乳様突起炎は乳突蜂巣の細菌感染症であり,典型的には,急性中耳炎の後に起こる。症状としては,乳様突起上の発赤,圧痛,腫脹,波動などがあり,耳介の変位を伴う。診断は臨床的に行う。治療はセフトリアキソンなどの抗菌薬により行い,抗菌薬単独が無効の場合は乳様突起削開術を施行する。CTで癒着性の乳様突起炎の所見を認める急性乳様突起炎には,緊急の鼓膜チューブ留置および乳様突起削開術が必要である。
急性化膿性中耳炎では,炎症がしばしば側頭骨の乳突洞や乳突蜂巣にまで及び,液貯留を引き起こす。少数の患者では,典型的には中耳炎を引き起こしているものと同じ細菌により,貯留した液体に細菌感染が生じる;肺炎球菌が最も一般的である。乳突部の感染は,隔壁の骨炎を引き起こし,乳突蜂巣の融合(癒着性の乳様突起炎)を招くことがある。
この感染は,鼓膜の穿孔を通じて緩和されることもあれば,乳突部側面の骨皮質を通して広がり,耳介後部に骨膜下膿瘍を形成することもある。まれに,感染が中枢に広がり,側頭葉膿瘍または横静脈洞の敗血症性血栓症を引き起こすこともある。ときに,この感染は乳様突起先端を貫いて浸食し,膿が頸部に流れ込む場合(Bezold膿瘍と呼ばれる)がある。結果として,難聴,敗血症,髄膜炎などが生じることがある。
乳様突起炎の症状と徴候
乳様突起炎の診断
臨床的評価
CT
乳様突起炎の診断は臨床的に行う。診断を確定し,感染範囲を明らかにするために,通常はCTを施行する(特に側頭骨内または頭蓋内の合併症が疑われる場合)。中耳からの排膿があれば,培養および感受性試験に供する。自然排膿が起こらない場合は,培養を目的として鼓膜切開術を行うことができる。血算および赤血球沈降速度(赤沈)で異常を認める場合があるが,感度も特異度も高くはなく,診断にはほとんど役立たない。
乳様突起炎の治療
セフトリアキソン静注
セフトリアキソン1~2g(小児には50~75mg/kg),1日1回投与を2週間以上継続など(バンコマイシンまたはリネゾリドが代替となる),中枢神経系に移行する抗菌薬を用いた静注による抗菌薬療法を直ちに開始する。キノロン系薬剤による経口治療も許容可能な場合がある。その後の抗菌薬の選択は,培養と感受性試験の結果に基づいて行う。
通常,骨膜下膿瘍は乳様突起削開術を必要とし,これにより膿瘍の排膿を行い,感染した乳突蜂巣を除去し,乳突洞から中耳腔への排膿を確立する。鼓膜が自然に穿孔しない場合は,鼓膜チューブを留置して貯留液を排出させる。その後はフルオロキノロン系の点耳薬を2~3週間投与し,耳の乾燥を保つ予防策を講じる。耳の乾燥を保つ予防策としては,入浴中およびシャワー浴中に外耳道を塞ぐこと(例,ワセリンを塗布した綿球を使用する)や,水泳を控えることなどがある。アミノグリコシド系薬剤(例,フラジオマイシン,トブラマイシン)またはポリミキシンBを含有する点耳薬は,聴器毒性を起こす可能性があるため,鼓膜穿孔がある患者や鼓膜チューブが留置されている患者に処方してはならない。



