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壊疽性膿皮症

執筆者:

Julia Benedetti

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2020年 7月
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壊疽性膿皮症は,慢性かつ進行性に好中球性の皮膚壊死が生じる病態であり,病因は不明であるが,しばしば全身性疾患に合併し,ときに皮膚損傷に合併する。診断は臨床的に行う。治療法としては,創傷ケアのほか,重症度に応じた抗炎症薬または免疫抑制薬の使用などがある。

壊疽性膿皮症の病因

壊疽性膿皮症の病因は不明であるが,様々な全身性疾患に合併することがあり,具体的には 炎症性腸疾患 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし, クローン病と 潰瘍性大腸炎が含まれる。 消化管粘膜における細胞性免疫応答により炎症が生じる。炎症性腸疾患の正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こ... さらに読む 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む 関節リウマチ(RA) ,がん,血液疾患(例, 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS) 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)では,非悪性の形質細胞によりMタンパク質が産生されるが,それ以外に多発性骨髄腫に典型的な症状は認められない。 ( 形質細胞疾患の概要も参照のこと。) 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)の発生率は年齢とともに高くなり,25歳で1%であるのが,70歳以上では5%を上回る。MGUSは,他の疾患に伴って発生することがあり(... さらに読む 骨髄異形成症候群 骨髄異形成症候群(MDS) 骨髄異形成症候群(MDS)は,末梢の血球減少症,異形成の造血前駆細胞,過形成または低形成の骨髄,および 急性骨髄性白血病への移行リスクが高いことを特徴とする疾患群である。症状は最も強く障害された特定の細胞系列に由来するものであり,具体的には易疲労感,筋力低下,蒼白(貧血に起因),感染および発熱の増加(好中球減少症に起因),出血および皮下出血の増加(血小板減少症に起因)などがみられる。診断は血算,末梢血塗抹検査,骨髄穿刺および骨髄生検によ... さらに読む 真性多血症 真性多血症 真性多血症(PV)は,形態学的に正常な赤血球の増加(疾患の典型的な特徴)だけでなく,白血球および血小板の増加を特徴とする慢性骨髄増殖性腫瘍である。10~30%の患者で最終的に骨髄線維症および骨髄不全が生じ,1.0~2.5%では急性白血病が自然発生する。出血および動脈血栓症または静脈血栓症のリスクが高い。一般的な臨床像には,脾腫,大血管および微小血管イベント(例,一過性脳虚血発作,肢端紅痛症,眼性片頭痛),ならびにaquagenic... さらに読む )などがある。免疫応答の異常が関与すると考えられている。患者の大半が25~55歳である。様々な亜型として発症することがある。

壊疽性膿皮症の病態生理

壊疽性膿皮症の病態生理はあまり解明されていないが,好中球走化性に関する問題が関与している可能性がある。病変内ではインターロイキン8が過剰発現している。約30%の患者では,皮膚に外傷ないし損傷が生じた後に壊疽性膿皮症の潰瘍化がみられ,この現象はパテルギーと呼ばれている。

壊疽性膿皮症の症状と徴候

ほとんどの場合,壊疽性膿皮症は炎症性の紅色丘疹,膿疱,または結節として始まる。この病期の病変はせつや虫刺症に似ることがあるが,その後潰瘍化して急速に拡大し,潰瘍底は壊死を起こして腫脹し,辺縁は暗褐色から紫色を帯びるようになって隆起する。辺縁部の下掘れ(すなわち,辺縁部の下にある支持組織の欠損)がよくみられるが,本疾患に特有の所見ではない。発熱や倦怠感などの全身症状もよくみられる。複数の潰瘍が融合して大きな潰瘍を形成し,しばしば蜂巣状または篩状の瘢痕を生じることがある。

症状および徴候は亜型により多様である。

潰瘍型(古典型)

最も頻度が高いこの亜型では,上述のように潰瘍が形成されるが,その好発部位は下肢と体幹部(特に殿部および会陰)である。

水疱型(非定型)

比較的頻度の低いこの亜型は,しばしば血液疾患の患者に生じる。病変は通常,水疱として始まり,びらんを生じて表在性潰瘍となる。上肢および顔面が最もよく侵される。

膿疱型

この亜型は炎症性腸疾患の増悪中に生じることが多い。紅斑に囲まれた疼痛を伴う膿疱が生じる。関節痛がよくみられる。

増殖型(表在性肉芽腫性膿皮症)

この亜型では,単発性かつ進行が緩徐で,軽度の疼痛を伴う局面または浅い潰瘍が,ほとんどの場合頭部または頸部に生じる。辺縁部には下掘れが生じず,底部には壊死を生じない。

その他の亜型

壊疽性膿皮症は,炎症性腸疾患患者のストーマ周囲(ストーマ周囲壊疽性膿皮症),性器(性器の壊疽性膿皮症)などの他の部位,または骨,角膜,中枢神経系,心臓,小腸,肝臓,肺,筋肉などの皮膚以外の部位(皮膚外の壊疽性膿皮症)にも生じることがある。

壊疽性膿皮症の診断

  • 臨床的評価

壊疽性膿皮症の診断は臨床所見に基づくが,潰瘍形成の他の原因を除外した上での除外診断となる。外科的な壊死組織の切除後に潰瘍が拡大する場合は,壊疽性膿皮症が強く示唆される。病変の生検はしばしば診断に役立たないが,診断の裏付けになることはあり,病変先端部からの生検の40%で,表在血管に好中球およびフィブリンを伴った血管炎を認める。

水疱型(非定型)壊疽性膿皮症の患者は,血液疾患の発症がみられないか,定期的な臨床的評価および血算によりモニタリングすべきである。

壊疽性膿皮症の治療

  • 創傷ケア

  • コルチコステロイド

  • 腫瘍壊死因子(TNF)α阻害薬

  • ときに他の抗炎症薬または免疫抑制薬

  • 外科的な壊死組織切除の回避

創傷の治癒は,比較的滲出の少ない局面に対しては水分保持性の密閉ドレッシング,滲出性の強い局面に対しては吸収性ドレッシングにより促進することが可能である。難治例では,生物学的創傷被覆材やその他の特殊なドレッシング材が必要になることがある。Wet-to-dryドレッシングは避けるべきである。強力なコルチコステロイドまたはタクロリムスの外用療法は,表在性および早期病変の治療に役立つ可能性がある。

より重度の症状には,プレドニゾン60~80mg,経口,1日1回が一般的な第1選択の治療法である。TNF-α阻害薬(例,インフリキシマブ,アダリムマブ,エタネルセプト)が効果的である(特に 炎症性腸疾患 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし, クローン病と 潰瘍性大腸炎が含まれる。 消化管粘膜における細胞性免疫応答により炎症が生じる。炎症性腸疾患の正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こ... さらに読む を合併している患者)。シクロスポリン3mg/kg,経口,1日1回もかなり効果的である(特に進行が速い場合)。ジアフェニルスルホン,アザチオプリン,シクロホスファミド,メトトレキサート,クロファジミン,サリドマイド,およびミコフェノール酸モフェチルも使用され,治療成功が報告されている。ミノサイクリンなどの抗菌薬も増殖型(表在性)壊疽性膿皮症に使用されている。

治療に関する参考文献

  • 1.Alavi A, French LE, Davis MD, et al: Pyoderma gangrenosum: An update on pathophysiology, diagnosis and treatment.Am J Clin Dermatol 18(3):355–372, 2017.doi: 10.1007/s40257-017-0251-7

壊疽性膿皮症の要点

  • 壊疽性膿皮症は,全身性疾患に合併することが多く,おそらくは免疫を介して発生する。

  • いくつかの亜型があり,そのうち潰瘍型(潰瘍底に壊死が生じ,境界部が紫色を帯びて隆起し,辺縁部に下掘れが生じた病変が下肢,殿部,または会陰に生じるもの)の頻度が最も高い。

  • 壊疽性膿皮症は臨床的に診断する。

  • 創傷ケアを最適化し,外科的な壊死組織切除は控える。

  • 早期病変の治療では強力なコルチコステロイドまたはタクロリムスを外用し,より重症症状の治療にはコルチコステロイドの全身投与,腫瘍壊死因子(TNF)α阻害薬,または他の抗炎症薬もしくは免疫抑制薬を用いる。

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