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疥癬

執筆者:

James G. H. Dinulos

, MD, Geisel School of Medicine at Dartmouth

レビュー/改訂 2020年 5月
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疥癬は,ダニの一種である疥癬虫(ヒゼンダニ[Sarcoptes scabiei])による皮膚感染症である。疥癬では,激しいそう痒を伴う病変が生じ,指趾間,手関節,腰部,および性器部に紅色丘疹と疥癬トンネルが形成される。診断は診察と皮膚擦過物の検査に基づく。治療は抗疥癬薬の外用によるが,ときにイベルメクチンの経口剤も使用される。

疥癬の病因

疥癬は,ダニの一種である疥癬虫(ヒゼンダニ[Sarcoptes scabiei var. hominis])により引き起こされるが,このダニはヒトでのみ生息できる寄生虫で,角層内にトンネルを掘って生息している。疥癬は物理的接触によって容易にヒトからヒトへ感染するが,おそらくは動物および媒介物を介した感染も生じる。主な危険因子は過密環境であり(学校,避難所,兵舎,一部の家屋など),不衛生な環境との間に明確な関連性は認められない。

理由は不明であるが,角化型疥癬は免疫抑制患者(例,HIV感染患者,造血器悪性腫瘍の患者,コルチコステロイドなどの免疫抑制薬を長期使用している患者),高度の身体または知的障害のある患者,およびオーストラリア先住民で頻度が高い。感染は世界中でみられる。温暖な地域に住む患者では,小さな紅色丘疹が生じ,疥癬トンネルはまれである。重症度は患者の免疫状態に関連し,居住地域とは関連しない。

疥癬の症状と徴候

疥癬の主な症状は強いそう痒であり,典型例では夜間に悪化するが,このような悪化のタイミングは疥癬に特異的というわけではない。

古典型疥癬

指間部,手関節,肘関節屈側面,腋窩部,ベルトラインに沿った部位,および殿部下方に,まず紅色丘疹が出現する。丘疹は乳房および陰茎を含めた全身のあらゆる部位に生じうる。成人では顔面が侵されることはない。疥癬トンネル(通常は手関節,手,または足にみられる)は疥癬に特有の所見であり,わずかに鱗屑を伴って蛇行する長さ数ミリから1cmの微細な線として認められる。片方の端には,しばしば小さな黒い丘疹(ダニの虫体)が認められる。古典型疥癬では,通常ダニは10~12匹しかいない。細菌の二次感染がよく生じる。

古典型疥癬の徴候は非定型的な場合もある。黒人および皮膚の色の濃い人では,疥癬が肉芽腫性結節として生じることもある。乳児では,手掌,足底,顔面,頭皮が侵され,特に耳介後部がよく侵される。高齢患者では,疥癬により強いそう痒が起きる一方で皮膚所見は不明瞭となることがあり,その場合は診断が困難となる。易感染性患者では,そう痒を伴わずに広範な鱗屑を生じることがある(特に成人では手掌および足底,小児では頭皮)。

その他の病型

角化型疥癬(ノルウェー疥癬)は,宿主の免疫障害のためにダニが膨大な数まで増殖することによって発生する;鱗屑を伴う紅斑がしばしば手,足,頭皮に生じ,広範に広がることがある。

結節型疥癬は,乳幼児でよくみられ,残存するダニに対する過敏症が原因となる可能性がある;結節は通常紅斑性で,大きさは5~6mmであり,鼠径部,性器,腋窩部,および殿部に生じる。結節は過敏反応であり,ダニの根絶後も数カ月間持続することがある。

頭皮疥癬は乳児および易感染者に生じ,皮膚炎(特に アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む アトピー性皮膚炎(湿疹) または 脂漏性皮膚炎 脂漏性皮膚炎 脂漏性皮膚炎は,皮脂腺の密度が高い部位(例,顔面,頭皮,胸骨)の皮膚に生じる一般的な炎症性疾患である。原因は不明であるが,皮膚に常在する酵母様真菌であるMalassezia属真菌が重要な役割を果たしている。脂漏性皮膚炎はHIV感染患者と特定の神経疾患を有する患者で頻度の増加がみられる。脂漏性皮膚炎では,ときにそう痒,フケ,ならびに頭皮,髪際部,および顔面の黄色調かつ脂ぎった鱗屑が生じる。診断は診察により行う。治療は抗真菌薬... さらに読む 脂漏性皮膚炎 )に類似することがある。

Scabies incognito(異形疥癬)は,外用コルチコステロイドを使用している患者でみられる広範囲に拡大した非定型の病型である。

疥癬の診断

  • 臨床的評価

  • 疥癬トンネルの擦過物

疥癬の診断は,身体所見(特に疥癬トンネル),身体所見のわりに強いそう痒,および家庭内の接触者における同様の症状により疑われる。確定診断は,疥癬トンネルの擦過物での顕微鏡検査にてダニの虫体,虫卵,または糞粒を検出することによるが,虫体は発見できないことも多く,それだけで疥癬を除外することはできない。擦過検体は,疥癬トンネルまたは丘疹上にグリセロール,鉱油,または油浸用オイルを垂らした上で(擦過中にダニや検体が拡散するのを防止するため),メスの刃で天井部分を切り取って採取すべきである。検体をスライドガラスに乗せ,カバーガラスを被せる;糞粒を溶かすため,水酸化カリウムは使用すべきでない。

疥癬の治療

  • ペルメトリンまたはリンデンの外用

  • ときにイベルメクチンの内服

主な治療法は抗疥癬薬の外用または内服である(疥癬に対する治療選択肢 疥癬に対する治療選択肢 疥癬に対する治療選択肢 の表を参照)。ペルメトリンが第1選択の外用薬である。

年長の小児と成人では,ペルメトリンまたはリンデンを頸部から下の全身に塗布し,8~14時間後に洗い流す。リンデンは神経毒性を生じることがあるため,ペルメトリンが好まれることが多い。治療は7日後に繰り返すべきである。

乳幼児ではペルメトリンを頭頸部に塗布すべきであるが,眼窩周囲および口囲への塗布は避ける。間擦部,手足の爪,および臍部では特別な注意を払うべきである。乳児ではミトンを着用させることで,ペルメトリンが口に入るのを防げる。リンデンは神経毒性を示す可能性があるため,2歳未満の小児と痙攣性疾患を有する患者では推奨されない。

6~10%沈降硫黄含有ワセリン軟膏を3日連続で24時間塗布する治療法は,安全かつ効果的であり,通常は生後2カ月未満の乳児に用いられる。

外用治療に反応しない患者,外用薬の用法・用量を遵守できない患者,および易感染性のためノルウェー疥癬を来した患者は,イベルメクチンの適応である。イベルメクチンは介護施設などの濃厚接触のある環境での流行に用いられ,良好な成績を収めている。

同時に濃厚接触者も治療すべきであり,個人の持ち物(例,タオル,衣服,寝具)は熱湯で洗い,高温の乾燥機で乾燥させるか,または少なくとも3日間隔離(例,気密性の高いビニール袋で)すべきである。

そう痒はコルチコステロイド軟膏の外用および/または抗ヒスタミン薬の内服(例,ヒドロキシジン25mg,経口,1日4回)で治療できる。滲出液を伴う黄色の痂皮型病変がみられる患者では,二次感染を考慮すべきであり,ブドウ球菌またはレンサ球菌を対象とする適切な抗菌薬の全身投与または外用で治療すべきである。

ダニが死んでも症状と病変の消退までに最長で3週間を要するため,ダニの治療抵抗性による治療失敗,薬剤の浸透不良,不完全な塗布,再感染,結節型疥癬などを確認することは困難である。疥癬の持続を確認するために,皮膚擦過物を定期的に検査することができる。

疥癬の要点

  • 疥癬の危険因子には,過密生活環境と免疫抑制などがあるが,不衛生は危険因子ではない。

  • 示唆的な所見としては,特徴的部位の疥癬トンネル,強いそう痒(特に夜間),家庭内の接触者間で生じる集団発生などがある。

  • 可能であればダニの虫体,虫卵,または糞粒を検出することにより疥癬の確定診断を得る。

  • 疥癬の治療は通常,ペルメトリンの外用または(必要に応じた)イベルメクチンの内服による。

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