アレルギー性結膜炎

(アトピー性結膜炎;アトピー性角結膜炎;花粉症結膜炎;通年性アレルギー性結膜炎;季節性アレルギー性結膜炎;春季カタル)

執筆者:Melvin I. Roat, MD, FACS, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2019年 10月
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アレルギー性結膜炎は,急性,間欠性,または慢性の結膜の炎症であり,通常,空中アレルゲンによって生じる。症状としては,そう痒,流涙,眼脂,結膜充血などがある。診断は臨床的に行う。治療は抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定化薬の局所投与による。

結膜炎の概要も参照のこと。)

アレルギー性結膜炎の病因

アレルギー性結膜炎は,特異抗原に対するI型過敏反応による。

季節性アレルギー性結膜炎(花粉症結膜炎)は空中のカビの胞子,または樹木,イネ科の草,もしくは雑草の花粉によって生じる。原因となる植物の生活環に一致して,春,晩夏,または初秋にピークを迎え,冬に消失する傾向がある。

通年性アレルギー性結膜炎(アトピー性結膜炎,アトピー性角結膜炎)は,チリダニ,動物の鱗屑,およびその他の非季節性のアレルゲンによって生じる。これらのアレルゲン,特に室内のものは,通年の症状を引き起こす傾向がある。

春季カタルは,より重度の結膜炎であり,アレルギーが原因である可能性が非常に高い。湿疹喘息,または季節性アレルギーを併発する5~20歳の男性に最もよくみられる。春季カタルは,典型的には春になるたびに再発し,秋および冬に沈静化する。多くの小児では,成長とともに成人期早期までに治まる。

アレルギー性結膜炎の症状と徴候

全般

アレルギー性結膜炎の患者は以下を訴える:

  • 両眼の軽度から強度のそう痒

  • 結膜充血

  • 光過敏(重症例では羞明)

  • 眼瞼浮腫

  • 水様性の,または糸を引く眼脂

一般的に鼻炎を併発する。患者の多くは湿疹アレルギー性鼻炎,または喘息など,他のアトピー性疾患を有する。

特徴的所見には,結膜の浮腫および充血,ならびに眼脂などがある。眼球結膜は半透明で青みがかり,肥厚したように見えることがある。結膜浮腫ならびに特徴的な皮膚眼瞼炎(まず上眼瞼内側,続いて下眼瞼内側に生じる充血,浮腫,および苔癬化を伴う)がよくみられる。慢性のそう痒により,患者が慢性的に眼瞼をこすり,眼周囲の色素沈着,および皮膚眼瞼炎を生じることがある。

季節性結膜炎と通年性結膜炎

季節性結膜炎と通年性結膜炎の患者では,上眼瞼結膜上の細かい乳頭がビロード状の外観を示す。より重度の形態では,より大きい眼瞼結膜の乳頭,結膜瘢痕化,角膜血管新生,および様々な視力障害を伴う角膜瘢痕化を生じることがある。

春季カタル

通常,上眼瞼の眼瞼結膜が侵されるが,ときに眼球結膜が侵される。眼瞼型では,上眼瞼結膜に,四角形の硬く扁平で密集した薄桃色から灰色の石垣状乳頭を認める。侵されていない眼球結膜は,乳白色である。眼球(輪部)型では,角膜周囲の結膜が肥厚し,灰白色を帯びる。眼脂は粘りの強い粘液状で,多くの好酸球を含む。

3~11%の患者で角膜潰瘍が発生し,疼痛および羞明の悪化をもたらす。その他の角膜変化(例,中心部の病変)および角膜輪部への好酸球の白い沈着(ホルナー・トランタス斑)がみられることもある。

アレルギー性結膜炎の診断

結膜炎の診断,ならびに細菌性ウイルス性,および非感染性結膜炎の鑑別( see table 急性結膜炎の鑑別点)は通常臨床的に行う。アレルギー性結膜炎では,下または上眼瞼結膜から採取できる結膜擦過検体中に好酸球が認められる;しかしながら,このような検査が適応となることはまれである。

表&コラム

アレルギー性結膜炎の治療

  • 対症療法

  • 抗ヒスタミン薬,非ステロイド系抗炎症薬,肥満細胞安定化薬の局所投与,またはこれらの組合せ

  • 治療抵抗性例に,コルチコステロイドまたはシクロスポリンの局所投与

  • ときに,経口抗ヒスタミン薬

アレルギー性結膜炎の症状は,既知のアレルゲンの回避,ならびに冷罨法および代用涙液の使用により軽減できる;抗原脱感作がときに役立つ。軽症例では,OTC医薬品の抗ヒスタミン薬(例,ケトチフェン)の局所投与が有用である。もし,これらの薬物で十分でなければ,局所処方薬の抗ヒスタミン薬(例,オロパタジン,ベポタスチン,アゼラスチン),肥満細胞安定化薬(例,ネドクロミル,クロモグリク酸[cromolyn]),または非ステロイド系抗炎症薬(例,ケトロラク)を単独または併用で使用できる。治療抵抗性の症例,または症状の迅速な緩和が重要な状況では,コルチコステロイドの局所投与(例,ロテプレドノール,0.1%フルオロメトロン,0.12~1%酢酸プレドニゾロン点眼1日3回)が有用なことがある。コルチコステロイドの局所投与は,潜伏性の単純ヘルペスウイルス眼感染症の再発につながり,場合により角膜潰瘍および角膜穿孔を引き起こし,また長期間使用すると緑内障,場合により白内障を引き起こす可能性があるため,コルチコステロイドの使用開始およびモニタリングは眼科医が行うべきである。シクロスポリンの点眼も役立つことがある。コルチコステロイドまたはタクロリムス軟膏の皮膚への塗布は,眼瞼のアトピー性皮膚炎の治療に非常に効果的である。経口抗ヒスタミン薬(例,フェキソフェナジン,セチリジン,またはヒドロキシジン)が役立つ場合もあり,患者が他のアレルギー症状(例,鼻漏)を有する場合は特に役立つ。

季節性アレルギー性結膜炎では,多剤併用投与または間欠的なコルチコステロイドの局所投与を必要とする可能性は低い。

アレルギー性結膜炎の要点

  • アレルギー性結膜炎は通常,空中アレルゲンによって引き起こされ,季節性のこともあれば通年性のこともある。

  • 症状としては,そう痒,眼瞼浮腫,糸を引くまたは水様性の眼脂や,ときに季節性再発の既往などがみられる傾向がある。

  • 診断は通常臨床的に行う。

  • 治療には,涙液補充および外用薬(通常抗ヒスタミン薬,血管収縮薬,非ステロイド系抗炎症薬,肥満細胞安定化薬,またはこれらの組合せ)などがある。

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