インフルエンザワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2022年 10月
意見 同じトピックページ はこちら

インフルエンザワクチンは毎年,世界保健機関および米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の勧告に基づき,最も流行しているウイルス株(通常はインフルエンザA型の2株とインフルエンザB型の1~2株)が含まれるように変更されている。ときに,北半球と南半球で若干異なるワクチンが使用されることもある。

詳細については,Influenza Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCDC: Influenza Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。

予防接種の概要も参照のこと。)

インフルエンザワクチンの製剤

インフルエンザワクチンは基本的には次の2種類に分類される:

  • 不活化インフルエンザワクチン(IIV)

  • 弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)

3価ワクチンは,追加のB型ウイルス株をカバーする4価ワクチンに徐々に取って代わられつつある。卵タンパク質を含まない4価組換えインフルエンザワクチン(RIV4)と細胞培養由来のワクチン(ccIIV4)が利用できる。65歳以上の患者には,高用量の4価ワクチンが使用できる。(CDC: Different Types of Flu Vaccinesも参照のこと。)

インフルエンザワクチンの適応

以下の対象者には年1回の各年齢に応じたインフルエンザ予防接種が推奨される:

  • 禁忌がない生後6カ月以上の全ての個人

不活化インフルエンザワクチン(IIV)は生後6カ月以上の(妊婦を含む)全ての個人に接種することができる。

65歳以上の成人には,高用量IIVを接種すべきである。高用量接種は,65歳以上の成人にのみ推奨される。

組換えインフルエンザワクチン(RIV4)は18~49歳の個人に使用できる。

弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)は,妊娠しておらず,易感染状態でない健康な2~49歳の個人に接種することができる。LAIVの安全性は,進行した肺疾患や喘息など,インフルエンザからの合併症を発生させやすくする疾患のある集団では確立されていない。

易感染者(すなわち,感染防御下でのケアを必要とする患者)の診療に携わる医療従事者は,LAIVではなくIIVまたはRIV4の接種を受けるべきである(または,ワクチン接種を受けた後の7日間は易感染性患者との接触を控えるべきである)。

インフルエンザワクチンの禁忌および注意事項

IIVの主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前のIIV接種後に重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

IIVの注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

  • インフルエンザワクチンの接種後6週間以内にギラン-バレー症候群(GBS)を発症したことがある

LAIVの禁忌としては以下のものがある:

  • ワクチン成分(卵を除く)または過去に接種したインフルエンザワクチンに対して重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

  • 易感染状態(例,HIV感染症などの疾患や免疫抑制薬の使用によるもの)

  • 小児および青年では,アスピリンまたはその他のサリチル酸系薬剤の併用

  • 保護環境下での管理を要する重度の易感染性患者と濃厚接触する者,そのような患者のケアを行う者(LAIV接種後7日間接触を回避できる場合を除く)

  • 妊娠

  • 機能的または解剖学的無脾症

  • 48時間以内にインフルエンザに対する抗ウイルス薬を服用した人

  • 髄液漏または人工内耳

  • 2歳未満または50歳以上

  • 喘息があるか,12カ月以内に呼気性喘鳴または喘息エピソードがみられた2~4歳の小児

LAIVの注意事項としては以下のものがある:

  • 慢性肺,心疾患,腎疾患,肝疾患,血液疾患(例,異常ヘモグロビン症),代謝性疾患(例,真性糖尿病)などの特定の慢性疾患

  • 5歳以上の患者の喘息

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

  • インフルエンザワクチンの接種後6週間以内にギラン-バレー症候群を発症したことがある

  • 特定の抗ウイルス薬を使用している:アマンタジン,リマンタジン(rimantadine),ザナミビル,オセルタミビル(これらの薬剤は接種の48時間前から中止し,接種後14日間は再開しない)

RIV4の主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前のRIV4の接種後に重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

RIV4の注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

  • インフルエンザワクチンの接種後6週間以内にギラン-バレー症候群を発症したことがある

卵アレルギーが疑われる患者に対する注意事項:卵アレルギーの既往があるものの,卵への曝露後に蕁麻疹しかみられない患者には,インフルエンザワクチンを接種すべきである。一般に患者の年齢および健康状態に基づいて推奨される全てのインフルエンザワクチンが使用できる。

卵に対して蕁麻疹以外の症状(血管性浮腫,呼吸窮迫,ふらつき,繰り返す嘔吐など)を呈したことがある患者や,アドレナリンまたはその他の緊急治療を必要とする患者についても,一般に患者の年齢および健康状態に基づいて推奨される全てのインフルエンザワクチンが使用できる。このワクチンは医療現場において,重度のアレルギー反応を認識して管理することができる医療従事者の監督下で,接種すべきである。

インフルエンザワクチンの用量および用法

インフルエンザワクチンは年1回接種する。

IIVは次のように接種する:

  • 生後6~35カ月の小児では,0.25mLまたは0.50mLを筋肉内接種(ワクチンによって異なる

  • 3歳以上では,0.5mLを筋肉内接種

  • 18~64歳では,0.1mLを皮内接種

6カ月から8歳までの小児でインフルエンザワクチンの接種回数が2回未満の場合,またはインフルエンザワクチン接種歴が不明である場合,4週間以上空けて2回の接種を行うべきである。

供給不足の際には,ワクチンを節約するため,より少量で皮内接種することができる。

LAIVは,左右の鼻孔に0.1mLずつ噴霧する(計0.2mL)。

RIV4は,0.5mLを筋肉内接種する。

インフルエンザワクチンの有害作用

IIVについては,有害作用は通常,注射部位の軽度の疼痛に限られる。発熱,筋肉痛,その他の全身作用は比較的まれであるが,ワクチン接種を受けた人がワクチンのためにインフルエンザが発生したと誤解することがある。そのような反応は将来のワクチン接種の禁忌とはならず,予防接種を奨励すべきである。

複数回使用バイアルの製剤には,水銀系防腐剤のチメロサールが含まれている。チメロサールと自閉症の関連を疑った社会的懸念は,根拠がないということが証明されたが,チメロサールを含まない単回使用バイアルの製剤を使用することができる。

LAIVについては,有害作用は軽度であり,鼻漏が最も多いほか,軽度の喘鳴が生じることもある。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Influenza ACIP Vaccine Recommendations

  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Influenza Vaccination: Information for Healthcare Professionals

  3. ACIP: Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the ACIP—United States, 2020–21 Influenza Season

  4. Summary of changes to the 2022 adult immunization schedule

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS