皮膚外用療法の原則

執筆者:Jonette E. Keri, MD, PhD, University of Miami, Miller School of Medicine
レビュー/改訂 2019年 6月
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皮膚に対する外用治療は,その治療上の機能に従って分類され,以下のような種類がある:

特定の外用療法では,以下の要因がその成否を左右する場合がある:

基剤

外用療法には,以下のような様々な基剤を使用できる:

  • 粉末(パウダー)

  • 液体

  • 液体と油脂の組合せ

基剤は外用療法の有効性に影響を及ぼすほか,それ自体で有害作用を引き起こすこともある(例,接触皮膚炎または刺激性皮膚炎)。一般に,水およびアルコールベースの製剤は,その液体が蒸発するために病変を乾燥させることから,炎症を引き起こす急性の病態に用いられる。パウダーも乾燥を生じる。油脂ベースの製剤は病変を湿潤させるため,慢性炎症によく使用される。基剤の選択は適用部位,美容効果,および利便性を参考に判断する。

パウダー

パウダー自体に活性はないが,有効成分(例,抗真菌薬)と混合して治療に使用される。湿潤部位または間擦部位の病変に処方される。

液体

液体の基剤としては以下のものがある:

  • 入浴および浸漬

  • フォーム剤

  • 液剤(溶液)

  • ローション剤

  • ゲル剤

入浴および浸漬は,広範な接触皮膚炎アトピー性皮膚炎など,広い部位の治療が必要な場合に使用される。

フォーム剤は,アルコールまたは皮膚軟化剤をベースとするエアロゾル製剤である。急速に吸収される傾向があり,有毛部に好んで使用されることがある。

液剤(溶液)は,溶媒の中に有効成分を溶かしたもので,溶媒として通常用いられるのは,エチルアルコール,プロピレングリコール,ポリエチレングリコール,水である。液剤は適用するのに便利であるが(特に乾癬や脂漏などの頭皮疾患),病変を乾燥させる傾向がある。よく使用される液剤は,ブロー液とDomeboro®液の2つである。

ローション剤は,水をベースとする乳剤である。これらは有毛部の皮膚に容易に適用できる。ローション剤は接触皮膚炎,足白癬,股部白癬などの急性炎症性および滲出性病変を冷却,乾燥させる。

ゲル剤は,ポリマーで粘稠度を高めた溶媒に有効成分を懸濁したものである。ゲル剤は外用成分が制御下で放出されることで,しばしば効果的となる。ゲル剤は,ざ瘡酒さ頭皮の乾癬にしばしば使用される。

混合基剤

混合基剤としては以下のものがある:

  • クリーム剤

  • 軟膏

混合基剤は通常,油脂と水を含有するが,プロピレンまたはポリエチレングリコールを含有することもある。

クリーム剤は,油脂と水から構成される半固形の乳剤である。皮膚を湿潤および冷却する目的で,また滲出液がある場合に使用する。クリーム剤は皮膚に擦り込むと見えなくなる。

軟膏剤は油脂をベースとし(例,ワセリン),水はほとんど含んでいない。軟膏剤は潤滑剤として最適であり,病変を密封する性質があるため,薬剤の浸透性を増大させる;薬剤の濃度が同じであれば,典型的には軟膏はより強力となる。苔癬化病変のほか,乾癬慢性単純性苔癬など,痂皮が厚い病変や鱗屑が堆積した病変に対して選択される。軟膏剤は,びらんまたは潰瘍に対してクリームより刺激が少ない。通常,入浴後または皮膚を水で湿らせた後に塗布するのが最善である。

ドレッシング

ドレッシングは開放性の病変を保護し,治癒を促進し,薬剤の吸収を高め,患者の衣服を保護する。

非閉鎖性ドレッシング

最も一般的な非閉鎖性のドレッシングは,ガーゼによるドレッシングである。この方法では,創面に最大限の通気性が得られ,ときに治癒に好ましい条件となるほか,病変を乾燥させることができる。

Wet-to-dryドレッシングは,溶液(通常は生理食塩水)で湿らせた非閉鎖性のドレッシングであり,肥厚または痂皮化した病変の清浄化とデブリドマンに用いられる。ドレッシング剤を湿された状態で適用して,溶液が蒸発したら除去するが(すなわちwet-to-dry),その際に皮膚由来物質も乾燥したドレッシング剤とともに除去される。

閉鎖性ドレッシング

閉鎖性ドレッシングは,外用薬の吸収および有効性を高める。最もよく用いられるのは,ポリエチレン(家庭用のプラスチック製のラップ)などの透明のフィルムか,柔軟で透明な半透過性のドレッシング材である。ハイドロコロイドのドレッシング材は,皮膚からの滲出液を吸収してゲル化し,ガーゼで被覆することで皮膚潰瘍の患者に使用することができる。亜鉛華ゼラチン(ウンナブーツ)は,うっ滞性皮膚炎やうっ滞性潰瘍の患者に効果的な閉鎖性ドレッシングである。コルチコステロイドであるフルランドレノリドを含有するプラスチックテープは,孤立性または難治性の病変に使用できる。ハイドロコロイドのドレッシング材は,皮膚からの滲出液を吸収してゲル化し,ガーゼで被覆することで皮膚潰瘍の患者に使用することができる。

吸収を高めるために外用コルチコステロイドの上に閉鎖性ドレッシングを行う方法が,ときに乾癬アトピー性皮膚炎全身性エリテマトーデスの皮膚病変,および手の慢性皮膚炎の治療に用いられる。外用コルチコステロイドの全身吸収によって副腎抑制が生じることがある。外用コルチコステロイドの局所的な有害作用としては以下のものがある:

  • 汗疹の発生

  • 皮膚萎縮

  • 皮膚線条

  • 細菌または真菌感染症

  • ざ瘡様発疹

その他の閉鎖性ドレッシングは,熱傷などの開放創の保護と治癒の促進に用いられるが,ケロイドにはときに特殊なシリコンドレッシング材が使用される。

外用薬

外用薬の主なカテゴリーとしては以下のものがある:

  • 洗浄剤

  • 保湿剤

  • 乾燥剤

  • 抗炎症薬

  • 抗微生物薬

  • 角質溶解剤

  • 収斂剤

  • 止痒薬

洗浄剤

主要な洗浄剤は石鹸,洗剤,および溶剤である。石鹸が最もよく用いられる洗浄剤であるが,合成洗剤も使用される。ベビーシャンプーは通常,眼周囲のほか,創傷や表皮剥離部を洗浄する目的で使用しても忍容性が良好であり,乾癬,湿疹,その他の形態の皮膚炎でみられる痂皮および鱗屑を除去するのに有用である。ただし,急性刺激性,湿潤性,および滲出性の病変では,水または等張食塩水で洗浄するのが最も苦痛が少ない。

水は洗浄に使用される主要な溶剤である。有機溶剤(例,アセトン,石油製品,プロピレングリコール)は,病変を非常に乾燥させ,刺激性を示すことがあり,刺激性接触皮膚炎や比較的頻度は低いがアレルギー性接触皮膚炎を引き起こすこともある。硬化したタールや乾いたペンキを皮膚から除去するには,ワセリン軟膏または水を含まない市販の洗浄剤が必要になることがある。

保湿剤

保湿剤(皮膚軟化剤)は,皮膚に水分と油分を取り戻し,皮膚の水分保持に役立つ。典型的な保湿剤はグリセリン,鉱油,またはワセリンを含有し,ローション,クリーム,軟膏,およびバスオイルとして入手可能である。より強力な保湿剤は2%尿素,5~12%乳酸,10%グリコール酸を含有する(魚鱗癬などに対する角質溶解剤には,より高濃度のグリコール酸が使用される)。これらは前もって湿り気を与えておいた皮膚(すなわち入浴またはシャワーの後)に塗布する場合に最も効果的となる。コールドクリームは,油脂(例,蜜ろう)と水から成るOTC医薬品の保湿用乳剤である。

乾燥剤

間擦部位(例,趾間,殿裂,腋窩,鼠径部,乳房下部)で湿潤が過剰になると,刺激感や浸軟が生じることがある。パウダーは,水分を吸収することによって浸軟した皮膚を乾燥させ,摩擦を減らす。ただし,一部のパウダーは水分を吸収すると塊になりやすく,かえって刺激感を引き起こすこともある。コーンスターチおよびタルクが最もよく使用される。タルクの方がより効果的であるが,タルクは吸入されると肉芽腫形成を引き起こすことがあり,ベビーパウダーにはもはや使用されていない。コーンスターチは真菌の増殖を助長することがある。塩化アルミニウム溶液は,これらとは別の種類の乾燥剤である(しばしば多汗症で有用である)。非常に湿潤性の高い領域を乾燥させるには(例,間擦疹の治療のため),ときに高吸収性パウダーが必要になる。

抗炎症薬

外用抗炎症薬は,コルチコステロイドとコルチコステロイド以外に分けられる。

コルチコステロイドは,非感染性の炎症性皮膚疾患の大半で中心的な治療手段となっている。間擦部位および顔面にはローション剤が有用である。頭皮への使用と接触皮膚炎の治療にはゲル剤が有用である。顔面および間擦部位への使用と炎症性皮膚疾患の治療にはクリーム剤が有用である。乾燥して鱗屑を伴う部位での使用と力価を強める必要がある場合には,軟膏剤が有用である。コルチコステロイド含有テープは,病変部を掻破から保護するのに有用である。また,コルチコステロイドの吸収を高めるため,力価も高くなる。

外用コルチコステロイドの力価には,弱い(mild,VII群)から非常に強い(superpotent,I群― see table 主な外用コルチコステロイドの相対的力価)までの段階がある。力価に差が生じる理由は,その化合物のフッ素化または塩素化(ハロゲン化)に由来する。

表&コラム

外用コルチコステロイドは一般に1日2~3回塗布されるが,高力価製剤の場合は1日1回以下の頻度で済む場合がある。皮膚疾患の大半は中等度から高力価の製剤で治療する;低力価の製剤は,軽度の炎症や顔面または間擦部位(全身吸収と局所的な有害作用が生じる可能性が高い)への使用に優れている。どの製剤でも,1カ月以上使用すれば,局所的な皮膚萎縮,皮膚線条,およびざ瘡様発疹を引き起こすことがある。この作用は特に顔面,腋窩,または陰部の薄い皮膚で問題になる。コルチコステロイドは真菌の増殖も助長する。長期使用では,保存剤や添加剤に対する接触皮膚炎もよくみられる。コルチコステロイド自体に対する接触皮膚炎が生じることもある。口囲皮膚炎は中等度または高力価の製剤を顔面に使用した場合に生じるが,低力価の製剤ではあまりみられない。高力価の製剤は,小児への使用,広範囲の皮膚への使用,および長期間の使用では,副腎抑制を引き起こすことがある。コルチコステロイドの相対的禁忌には,基礎疾患としての感染症や,ざ瘡類似疾患などがある。

非ステロイド系抗炎症薬にはタール製剤が含まれる。タールは粗製コールタールの形で供給され,乾癬に適応がある。有害作用には刺激,毛包炎,衣服や家具のシミ,光感作などがある。タールの禁忌には皮膚感染などがある。いくつかのハーブ製品が市販品として広く使用されているが,それらは有効性は十分に確立されていない。最も頻用されているのは,カモミールとカレンデュラである。

抗微生物薬

外用抗微生物薬としては以下のものがある:

  • 抗菌薬

  • 抗真菌薬

  • 殺虫薬

  • 非特異的消毒薬

抗菌薬の適応はほとんどない。クリンダマイシンおよびエリスロマイシンの外用薬は,抗菌薬の内服が妥当でないか抗菌薬の内服に耐えられない患者において,尋常性ざ瘡の中心的または補助的治療として使用される。メトロニダゾール外用薬のほか,ときにスルファセタミド(sulfacetamide),クリンダマイシン,またはエリスロマイシン外用薬が酒さに使用される。ムピロシンはグラム陽性菌(主に黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus]およびレンサ球菌)を広くカバーし,深部組織に感染がなければ,膿痂疹の治療に使用できる。レタパムリン(retapamulin)およびオゼノキサシンは,膿痂疹の治療に使用される比較的新しい外用抗菌薬である。

バシトラシンやポリミキシンなどのOTC医薬品の外用抗菌薬は,皮膚生検部位の術後管理や掻爬部,軽微な熱傷,および表皮剥離部の感染予防において,ワセリンの外用に取って代わられている。ワセリンの外用は,外用抗菌薬と同等に効果的である一方,外用抗菌薬(特にフラジオマイシン)でみられる接触皮膚炎を引き起こさない。また,治癒過程にある創傷に外用抗菌薬を使用し,抗菌石鹸で洗浄すると,実際には治癒の遅れにつながる可能性がある。

抗真菌薬は,カンジダ症,多岐にわたる皮膚糸状菌症,その他の真菌感染症の治療に使用される( see table 表在性真菌感染症の治療選択肢*)。

殺虫薬(例,ペルメトリン,マラチオン)は,シラミ症( see table シラミに対する治療選択肢)と疥癬( see table 疥癬に対する治療選択肢)の治療に使用される。

非特異的消毒薬には,ヨード液(例,ポビドンヨード,クリオキノール),ゲンチアナバイオレット,銀製剤(例,硝酸銀,スルファジアジン銀),ピリチオン亜鉛などがある。ヨード液は手術前の皮膚消毒に使用される。ゲンチアナバイオレットは,化学的および物理的に安定な消毒薬/抗微生物薬が必要で,かつ費用を非常に低く抑える必要がある場合に使用される。銀製剤は熱傷および潰瘍の治療に効果的で,強力な抗菌作用を有し,創傷ドレッシング材には銀を含有するものがある。ピリチオン亜鉛は抗真菌薬で,乾癬または脂漏性皮膚炎に由来するフケの治療に使用されるシャンプーによく含まれている成分である。治癒過程の創傷の治療には,一般に銀製剤以外の外用消毒剤を使用すべきでないが,それは,他の消毒剤では創面を刺激し,脆弱な肉芽組織を傷害する傾向があるためである。

角質溶解剤

角質溶解剤は表皮細胞を軟化させ,剥脱を促進する。例えば,3~6%サリチル酸および尿素などがある。サリチル酸は,乾癬脂漏性皮膚炎ざ瘡,および疣贅の治療に使用される。有害作用は熱感と広範囲に使用した場合の全身毒性である。小児および乳児で使用すべき状況はまれである。尿素は足底角化症および魚鱗癬の治療に使用される。有害作用は刺激感と頑固な熱感である。尿素は広い範囲に塗布してはならない。

収斂剤

収斂剤は,タンパク質を変性させて皮膚を収縮させる乾燥剤である。最も頻用されている収斂剤は,酢酸アルミニウム(ブロー液)と硫酸アルミニウム/酢酸カルシウム合剤(Domeboro®液)である。通常はドレッシングとの併用または浸漬により使用され,感染性湿疹,滲出性皮膚病変,および滲出性の褥瘡に対する治療に用いられる。ハマメリスは広く使用されているOTC医薬品の収斂剤である。

止痒薬

ドキセピンは,アトピー性皮膚炎慢性単純性苔癬,および貨幣状湿疹のそう痒治療に効果的な外用抗ヒスタミン薬である。ベンゾカインおよびジフェンヒドラミン(ある種のOTC医薬品のローションに含有)外用薬は,感作性があるため,推奨されない。その他の止痒薬としては,カンフル0.5~3%,メントール0.1~0.2%,プラモキシン塩酸塩(pramoxine hydrochloride),EMLA(eutectic mixture of local anesthetics)などがあり,EMLAは水中油型の基剤に等量のリドカインとプロピトカインを含有する製剤である。外用の止痒薬は,そう痒が皮膚の小さな領域に限局しており,かつ頑固ではない場合,全身投与の薬剤(例,抗ヒスタミン薬の内服)よりも好まれる。カラミンローションはそう痒を和らげるが,厳密には止痒薬ではない。

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