好酸球の産生および機能

執筆者:Jane Liesveld, MD, James P. Wilmot Cancer Institute, University of Rochester Medical Center
レビュー/改訂 2020年 6月
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    好酸球は,単球-マクロファージ,好中球,および好塩基球と同じ前駆細胞に由来する顆粒球(細胞質内に顆粒を有する白血球)である。また,自然免疫系の構成要素である。好酸球には以下のような様々な機能がある:

    • 寄生虫感染に対する防御

    • 細胞内寄生細菌に対する防御

    • 即時型過敏反応の調節

    好酸球は特に寄生虫感染に対する防御に重要である。ただし,蠕虫感染に伴って好酸球増多がよくみられ,in vitroでは好酸球は蠕虫に対して傷害性を示すにもかかわらず,in vivoで好酸球が寄生虫を死滅させるという直接的なエビデンスは得られていない。

    好酸球は食作用を有するが,細胞内寄生細菌を死滅させる効率は好中球よりも劣る。

    好酸球は,肥満細胞が放出するヒスタミン,ロイコトリエン(血管収縮および気管支収縮を引き起こすことがある),リゾリン脂質,およびヘパリンといったメディエーターを分解または不活化することにより即時型過敏反応を抑制することができる。

    好酸球増多が長期に及ぶと,組織障害を引き起こすことがあるが,その機序は完全に解明されたとは言えない。

    好酸球の産生および機能

    好酸球の産生は,造血成長因子の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),インターロイキン3(IL-3),およびインターロイキン5(IL-5)の分泌を介して,T細胞により調節されると考えられている。GM-CSFおよびIL-3は,他の骨髄系細胞の産生も増加させるが,IL-5は,好酸球の産生のみを増加させる。

    好酸球の顆粒には,主要塩基性タンパク質および好酸球陽イオンタンパク質が含まれている;これらのタンパク質は,数種の寄生虫および哺乳動物細胞に対して傷害性を示す。これらのタンパク質がヘパリンに結合すると,ヘパリンの抗凝固活性が中和される。好酸球由来の神経毒は,有髄のニューロンに重大な損傷を与えることがある。好酸球のペルオキシダーゼは,他の顆粒球のペルオキシダーゼと大きく異なり,過酸化水素およびハロゲン化物の存在下で酸化ラジカルを発生させる。シャルコー-ライデン結晶は,主成分がホスホリパーゼBで,好酸球増多がみられる疾患(例,喘息好酸球性肺炎)では,喀痰,組織,および糞便中に認められる。

    好酸球数

    末梢血中の好酸球数は,正常値に幅があるが,一般に500/μL(0.5 × 109/L)を超えた場合が高値であると認められている。末梢血中の好酸球増多は,以下のように分類する:

    • 軽度:500~1500/μL(0.5~1.5 × 109/L)

    • 中等度:1500~5000/μL(1.5~5 × 109/L)

    • 重度:> 5000/μL(5 × 109/L)

    日内変動は血漿コルチゾール濃度と逆になる;夜に最高値を示し,朝に最低値を示す。

    好酸球数は,ストレスにより,またβ遮断薬またはコルチコステロイドの投与により減少することがあり,ときには細菌またはウイルス感染時に減少する。

    逆に,アレルギー疾患や特定の感染症(典型的には寄生虫感染症)を始めとする,様々な原因によって増加することがある(好酸球増多症)。

    好酸球の循環血中半減期は6~12時間で,好酸球のほとんどが組織(例,上気道,消化管,皮膚,子宮)中に存在している。

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