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がんにおける悪液質

執筆者:

Robert Peter Gale

, MD, PhD, DSC(hc), Imperial College London

レビュー/改訂 2020年 9月
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悪液質は,脂肪組織と骨格筋の両方が消耗する病態である。多くの病態で発生し,多くのがんで病勢制御が不成功に終わった場合によくみられる。一部のがん,特に膵癌および胃癌は,著明な悪液質を引き起こす。この病態の患者では,体重が10~20%減少することがある。男性は女性と比べて,がんに起因する悪液質がより重度となる傾向がある。腫瘍の大きさによっても,転移巣の範囲によっても,悪液質の程度は予測されない。悪液質に伴い,化学療法に対する反応低下(がん治療の概要 がん治療の概要 がんを治癒させるには,患者の生涯にわたりがん再発の原因となりうるがん細胞を全て根絶する必要がある。主要な治療法として以下のものがある: 手術(限局例または所属リンパ節転移陽性例を対象とする) 放射線療法(限局例またはリンパ節転移陽性例を対象とする) 全身療法(全身疾患に対して)... さらに読む も参照),機能的能力の悪化,および死亡率の上昇がみられる。

悪液質の主な原因は,食欲不振またはカロリー摂取量の減少ではない。むしろ,この複雑な代謝状態が組織異化の亢進に関与しており,タンパク質合成が減少し,タンパク質分解が増加する。悪液質は,ある種のサイトカイン,特に腫瘍細胞および組織腫瘤中の宿主細胞によって産生される腫瘍壊死因子α,IL-1b,およびIL-6によって引き起こされる。同様に,ATP-ユビキチン-プロテアーゼ経路も関与している。

悪液質は,主に体重減少によって確認しやすく,顔面の側頭筋喪失(ヒポクラテス顔貌)が最も明白である。皮下脂肪の喪失により骨隆起部の褥瘡のリスクが増大する。

がんにおける悪液質の治療

治療はがん治療に関係する。がんをコントロールないし治癒できれば,悪液質は消退する。

カロリー補給を追加しても悪液質は緩和されない。体重増加がみられたとしても通常はわずかであり,筋肉よりもむしろ脂肪組織の増加による可能性が高い。機能も予後も改善されない。そのため,がんで悪液質がみられる患者のほとんどに対して高カロリー補給は推奨されない。十分な栄養を経口摂取できない状況を除き,静脈栄養の適応はない。

一方で,他の治療により悪液質を軽減し,機能を改善できる可能性がある。コルチコステロイドでは,食欲が増進して健康感が改善する場合があるが,体重はほとんど増加しない。同様に,カンナビノイド(マリファナ,ドロナビノール)でも食欲が増進するが,体重は増加しない。プロゲストーゲンでは,酢酸メゲストロール40mgの1日2回または1日3回経口投与などで,食欲と体重の両方が増加することがある。サイトカインの産生および作用を変化させる薬剤が研究段階にある。

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