Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

honeypot link

網膜中心静脈閉塞症および網膜静脈分枝閉塞症

(網膜静脈閉塞症)

執筆者:

Sonia Mehta

, MD, Vitreoretinal Diseases and Surgery Service, Wills Eye Hospital, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2020年 6月
ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します
本ページのリソース

網膜中心静脈閉塞症は血栓による網膜中心静脈の閉塞である。軽度から重度の無痛性の視力障害を引き起こし,通常は突然に起こる。診断は眼底検査による。治療法としては,血管内皮増殖因子阻害薬(例,ラニビズマブ,ペガプタニブ,ベバシズマブ),デキサメタゾンのインプラントまたはトリアムシノロンの眼内注射,およびレーザー光凝固が使用できる。

病因

主要な危険因子としては以下のものがある:

その他の危険因子としては以下のものがある:

閉塞は特発性の場合もある。本疾患は若年者でまれである。閉塞は網膜静脈の分枝または網膜中心静脈のいずれにも起こりうる。

網膜中心静脈閉塞症患者の約16%で,閉塞の数週間から数カ月後に網膜新生血管(異常な新血管の形成)または虹彩新生血管(虹彩ルベオーシス)が起こり,続発性の(新生血管)緑内障に至る可能性がある。網膜新生血管により硝子体出血が起こる場合がある。

症状と徴候

無痛性の視力障害は,通常突然に起こるが,数日から数週間かけて徐々に起こることもある。眼底検査では,網膜全体の出血,網膜静脈の怒張(拡張)および蛇行,ならびに通常は著明な網膜浮腫を認める。これらの変化は,閉塞が網膜中心静脈に起こった場合は一般的にはびまん性となり,網膜中心静脈の1枝のみに起こった場合は1象限に限られる。

診断

  • 眼底検査

  • カラー眼底写真撮影

  • フルオレセイン蛍光眼底造影

  • 光干渉断層撮影

本疾患の診断は,無痛性の視力障害が起きた患者,特に危険因子を有する患者で疑う。眼底検査,カラー眼底写真撮影,およびフルオレセイン蛍光眼底造影により診断を確定する。光干渉断層撮影を用いて,黄斑浮腫の程度およびその治療に対する反応を判定する。網膜中心静脈閉塞症の患者では, 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 および 緑内障 緑内障の概要 緑内障は,不可逆的な視力障害につながりうる進行性の視神経損傷を特徴とする一群の眼疾患であり,重要な要因として眼圧の相対的上昇が関わっている。 緑内障は世界で,また米国で2番目に頻度が高い失明の原因であり,米国ではアフリカ系の人々およびヒスパニックの失明の原因として最多である。約300万人の米国人および世界で約6400万人が緑内障に罹患して... さらに読む の有無を評価し, 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む の検査を行う。若年患者では,血液粘稠度上昇の検査を行う(血算および必要に応じて凝固因子)。

予後

ほとんどの患者である程度の視力障害が起こる。軽症例では,視力が正常近くまで自然に改善する可能性があり,改善までの期間は様々である。発症時の視力が最終視力のよい指標である。視力が20/40(0.5)以上あれば,依然として視力が良好な可能性が高く,ときには正常に近い。視力が20/200([0.1])未満であれば,視力はその程度にとどまるか,患者の80%で悪化する。網膜中心静脈閉塞症はまれに再発する。

治療

  • 黄斑浮腫に対しては,血管内皮増殖因子阻害薬(VEGF阻害薬),デキサメタゾンのインプラント,および/またはトリアムシノロンアセトニドの眼内注射

  • 網膜静脈分枝閉塞症による黄斑浮腫の一部症例に対しては,局所レーザー光凝固

  • 新生血管が発生している場合は汎網膜レーザー光凝固

黄斑浮腫が中心窩に及んでいる患者における網膜静脈分枝閉塞症に対する治療は,通常VEGF阻害薬(例,ラニビズマブ,アフリベルセプト,またはベバシズマブ)の眼内注射,またはトリアムシノロンの眼内注射もしくはデキサメタゾンの徐放性インプラントである。これらの治療法は,黄斑浮腫患者における網膜中心静脈閉塞症の治療にも用いることができる。これらの治療法により,30~40%の患者で視力が著明に改善する。

黄斑浮腫のある網膜静脈分枝閉塞症に対しては局所レーザー光凝固を使用できるが,VEGF阻害薬の眼内注射またはデキサメタゾンのインプラントほど効果的ではない。網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫の治療で,局所レーザー光凝固は一般的に効果がない。

網膜中心静脈閉塞症または網膜静脈分枝閉塞症に続発して網膜または前眼部に新生血管が発生した場合,速やかに汎網膜レーザー光凝固を行って,硝子体出血を減少させ,新生血管緑内障を予防すべきである。

要点

  • 網膜静脈閉塞症では塞栓による閉塞が起こる。

  • 患者は典型的に突然に起きる無痛性の視覚障害を呈し,危険因子を有していることがある(例,高齢,高血圧)。

  • 眼底検査で特徴的に静脈の拡張および出血を伴う黄斑浮腫が明らかになる;追加検査として,カラー眼底写真撮影,フルオレセイン蛍光眼底造影,および光干渉断層撮影などがある。

  • 黄斑浮腫のある患者に対して,VEGF阻害薬(ラニビズマブ,アフリベルセプトまたはベバシズマブ)の眼内注射またはデキサメタゾンのインプラントもしくはトリアムシノロンの眼内注射による治療を行う。

  • 網膜静脈分枝閉塞症に続発した黄斑浮腫の一部症例では,局所レーザー光凝固が有用であり,網膜または前眼部の新生血管に対しては汎網膜レーザー光凝固を行うべきである。

ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します
家庭版を見る
quiz link

Test your knowledge

Take a Quiz! 
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS
TOP