(皮膚炎の定義 皮膚炎の定義 「皮膚炎」という言葉は,皮膚の炎症を意味する。しかしながら,臨床皮膚科学では,類似した臨床像を呈する同じ炎症反応パターンを共有する様々な皮膚症状を記載するのに皮膚炎という用語が用いられる。 組織学的には,リンパ球が血管外に遊出して真皮内に入り,次に表皮内に遊走して,表皮細胞間浮腫(海綿状態),過剰増殖,肥厚,および過角化を誘発する。この過... さらに読む も参照のこと。)
貨幣状湿疹患者の多くはアトピー患者である。そのような症例では,貨幣状湿疹は単なる アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む の局所症状である(nummular atopic dermatitis)。アトピー性皮膚炎の患者では,貨幣状の局面がアトピー性皮膚炎のより一般的な他の症状と併存することがある。しかしながら,貨幣状湿疹の一部の患者ではアトピーはみられない。そのような患者では,病因は不明である。病変部位または他の部位における細菌の定着またはアレルギー性接触反応(1 総論の参考文献 貨幣状湿疹は,貨幣状または円板状の湿疹性病変を特徴とする皮膚の炎症である。診断は臨床的に行う。治療法としては,コルチコステロイドの外用や光線療法などがある。 ( 皮膚炎の定義も参照のこと。) 貨幣状湿疹患者の多くはアトピー患者である。そのような症例では,貨幣状湿疹は単なる アトピー性皮膚炎の局所症状である(nummular atopic dermatitis)。アトピー性皮膚炎の患者では,貨幣状の局面がアトピー性皮膚炎のより一般的な他の... さらに読む )(自家感作またはid反応,最初の炎症部位または感染部位から離れた部位の皮膚炎)が原因として考えられる。
貨幣状湿疹は,中年以上の患者で最もよくみられる。
総論の参考文献
1.Bonamonte D, Foti C, Vestita M, et al: Nummular eczema and contact allergy: A retrospective study.Dermatitis 23(4):153–157, 2012.doi: 10.1097/DER.0b013e318260d5a0
貨幣状湿疹の症状と徴候
貨幣状湿疹の局面および斑は,紅色で鱗屑を伴い,典型的には強いそう痒を伴い,硬貨様の形状をとり,境界明瞭ではあるが,極めて明瞭というわけではない。病変の数は1個から約50個に及び,直径は2~10cmであることが多い。病変は体幹にも出現するが,四肢伸側と殿部の方が顕著となることが多い。
貨幣状湿疹の診断
臨床的評価
貨幣状湿疹の診断は臨床的に行い,皮膚病変の特徴的な外観および分布に基づく。アトピーの評価を行うべきである。アトピーのない患者では,アレルギー性接触皮膚炎を考慮すべきであり,パッチテストが役立つことがある。
鑑別診断としては以下のものがある:
貨幣状湿疹の治療
カウンセリングなどの支持療法
止痒薬
コルチコステロイド(外用が最も多い)
光線療法
貨幣状湿疹の治療は アトピー性皮膚炎 治療 アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む のそれと同様であり,カウンセリング,止痒薬,コルチコステロイドのほか,ときに光線療法(特にナローバンドUVB)などによる。
Nummular atopic dermatitisに対しては,デュピルマブ,カルシニューリン阻害薬の外用(タクロリムスおよびピメクロリムス),および/またはクリサボロール(crisaborole)を考慮すべきである。
まれに,免疫抑制薬の全身投与が必要となる。
貨幣状湿疹の要点
貨幣状湿疹はアトピー性皮膚炎の症状であることが多く,アトピーのない患者における貨幣状湿疹の病因は不明である。
そう痒を伴い,境界明瞭で,硬貨様の形状をした,鱗屑を伴う紅斑または紅色局面が単発または多発性に生じる。
診断は臨床的に行い,皮膚感染症および乾癬を除外する必要がある。
治療法としてはコルチコステロイドの外用や光線療法などがあり,まれに免疫抑制薬の全身投与が必要となる。