ホスホマイシン

執筆者:Brian J. Werth, PharmD, University of Washington School of Pharmacy
レビュー/改訂 2020年 5月
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ホスホマイシンは新しいクラスの抗菌薬で,その化学構造は既知の他の抗菌薬と関連しない。殺菌効果を示す薬剤で,ホスホエノールピルビン酸合成酵素を阻害してペプチドグリカンの産生を妨げることにより,結果として細胞壁合成を阻害する。

米国では,液体に溶かして服用可能なホスホマイシントロメタミンの粉末製剤としてのみ使用できる。米国以外では,静注製剤が使用できる。

薬物動態

ホスホマイシントロメタミン塩の経口生物学的利用能は低く(約40%),そのため血清中濃度は最小発育阻止濃度(MIC)と比べて低くなる。この理由から,本剤は単純性下部尿路感染症の治療に使用され,腎盂腎炎には使用されない。

ホスホマイシンは血漿中タンパク質に結合せず,組織に広く分布する。ホスホマイシンは,生体内変換を受けることなく,主に糸球体濾過によって尿中に排泄される。経口投与すると,感受性病原体に対するMICを超える尿中濃度が24時間にわたり持続する。

ホスホマイシンの静注製剤が一部の国で利用可能となっており,中枢神経系感染症,骨髄炎,肺炎などのより重篤な感染症に有用となる可能性があり,これらの感染症の治療に使用される場合は,しばしばβ-ラクタム系など他の抗菌薬と併用される。

ホスホマイシンの適応

ホスホマイシンはグラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して広い抗菌スペクトルを有し,その中には以下のような多くの抗菌薬耐性菌も含まれる:

  • 黄色ブドウ球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)を含む

  • 腸球菌(Enterococcus)属,バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含む

  • 腸内細菌科細菌(基質拡張型β-ラクタマーゼ[ESBL]産生菌およびカルバペネム耐性肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]を含む)

  • 大腸菌(Escherichia coli)(フルオロキノロン耐性大腸菌を含む)

  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),内因性耐性の割合は多様である

経口ホスホマイシンは主に,感受性のある病原体によって引き起こされた単純性(すなわち下部)尿路感染症に限って使用すべきである。ただし,抗菌スペクトルが広いことから,ホスホマイシンの静注剤はときに他部位の多剤耐性菌感染症の治療にも使用される。

ホスホマイシンの禁忌

ホスホマイシンまたはいずれかの製剤成分に対する過敏症の既往を除けば,重大な禁忌はない。

妊娠中および授乳中の使用

ホスホマイシンは胎盤を通過するが,妊婦の膀胱炎の治療には総じて安全とみなされている。

ホスホマイシンがどのくらい母乳に移行するかは不明であり,授乳中の女性にホスホマイシンによる治療が必要な場合は注意を要する。

ホスホマイシンの有害作用

ホスホマイシンは一般に忍容性が高く,有害作用の発生率は低いが,主に消化管症状(例,悪心,下痢)などがみられる。

ホスホマイシンの投与に関する留意事項

女性の単純性尿路感染症には,液体に溶解したホスホマイシントロメタミン5.61g(ホスホマイシン3gに相当)を単回経口投与する。その他の部位(例,前立腺[1])の感染症には,おそらくより長期の治療が必要になる。

投与時の留意事項に関する参考文献

  1. 1.Falagas ME, Giannopoulou KP, Kokolakis GN, Rafailidis PI: Fosfomycin: Use beyond urinary tract and gastrointestinal infections.Clin Infect Dis 46(7):1069–1077, 2008.doi: 10.1086/527442.

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