つの反射である。咳嗽は,親が子を受診させる最も多い愁訴の1つである。

病因

咳嗽の原因は,症状が急性(4週間未満)か慢性(4週以上)かによって異なる。(小児における咳嗽の主な原因 小児における咳嗽の主な原因 小児における咳嗽の主な原因 の表を参照のこと。)

急性咳嗽の場合,最も頻度の高い原因は以下のものである:

慢性咳嗽の場合,最も頻度の高い原因は以下のものである:

評価

病歴

現病歴の聴取では,咳嗽の持続期間および性状(犬吠様,スタッカート,発作性)ならびに発症(突然または緩徐)を対象に含めるべきである。合併症状についても尋ねるべきである。合併症状の中には,いずれの疾患でもみられるもの(例,鼻汁,咽頭痛,発熱)もあれば,特定の原因を示唆するものもある(頭痛,眼そう痒および咽頭痛[後鼻漏];喘鳴および労作時の咳嗽[喘息];盗汗[結核];乳児での哺乳後の溢乳,易刺激性,または背中の反り返り[胃食道逆流])。6カ月~6歳の小児の場合は,異物誤嚥の可能性について親に聞くべきである(年長の同胞または訪問者が小さい玩具を持っていた,小児の手の届く範囲い小さな物体が存在した,小さく滑らかな食物[例,ピーナッツ,ブドウ]を飲み込んだなど)。

システムレビュー(review of systems)では,腹痛(一部の細菌性肺炎),体重減少または体重増加不良および悪臭便(嚢胞性線維症),ならびに筋肉痛(ウイルス性疾患または非定型肺炎に伴う可能性があるが,細菌性肺炎には通常伴わない)などの可能性のある原因の症状に注意すべきである。

既往歴の聴取では,最近の呼吸器感染症,反復性肺炎,既知のアレルギーまたは喘息歴,結核の危険因子(例,結核感染が判明しているまたは疑われる人との接触,刑務所への出入り,HIV感染,結核流行国への旅行または結核流行国からの移民),および呼吸器刺激物質への曝露を対象に含めるべきである。

身体診察

呼吸数,体温,および酸素飽和度などのバイタルサインに注意すべきである。呼吸窮迫の徴候(例,鼻翼呼吸,肋間陥凹,チアノーゼ,呻吟,吸気性喘鳴,著しい不安)に注意すべきである。

頭頸部診察では,鼻汁の有無と量,および鼻甲介の状態(蒼白,ブヨブヨしている,または炎症がある)に焦点を置くべきである。咽頭では後鼻漏について確認すべきである。

頸部および鎖骨上部について,リンパ節腫脹があるか視診および触診を行うべきである。

肺の診察では,吸気性喘鳴,呼気性喘鳴,断続性ラ音,類鼾音,呼吸音減弱,および硬化徴候(例,やぎ声,聴診上のE to A変化,打診時の濁音)の有無に焦点を置く。

腹部の診察では,腹痛,特に上腹部痛(左または右下葉の肺炎の可能性を示す)に注目すべきである。

四肢の診察では,ばち指または爪床のチアノーゼ(嚢胞性線維症)に注意すべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • チアノーゼまたはパルスオキシメトリーでの低酸素症

  • 吸気性喘鳴

  • 呼吸窮迫

  • 重症感(toxic appearance)

  • 肺診察での異常所見

所見の解釈

臨床所見からしばしば特定の原因が示唆される( Professional.see table 小児における咳嗽の主な原因 小児における咳嗽の主な原因 小児における咳嗽の主な原因 );急性咳嗽と慢性咳嗽の鑑別は特に参考になるが,慢性咳嗽を起こす多くの疾患は急性に発症し,4週を経過する前に患者が受診する場合があることに注意が重要である。

咳嗽の他の特徴は参考になるが,より特異性は低い。犬吠様咳嗽は クループ クループ クループは上下気道の急性炎症であり, 1型パラインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされることが最も多い。金属音様で犬吠様の咳嗽と吸気性喘鳴(stridor)を特徴とする。診断は通常臨床的に明白であるが,頸部X線の前後像によっても診断可能である。治療では,解熱薬,水分,霧状のラセミ体アドレナリン,およびコルチコステロイドを投与する。予後は極めて良好である。 クループは主に生後6カ月から3歳の小児が罹患する。... さらに読む クループ または 気管炎 細菌性気管炎 細菌性気管炎は気管の細菌感染症である。 細菌性気管炎はあまり多くはみられないが,いずれの年齢の小児でも罹患しうる。 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および A群β溶血性レンサ球菌が最も高頻度に関係する。 ほとんどの小児は,重度の 吸気性喘鳴(stridor)および... さらに読む を示唆するが,心因性咳嗽または呼吸器感染症後の咳嗽の特徴でもある。スタッカート様の咳嗽はウイルス性肺炎または非定型 肺炎 肺炎の概要 肺炎は,感染によって引き起こされる肺の急性炎症である。初期診断は通常,胸部X線および臨床所見に基づいて行う。 原因,症状,治療,予防策,および予後は,その感染が細菌性,抗酸菌性,ウイルス性,真菌性,寄生虫性のいずれであるか,市中または院内のいずれで発生したか,機械的人工換気による治療を受けている患者に発生したかどうか,ならびに患者が免疫能... さらに読む に一致する。発作性咳嗽は 百日咳 百日咳 百日咳は,グラム陰性細菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)を原因菌として主に小児および青年に発生する,感染性の強い疾患である。 まず非特異的な上気道感染症状が出現した後,通常は長い吸気性笛声(whoop)で終わる発作性ないし痙攣性の咳嗽(痙咳)がみられるようになる。診断は上咽頭培養,ポリメラーゼ連鎖反応検査,および血清学的検査による。治療はマクロライド系抗菌薬による。... さらに読む または特定のウイルス性肺炎(アデノウイルス)の特徴である。発育不良または体重減少は, 結核 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 または 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症は,主に消化器系と呼吸器系を侵す外分泌腺の遺伝性疾患である。慢性肺疾患,膵外分泌機能不全,肝胆道疾患,および汗の電解質濃度の異常高値を引き起こす。診断は,新生児スクリーニング検査で陽性と判定された患者または特徴的な臨床的特徴を認める患者において,汗試験を行うか,嚢胞性線維症の原因遺伝子変異を2つ同定することによる。治療は,積極... さらに読む 嚢胞性線維症 で起こりうる。夜間咳嗽は後鼻漏または 喘息 乳幼児における呼気性喘鳴および喘息 呼気性喘鳴(wheezing)とは,末梢気道の狭小化したまたは圧迫された部位を空気が通る際に生じる比較的高調な笛様の雑音である。生後数年間に最もよくみられ,典型的には気道のウイルス感染または喘息により起こるが,可能性のある他の原因として刺激物またはアレルゲンの吸入,食道逆流,および心不全などがある。 (成人における 呼気性喘鳴および 喘息も参照のこと。) 反復性の呼気性喘鳴は生後数年間はよくみられる;小児3人に1人が,3歳までに少なくと... さらに読む を示唆している場合がある。睡眠開始時および朝の起床時の咳嗽は通常, 副鼻腔炎 副鼻腔炎 副鼻腔炎はウイルス,細菌,もしくは真菌性感染症またはアレルギー反応による副鼻腔の炎症である。症状としては,鼻閉,膿性鼻汁,顔面痛または顔面の圧迫感などのほか,ときに倦怠感,頭痛,発熱もみられる。急性ウイルス性鼻炎を想定した治療には,蒸気吸入および血管収縮薬の局所薬または全身投与などがある。細菌感染が疑われる場合の治療は,アモキシシリン/クラブラン酸またはドキシサイクリンなどの抗菌薬を,急性副鼻腔炎には5~7日間,慢性副鼻腔炎には最長6週... さらに読む 副鼻腔炎 を示唆し,真夜中の咳嗽はより喘息に一致する所見である。発熱やURI症状を認めず突然の咳嗽を呈する幼児では,異物誤嚥を強く疑うべきである。

検査

レッドフラグサインのある小児には,パルスオキシメトリーおよび胸部X線を行うべきである。慢性咳嗽のある小児全てには胸部X線が必要である。

吸気性喘鳴,流涎,発熱,および著しい不安のみられる小児では喉頭蓋炎の評価を行う必要があるが,一般にその評価は,耳鼻咽喉科専門医が気管内チューブまたは気管カニューレ留置を迅速に行えるよう準備をし手術室で行うべきである。異物誤嚥が疑われる場合は,胸部X線で吸気撮影と呼気撮影を行うべきである(または一部の施設では胸部CT)。

結核の危険因子または体重減少のある小児には,胸部X線および精製ツベルクリン(PPD)検査を行うべきである。

繰り返す肺炎,発育不良,または悪臭便のある小児には,嚢胞性線維症を想定した胸部X線および汗試験を行うべきである。

上気道感染症の症状がみられ,レッドフラグサインはない小児での急性咳嗽は,通常はウイルス感染によるものであり,検査の適応となることはまれである。レッドフラグサインのない他の多くの小児では,病歴聴取および身体診察後に暫定的な診断を行う。そのような症例では検査の必要はないが,経験的治療が行われ有効ではなかった場合,検査が必要なこともある。例えば,アレルギー性副鼻腔炎が疑われ抗ヒスタミン薬が投与されたが症状が軽快しなかった場合,さらなる評価のため頭部CTが必要なこともある。胃食道逆流症が疑われ,H2受容体拮抗薬および/またはプロトンポンプ阻害薬の投与が無効に終わった場合は,pH/インピーダンス検査または内視鏡検査による評価が必要になることもある。

治療

咳嗽の治療は基礎疾患の管理である。例えば,細菌性肺炎には抗菌薬を,喘息には気管支拡張薬および抗炎症薬を投与すべきである。ウイルス感染症の小児には,必要に応じて酸素および/または気管支拡張薬投与などの支持療法を行うべきである。

鎮咳薬および粘液溶解薬の使用を支持するエビデンスはほとんどない。咳嗽は気道から分泌物を除去する重要な機序であり,呼吸器感染症からの回復を助けうる。非特異的な鎮咳薬の使用は,小児では推奨されない。

要点

  • 臨床診断で多くの場合十分である。

  • 月齢6カ月から6歳の小児の場合,異物の誤嚥を強く疑う必要がある。

  • 鎮咳薬および去痰薬の有効性についてはほとんどの場合証拠が不足している。

  • レッドフラグサインがある場合または慢性咳嗽の場合は胸部X線を行う。

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