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ヒト白血球抗原 (HLA) 系

執筆者:

Peter J. Delves

, PhD, University College London, London, UK

レビュー/改訂 2020年 4月
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ヒト白血球抗原(HLA)系(ヒトにおける主要組織適合抗原複合体[MHC])は,免疫系の重要な要素であり,6番染色体にある遺伝子によって制御される。T細胞上のT細胞受容体(TCR)に抗原ペプチドを提示することを専門とする細胞の表面分子をコードしている。(免疫系の概要 免疫系の概要 免疫系は,自己と非自己を見分けて,有害な可能性がある非自己の分子や細胞を身体から排除する。免疫系には,宿主の組織に由来する異常な細胞を認識して破壊する能力もある。免疫系によって認識される可能性がある全ての分子が抗原とみなされる。 皮膚,角膜,ならびに呼吸器,消化管,および泌尿生殖器の粘膜は,生体防御の最前線である物理的バリアを形成する。こ... さらに読む も参照のこと。)

抗原を提示するMHC分子は,以下の2つの主要クラスに分けられる:

  • MHCクラスI分子

  • MHCクラスII分子

MHCクラスI分子は,全ての有核細胞表面上に膜貫通型糖タンパク質として存在する。本来のクラスI分子は,β2ミクログロブリン分子に結合したα重鎖から成る。この重鎖には,2カ所のペプチド結合ドメイン,1カ所の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン,および細胞質側末端を伴う1カ所の膜貫通領域がある。クラスI分子の重鎖は,HLA-A,HLA-B,およびHLA-C座の遺伝子によってコードされている。CD8分子を発現するT細胞はMHCクラスI分子に反応する。これらのリンパ球は,細胞傷害性機能を有することが多く,どのような感染細胞でも認識できるようになる必要がある。いずれの有核細胞もMHCクラスI分子を発現しているため,全ての感染細胞はCD8陽性T細胞(CD8はクラスI分子重鎖の非多形部分に結合する)に対して抗原提示細胞として振る舞うことができる。一部のMHCクラスI遺伝子は,HLA-G(母体の免疫応答から胎児を守る役割を果たしている可能性がある)およびHLA-E(ナチュラルキラー[NK]細胞上の特定の受容体にペプチドを提示する)などの非古典的なMHC分子をコードする。

MHCクラスII分子は通常,プロフェッショナル抗原提示細胞(B細胞,マクロファージ,樹状細胞,ランゲルハンス細胞),胸腺上皮,および活性化(ただし静止状態ではない)T細胞のみが発現している;ほとんどの有核細胞はインターフェロン(IFN)-γによってMHCクラスII分子の発現が誘導されうる。MHCクラスII分子は2本のポリペプチド(αおよびβ)鎖から成る;それぞれの鎖は,ペプチド結合ドメイン,Ig様ドメイン,および細胞質側末端を伴う膜貫通領域を有する。両ポリペプチド鎖は,6番染色体のHLA-DP,HLA-DQまたはHLA-DR領域の遺伝子によってコードされている。クラスII分子に反応するT細胞はCD4を発現し,ヘルパー細胞であることが多い。

ゲノムのMHCクラスIII領域は炎症に重要ないくつかの分子をコードしている;その中には,補体成分のC2,C4,およびB因子,腫瘍壊死因子(TNF)α,リンホトキシン,ならびに3種類の熱ショックタンパク質がある。

HLAクラスIおよびクラスII遺伝子座でコードされている血清学的に定義された個々の抗原には,標準的な名称が与えられている(例,HLA-A1,HLA-B5,HLA-C1,HLA-DR1)。DNA配列決定法によって定義されたアレル(対立遺伝子)は,遺伝子を識別する名称が付けられ,その後に,アスタリスク,アレル群を代表する数字(そのアレルによってコードされる血清学的な抗原に対応していることが多い),コロン,および特異的アレルを代表する数字が続く(例,A*02:01,DRB1*01:03,DQA1*01:02)。ときにコロンの後ろに,同一のタンパク質をコードするアレル異型を識別するための追加の番号を加えて,もう1つのコロンの後ろに,イントロンまたは5’もしくは3’非翻訳領域における多型を示すための他の番号を加える(例,A*02:101:01:02,DRB1*03:01:01:02)。

MHCクラスIおよびII分子は免疫原性が最大の抗原で, 同種移植 移植の概要 移植組織は以下のいずれかを利用する: 患者自身の組織(自家移植片[autograft];例,骨,骨髄,皮膚) 遺伝的に同一の(同系[一卵性双生児])ドナーの組織(同系移植片[isograft]) 遺伝的に異なるドナーの組織(同種移植片[allograftまたはhomograft])... さらに読む の拒絶反応で認識される。最強の決定基はHLA-DRで,続いてHLA-BおよびHLA-Aである。そのため,これら3遺伝子座は,ドナーとレシピエントの適合に最も重要である。

一部の自己免疫疾患は,特異的HLAアレルと関連する―例を以下に示す:

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