屈折異常の概要

執筆者:Deepinder K. Dhaliwal, MD, L.Ac, University of Pittsburgh School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 5月
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正視(正常な屈折)眼では,入射光は角膜および水晶体により網膜上に焦点を結び,鮮明な像が形成されて脳へ送られる。水晶体には弾性があり,若年者ほど弾性が強い。調節中は,像の焦点を正しく合わせるために毛様体筋が水晶体の形を調整する。屈折異常では,網膜上に鮮明な像を結ぶことができず,霧視を生じる(屈折異常の図を参照)。

屈折異常

(A)正視;(B)近視;(C)遠視;(D)乱視。

近視では,角膜の曲率が急峻すぎるか,眼軸長が長すぎるか,またはその両方のために網膜より前方に焦点がある。遠方の物はぼやけて見えるが,近くの物ははっきりと見ることができる。近視の矯正には,凹(マイナス)レンズを使用する。小児における近視はしばしば,成長が止まるまで進行する。

遠視では,角膜の曲率が扁平すぎるか,眼軸長が短すぎるか,またはその両方のために網膜より後方に焦点がある。成人では,近くの物と遠くの物がぼやけて見える。小児および若年成人は,軽度の遠視があっても調節能力が優れているため,明瞭に見えることがある。遠視の矯正には,凸(プラス)レンズを使用する。

乱視の患者では,角膜または水晶体の曲率が球状でない(むらがある)ため,様々な方向(例,垂直,斜め,水平)からの光線を様々な場所に焦点させる。乱視の矯正には,円柱レンズ(円柱の切片)を使用する。円柱レンズは一方の軸方向では屈折力がなく,他の軸方向では凹または凸レンズになっている。

老視は加齢により,水晶体の形を変化させて近くの物に焦点を合わせる能力が低下した状態である。典型的には,40代初期または中頃に入ると老視が顕著になる。近くの物を見るときの矯正には凸レンズを使用する。このようなレンズは,新たな眼鏡として作られることもあれば,2焦点または可変焦点レンズとして従来のレンズに組み込まれることもある。

不同視は両眼の屈折異常が著しく異なるものである(通常は3ジオプトリーを超える)。眼鏡を用いて矯正すると,像の大きさに差が生じる(不等像視);2つのサイズの異なる像を融合させることが困難になり,一方の像を抑制する結果にもなりうる。

屈折異常の症状と徴候

屈折異常の主な症状は遠方の物体,近方の物体,またはその両方に対する視力低下である。ときに,毛様体筋の過度の筋緊張により頭痛を生じることがある。長時間の眼の使用で目を細め眉をひそめることにより頭痛を生じることもある。時折,過度の凝視により眼の表面が乾燥し,眼の刺激症状,そう痒,眼精疲労,異物感,および充血を生じることがある。字を読むときに顔をしかめたり,目を細めたりすることや,過度にまばたきをしたり,目をこすったりすることは,小児における屈折異常の症状である。

屈折異常の診断

  • 視力検査

  • 屈折検査

  • 総合的な眼科診察

必要に応じて,視力検査と屈折検査(屈折異常の測定)を1年毎または2年毎に行うべきである。小児の視力スクリーニングは,学習に支障が出る前に屈折異常を発見するのに役立つ。総合的な眼科診察を眼科医またはオプトメトリストが行い,同時に屈折検査も行うべきである。

屈折異常の治療

  • 眼鏡

  • コンタクトレンズ

  • 屈折矯正手術

屈折異常の治療法としては,眼鏡,コンタクトレンズ屈折矯正手術がある。

近視および遠視は,球面レンズによって矯正する。凹レンズは近視の治療に用いられる;凹レンズまたは拡散型レンズである。凸レンズは遠視の治療に用いられる;凸レンズまたは収束型レンズである。乱視は円柱レンズによって治療する。矯正レンズの処方には3つの数値が書かれる。最初の数値は必要な球面矯正の度数(等級)である(近視ではマイナス度数;遠視ではプラス度数)。2つ目の数値は必要な円柱矯正の度数である(プラスまたはマイナス)。3つ目の数値は円柱レンズの軸である。例えば,近視性単乱視の人の処方箋には,-4.50 + 2.50 × 90,遠視性単乱視の人の処方箋には,+3.00 + 1.50 × 180などと書かれる。

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