皮膚幼虫移行症

(爬行疹)

執筆者:James G. H. Dinulos, MD, Geisel School of Medicine at Dartmouth
レビュー/改訂 2020年 5月
意見 同じトピックページ はこちら

    皮膚幼虫移行症は,鉤虫の寄生により生じる皮膚の病態である。

    皮膚幼虫移行症は鉤虫(Ancylostoma)属の蠕虫によって引き起こされ,最も頻度が高いのはイヌまたはネコを宿主とするブラジル鉤虫(Ancylostoma braziliense)である。イヌまたはネコの糞便中に排出された鉤虫卵は,温かく湿った土または砂の中で感染性をもつ幼虫に成長する;ヒトへの感染は,皮膚が汚染された土壌や砂に直接接触し,幼虫が無防備な皮膚に侵入することで成立し,通常は足,下肢,殿部,または背部から侵入する。皮膚幼虫移行症は世界中で発生しているが,熱帯環境で最もよくみられる。

    皮膚幼虫移行症は強いそう痒を伴う;徴候は侵入部位の紅斑および丘疹であるが,続いて皮膚に赤褐色の炎症部が糸のように蛇行してみられる。鉤虫毛包炎(hookworm folliculitis)と呼ばれる,毛包炎に似た丘疹および小水疱が生じることもある。診断は病歴と臨床的な外観による。

    感染は数週間後に自然消失するが,不快感と細菌による二次感染のリスクのため,治療が必要になる。チアベンダゾール15%液またはクリーム(複合剤),1日2~3回,5日間の外用が極めて効果的である。チアベンダゾールの経口薬は,忍容性が不良のため通常は使用されない。アルベンダゾール(400mg,経口,1日1回,3~7日間)およびイベルメクチン(200μg/kg,経口,1日1回,1~2日間)により治癒が得られ,忍容性も良好である。

    皮膚幼虫移行症には,レフレル症候群と呼ばれる限定的な肺の反応(斑状の肺浸潤と末梢血の好酸球増多)が合併することもある(1)。

    総論の参考文献

    1. 1.Podder I, Chandra S, Gharami RC: Loeffler's syndrome following cutaneous larva migrans: An uncommon sequel.Indian J Dermatol 61(2):190–192, 2016.doi: 10.4103/0019-5154.177753.

    quizzes_lightbulb_red
    Test your KnowledgeTake a Quiz!
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS