鼻咽腔閉鎖機能不全

執筆者:Clarence T. Sasaki, MD, Yale University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 11月
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鼻咽腔閉鎖機能不全は中咽頭と上咽頭の間にある括約筋の不完全な閉鎖であり,しばしば口蓋の解剖学的異常により発生し,開鼻声の原因となる。診断はファイバースコープによる鼻咽頭鏡下での直接視診により行う。治療は言語療法および手術による。

鼻咽腔閉鎖機能不全は中咽頭と上咽頭の間の口蓋咽頭括約筋の不完全閉鎖である。正常では,閉鎖は軟口蓋および上咽頭収縮筋の括約運動によってなされるが,口蓋裂,修復した口蓋裂,先天性の短口蓋,粘膜下口蓋裂,口蓋麻痺,およびときに扁桃肥大を有する患者においては,閉鎖が障害される。本疾患はまた,先天性発育不全(粘膜下裂)または口蓋麻痺を有する患者においてアデノイド切除術または口蓋垂口蓋咽頭形成術を行った結果生じることもある。

鼻咽腔閉鎖機能不全の症状と徴候

鼻咽腔閉鎖機能不全患者の発語は,鼻腔共鳴が過剰な声,鼻からの空気漏出,鼻腔内の乱流,および口腔圧が必要な発音(破裂音)の構音不能により特徴づけられる。重度の鼻咽腔閉鎖機能不全は,固形食および液体が鼻から逆流する原因となる。発声中の口蓋の視診により口蓋麻痺が明らかになることがある。

鼻咽腔閉鎖機能不全の診断

  • ファイバースコープによる鼻咽頭鏡を用いた直接視診

鼻咽腔閉鎖機能不全は,典型的な発語異常がみられる患者において疑われる。

軟口蓋の正中線を触診すると,潜在性の粘膜下裂が明らかになることがあり,通常は二分口蓋垂の患者でみられる。ファイバースコープによる鼻咽頭鏡を用いた直接視診が主な診断法である。

他の診断法により必要な情報が得られなかった場合にのみ,言語聴覚士の協力のもとに実施する,連続発声時および嚥下時(modified barium swallow)のマルチ画面の嚥下造影検査(videofluoroscopy)を用いるべきである。

鼻咽腔閉鎖機能不全の治療

  • 外科的修復および言語療法

鼻咽腔閉鎖機能不全の治療は言語療法および外科的修正(咽頭側壁の可動性,軟口蓋の挙上度,および欠損の大きさに応じて,口蓋延長プッシュバック法[palatal elongation pushback procedure],咽頭後壁移植,咽頭弁形成術,または咽頭形成術による)から成る。軟口蓋挙上装置(補綴専門医による)も役立つ場合がある。

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