皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)

(菌状息肉症;セザリー症候群)

執筆者:Peter Martin, MD, Weill Cornell Medicine;
John P. Leonard, MD, Weill Cornell Medicine
レビュー/改訂 2020年 6月
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菌状息肉症およびセザリー症候群は,まれな慢性T細胞リンパ腫で,主に皮膚にみられ,ときにリンパ節に浸潤することがある。

リンパ腫の概要も参照のこと。)

菌状息肉症とセザリー症候群は,皮膚T細胞リンパ腫の主要な2つの病型である。これらがリンパ腫の全症例に占める割合は5%未満である。

皮膚T細胞リンパ腫は潜行性に発症する。初診時に生検を行っても診断困難な慢性のそう痒性発疹として現れることがある。この前駆症状は,最終的に皮膚T細胞リンパ腫と診断されるまで,数年にわたりみられる場合もある。

菌状息肉症の病変は斑,局面,または腫瘍結節を特徴とし,結節はしばしば潰瘍化して感染を起こす。

セザリー症候群では,典型的には皮膚がびまん性に発赤し,手掌および足底にひび割れが生じる。リンパ節腫脹は通常,軽度から中等度である。症状はほとんどが皮膚に関連するもので,疾患経過の晩期には発熱,盗汗,意図しない体重減少がみられる。

菌状息肉症の様々な臨床像
菌状息肉症(背部)
菌状息肉症(背部)
この写真は,菌状息肉症患者の背中に生じた紅斑を示す。

DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

菌状息肉症(胸部)
菌状息肉症(胸部)
菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)は,悪性ではない慢性皮膚疾患との鑑別が難しいことがある。この2つの疾患は,詳細な病歴聴取(悪性ではない病変は経時的に進行しない)に加え,生検および顕微鏡的評価によってのみ鑑別可能である。

(Courtesy of Libby Edwards, MD, Charlotte, NC.)By permission of the publisher. From Banks P, et al. In Atlas of Clinical Hematology. Edited by JO Armitage. Philadelphia, Current Medicine, 2004.Available at www.images.md.

潰瘍を伴う菌状息肉症
潰瘍を伴う菌状息肉症
菌状息肉症の患者では,ときに潰瘍が生じる。

DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

皮膚T細胞リンパ腫の診断

  • 皮膚生検

  • 末梢血塗抹検査と循環血中悪性T細胞(セザリー細胞)のフローサイトメトリー

  • 病期診断として,リンパ節生検と胸部,腹部,および骨盤部のCTまたはFDG-PET(フルオロデオキシグルコース-陽電子放出断層撮影)

診断は皮膚生検に基づくが,リンパ腫細胞の量が不十分なことにより初期の組織像が不確実な場合がある。悪性細胞は成熟したCD4陽性T細胞であり,CD7のような共通のT細胞マーカーを喪失していることがある。

皮膚パンチ生検では,表皮に特徴的なPautrier微小膿瘍がみられる。一部の症例におけるセザリー症候群と呼ばれる白血病期では,末梢血中に曲がった形の核を有する悪性T細胞の出現を特徴とする。それらは,ルーチンのライト染色した塗抹標本またはフローサイトメトリーで検出できる。

診断後は,病期を判定して治療の指針とする。一般的に用いられているISCL/EORTC(International Society of Cutaneous Lymphomas/European Organization of Research and Treatment of Cancer)の病期分類システムには,身体診察の所見,病理組織学的検査の結果,および画像検査の結果が組み込まれている(1)

診断に関する参考文献

  1. 1.Olsen E, Vonderheid E, Pimpinelli N, et al: Revisions to the staging and classification of mycosis fungoides and Sezary syndrome: A proposal of the International Society for Cutaneous Lymphomas (ISCL) and the cutaneous lymphoma task force of the European Organization of Research and Treatment of Cancer (EORTC).Blood 110(6):1713–1722, 2007.

皮膚T細胞リンパ腫の予後

ほとんどの患者は診断時に50歳以上である。生存率は診断時の病期に応じて著しく異なる。IA期で治療を受けた患者の期待余命は,菌状息肉症がみられない同様な人々の期待余命と同程度である。II期患者では生存期間の中央値が5年を超えるが,IV期と診断された患者の生存期間は2年をわずかに超える程度である。

皮膚T細胞リンパ腫の治療

  • 放射線療法,局所的化学療法,光線療法,または外用コルチコステロイド

  • ときに全身化学療法

治療は以下に分割できる:

  • 皮膚に対する治療法(外用薬,光線療法,レチノイド,放射線照射)

  • 化学療法(従来の薬剤とヒストン脱アセチル化酵素[HDAC]阻害薬)

皮膚科医,放射線腫瘍医,および血液/腫瘍専門医から成るチームが患者を管理する。まずは皮膚に対する治療法が用いられ,しばしば数年にわたり効果が持続する。病変がより抵抗性になるにつれて,経口または静注の化学療法が用いられる。病変部に感染が起きることがあり,皮膚の発赤がある場合は,常に感染性の原因を考慮しなければならない。

エネルギーのほとんどが組織表面の5~10mmの部分に吸収される電子線照射療法および局所的ナイトロジェンマスタード療法が非常に効果的であることが明らかにされている。局面状病変は,太陽光および外用コルチコステロイドでも治療可能である。

アルキル化薬および葉酸拮抗薬を用いた全身的治療により,一時的な腫瘍退縮がみられるが,他の治療法で失敗した場合,再発後,または節外病変もしくは皮膚以外の病変が確認された患者では,主に全身的治療を用いる。比較的新しい薬剤として,静注または経口で投与するHDAC阻害薬がある。化学感受性薬を用いる体外循環式光化学療法が,ある程度の効果を示している。

皮膚T細胞リンパ腫についてのより詳細な情報

医師向けの情報と患者向けの支援および情報を提供する英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Leukemia & Lymphoma Society provides educational resources for health care practitioners

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