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培養

執筆者:

Maria T. Vazquez-Pertejo

, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center

レビュー/改訂 2020年 6月
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培養とは,栄養を含む固形培地上または液体培地中で微生物を増殖することであり,微生物数を増加させることで同定を容易にする。培養はまた,抗菌薬感受性の検査も容易にする。

臨床検査室との情報交換が不可欠である。ほとんどの検体は汎用培地(例,血液またはチョコレート寒天培地)に接種するが,一部の病原体では特定の栄養素および抑制物質の含有(一般細菌の分離に用いる選択培地 一般細菌の分離に用いる選択培地 一般細菌の分離に用いる選択培地 の表を参照)といった特殊な培養の条件(例,特定の温度,酸素または二酸化炭素濃度,期間)が要求される。そのようなより選好性の強い病原体が疑われる場合や患者がすでに抗菌薬を使用している場合には,臨床検査室に助言するべきである。臨床検査室が各部位の常在菌叢から病原体を鑑別できるようにするため,検体の採取源を報告する。

検体採取

検体採取は重要である。感染症の診断における経験則は,感染部位から検体を採取するということである。病変部の中でも,その中央部ではなく,先端部から採取すべきである。

スワブの使用は勧められない。それでもスワブを使用する場合は,より多くの検体を回収できることから,フロック加工されたスワブが望ましい。 分子生物学的検査 感染症に対する核酸検出法による同定法 核酸法を用いる同定法(分子生物学的同定法)は臨床現場に広く普及しており,結果として可能になった迅速同定により,現在では特異的な抗菌薬療法を行うことができ,ときに不適切な薬剤を使用する経験的な長期管理を回避することが可能になっている。 核酸検出法では,微生物から抽出した特異的なDNAまたはRNA配列を検出する。配列をin vitroで増幅する場合と増幅しない場合がある。 核酸検出法は通常,特異的で感度が高く,あらゆる分類の微生物に利用でき... さらに読む に使用するスワブは,予定される特定の分子生物学的検査に使用できるものでなければならない。スワブの種類を誤ると,偽陰性の原因となる可能性がある。木軸のスワブには,一部のウイルスに対して毒性がある。先端が綿のスワブには,一部の細菌(クラミジアを含む)に対して毒性がある。

血液培養では,皮膚の除染および消毒が必要になる(例,ポビドンヨードを塗布してから乾燥させ,70%アルコールで除去する)。通常はそれぞれ異なる部位から採取した複数の検体を使用し,可能であれば発熱のピーク時に採取する。1つの血液検体でのみ皮膚の常在菌叢の増殖がみられた場合は,汚染と解釈するのが通常である。

血液検体を中心静脈ラインから採取する場合は,カテーテル感染と全身性の菌血症との鑑別の参考にするため,末梢血検体も採取すべきである。感染したカテーテルから採取された血液の培養は通常,同時に採取された末梢血の培養より速やかに陽性となり,より多くの微生物が含まれている。一部の真菌,特に糸状菌(例,Aspergillus属)は通常,血液から培養することができない。

検体の輸送は,適切な培地を用いて,汚染の可能性があるあらゆる常在菌叢の発育を阻止する条件にて,迅速に行わなければならない。病原体を正確に定量するためには,病原体がさらに増殖するのを防ぐ必要があるため,検体は速やかに臨床検査室に輸送するか,輸送が遅れる場合は冷蔵(ほとんどの場合)するべきである。

培養に関する特別な注意点

ある種の培養では特別な注意が必要である。

嫌気性細菌 嫌気性細菌の概要 細菌は酸素に対する要求性と耐性によって以下のように分類することができる: 通性嫌気性:酸素の存在下と非存在下のどちらでも増殖する 微好気性:低濃度(典型的には2~10%)の酸素を必要とし,多くは高濃度(例,10%)の二酸化炭素を必要とするもので,嫌気的条件下での増殖は極めて不良... さらに読む については,常在菌叢と病原体の鑑別が不可能な場合があることから,常在菌叢の一部として存在する部位から培養検体を採取するべきではない。検体を空気から遮断する必要があるが,困難な場合がある。拭い液検体については,嫌気性菌用の輸送用培地が使用できる。ただし,嫌気性細菌を回収するには,拭い液検体よりも液状検体(例,膿瘍内容)の方が優れている。液状検体は内部の空気を全て押し出した(検体と酸素の接触を最小限に抑えるため)注射器で採取し,注射器に入れたまま(針を外してキャップをかぶせる),または嫌気性菌用の輸送バイアルに移してから,検査室に送るべきである。

抗酸菌 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 は培養が困難である。常在菌叢を含む検体(例,喀痰)は,まず除染して濃縮する必要がある。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)とその他の抗酸菌の一部は,増殖させるのに時間がかかる。結核菌(M. tuberculosis)の増殖は,典型的には固形培地よりも液体培地の方が速く,液体培地を用いる自動装置をルーチンに使用すれば2週間以内に増殖させることができるのに対して,Lowenstein-Jensen寒天培地などの固形培地では4週間以上を要する。さらに,検体中に微生物がほとんど含まれていないこともある。同一部位から複数の検体を採取することが,収量の最大化に役立つ可能性がある。検体を廃棄するまでに8週間にわたり培養を続けるべきである。 Buruli潰瘍 皮膚疾患 を引き起こすM. ulceransには,32℃のLowenstein-Jensen寒天培地が最大12週間必要である。非定型抗酸菌が疑われる場合は,そのことを臨床検査室に連絡すべきである。

ウイルス 診断 ウイルスは最も小さな寄生体であり,典型的な大きさは0.02~0.3μmであるが,最大では全長1μmに及ぶ非常に大きなウイルス(メガウイルス,パンドラウイルス)も近年発見されている。ウイルスの複製は完全に(細菌,植物,または動物の)細胞に依存する。ウイルスは,タンパク質およびときに脂質で構成される外被,RNAまたはDNAのコアのほか,ときに... さらに読む は一般に,拭い液および組織検体から培養するが,それらの検体は通常,抗菌薬および抗真菌薬を含有する培地に入れて輸送する。疑われるウイルスは増殖させるが,その他のあらゆる微生物を阻害する細胞培養系に検体を接種する。非常に不安定なウイルス(例,水痘帯状疱疹ウイルス)は,採取後1時間以内に細胞培養系に接種するべきである。標準の細胞培養系が最も感度が高い。バイアル内の細胞単層上に接種した検体を遠心分離するシェルバイアル法では,より迅速に結果が得られる(2日 vs 7~14日)。一般的なウイルスの一部はルーチンの培養では検出できず,診断を下すには以下のように別の方法を用いる必要がある(一般的な病原体に対する診断検査 一般的な病原体に対する診断検査 一般的な病原体に対する診断検査 の表を参照):

真菌培養の検体は,無菌でない部位から採取した場合,抗菌薬を含有する培地に接種しなければならない。検体を廃棄するまでに3~4週間にわたり培養を続けるべきである。

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