円錐角膜は緩徐進行性に角膜が薄くなり隆起するもので,通常は両側性で10~25歳の間に発症する。原因は不明である。
危険因子としては以下のものがある:
円錐角膜の家族歴
アトピー性疾患
眼を激しくこすること
眼瞼の弛緩
特定の結合組織疾患(例, エーラス-ダンロス症候群 エーラス-ダンロス症候群 エーラス-ダンロス症候群は,関節過可動性,皮膚の過弾力性,および広範な組織脆弱性を特徴とする遺伝性のコラーゲンの障害である。診断は臨床的に行う。治療は支持療法による。 遺伝形式は通常, 常染色体優性であるが,エーラス-ダンロス症候群は不均一性である。様々な遺伝子変異が様々なコラーゲンの量,構造,または形成に影響を与える。変異は,コラーゲン(例,I型,III型,V型)またはコラーゲン修飾酵素(例,コラーゲンを切断するプロテアーゼであるリジ... さらに読む , マルファン症候群 マルファン症候群 マルファン症候群は結合組織の異常から成り,結果として眼,骨格,および心血管系の異常を来す(例, 大動脈解離につながる上行大動脈の拡張)。診断は臨床的に行う。治療には,上行大動脈の拡張を遅らせるための予防的β遮断薬投与,および予防的大動脈手術などがある。 マルファン症候群の遺伝形式は 常染色体優性である。基礎的な分子生物学的異常は,ミクロフィブリルの主要成分であり細胞の細胞外基質への固定を助ける糖タンパク質フィブリリン-1(
さらに読む , 骨形成不全症 骨形成不全症 骨形成不全症は,骨のびまん性の異常な脆弱性を生じる遺伝性のコラーゲンの障害であり,ときに感音難聴,青色強膜,象牙質形成不全,関節の過可動性を伴う。診断は,通常,臨床的に行う。治療には,一部の病型に対して成長ホルモン,およびビスホスホネートが含まれる。 骨形成不全症には4つの主な病型がある: I型( 常染色体優性) II型( 常染色体劣性) III型(常染色体劣性) さらに読む ) 視覚異常を伴う先天性疾患(例, レーベル遺伝性視神経症 レーベル遺伝性視神経症 遺伝性視神経症は,視力障害に加えてときに心臓または神経系の異常を引き起こす遺伝的障害によって生じる。効果的な治療法はない。 遺伝性視神経症には,優性遺伝性視神経萎縮やレーベル遺伝性視神経症などがあり,これらはいずれもミトコンドリア細胞障害である( 1)。これらの疾患は,典型的には小児期または青年期に発生し,両眼性対称性の中心視力障害を伴う。視神経損傷は通常永久的で,進行する場合もある。視神経萎縮が認められる頃には,すでに相当の視神経損傷... さらに読む , 未熟児網膜症 未熟児網膜症 未熟児網膜症とは, 早産児,特に出生体重が最低レベルの早産児に生じる網膜血管形成異常による両側性疾患である。正常視力から失明の転帰をとる。診断は眼底検査による。重症例の治療として凍結療法,レーザー光凝固,またはベバシズマブがあり,これ以外の治療は合併症(例,網膜剥離)に対して行う。 網膜血管は妊娠半ば頃に成長し始めるが,網膜血管の発達は満期まで完了しない。このような血管が異常なパターンで成長を続け,血管が形成されている網膜中央部と血管が... さらに読む ,無虹彩症)
角膜が歪んだ円錐形を呈するため,角膜の屈折特性が大きく変化し(不正乱視),眼鏡で完全には矯正できないことがある。進行性円錐角膜では,頻回に眼鏡を変える必要がある。コンタクトレンズの方が視力矯正は良好であるため,眼鏡に満足しない場合は試みるべきである。コンタクトレンズによる矯正視力が不十分な場合,コンタクトレンズ装用に耐えられない場合,または視力低下を引き起こす角膜瘢痕(実質線維が裂けることによる)を認める場合は, 角膜移植術 角膜移植 角膜移植は以下のいくつかの理由で行われる: 角膜を再建する(例,穿孔した角膜の置換) 難治性の痛みを緩和する(例,水疱性角膜症において繰り返す水疱の破裂による重度の異物感) 内科的管理に反応しない疾患の治療(例,コントロールできない重度の真菌性角膜潰瘍) 角膜の透明性を改善して視力を改善する(例,角膜潰瘍後に瘢痕化した角膜,フックスジストロフィーもしくは白内障手術後の浮腫により混濁した角膜,遺伝性角膜実質ジストロフィーなどでみられる非透... さらに読む が必要となることがある。
新しい治療法ではコンタクトレンズの耐性が増すことで視力が改善するため,一部の患者では移植を回避することができる。具体的には,円錐角膜の周辺部を押し上げて円錐角膜の傾斜を相対的に小さくすることを目指した角膜内リングの移植や,紫外線照射により角膜を強化して角膜のさらなる菲薄化および隆起を予防する角膜コラーゲンクロスリンキングなどがある。
(角膜疾患に関する序論 角膜疾患に関する序論 角膜の病変を示唆する症状(例えば,単純な結膜炎ではなく)としては,片側性のもの,疼痛(単なる砂が入ったような感覚ではなく,異物感や疼きがあるもの,特に光への曝露で生じるもの[羞明]),および視力低下などがある。 角膜疾患には以下のものがある: 水疱性角膜症 コーガン症候群 角膜潰瘍 さらに読む も参照のこと。)