(副腎機能の概要 副腎機能の概要 副腎は左右腎臓の頭側に位置し( 副腎の図を参照),以下の部分で構成される: 皮質 髄質 副腎皮質と副腎髄質は,それぞれ異なる内分泌機能を有する。 副腎皮質は以下のホルモンを産生する: さらに読む も参照のこと。)
副腎性器症候群は以下によって引き起こされる:
アンドロゲン産生副腎腫瘍
副腎過形成
悪性の副腎腫瘍は過剰なアンドロゲン,コルチゾール,またはミネラルコルチコイド(またはこれら全て)を分泌する可能性がある。コルチゾールの過剰分泌があると,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌抑制および対側副腎の萎縮ならびに高血圧を伴う クッシング症候群 クッシング症候群 クッシング症候群は,血中のコルチゾールまたは関連するコルチコステロイドの慢性高値によって引き起こされる一群の臨床的な異常である。クッシング病は下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生に起因するクッシング症候群であり,通常は下垂体腺腫に続発する。典型的な症状および徴候には,満月様顔貌および中心性肥満,紫斑ができやすい,ならびにやせた四肢などがある。診断はコルチコステロイド使用歴または血清コルチゾールの上昇および/または比較的自律的... さらに読む が生じる場合がある。
副腎過形成は通常先天性であり,遅発性の男性化をもたらす副腎過形成は 先天性副腎過形成症 先天性副腎過形成症の概要 先天性副腎過形成症は遺伝性疾患の一群で,いずれもコルチゾール,アルドステロンまたはその両方の合成が不十分であることを特徴とする。最もよくみられる型では,蓄積されたホルモン前駆体がアンドロゲン産生経路へ流入し,アンドロゲン過剰が生じる;まれな型ではアンドロゲン合成も不十分である。 様々な形態をとる先天性副腎過形成症においては,コレステロールから副腎ステロイドホルモンを合成する際に必要となる副腎酵素の1つに常染色体劣性遺伝性の欠損が生じるこ... さらに読む の亜型である。いずれもコルチゾール前駆体の水酸化における欠陥を原因とし,コルチゾール前駆体が蓄積してアンドロゲン産生経路に流入する。遅発性の男性化をもたらす副腎過形成では欠陥は部分的であるため,臨床疾患が成人期まで発生しないこともある。
副腎性器症候群の症状と徴候
影響は患者の性別と発症年齢によって異なり,男性よりも女性で顕著である。
先天性副腎過形成症 先天性副腎過形成症の概要 先天性副腎過形成症は遺伝性疾患の一群で,いずれもコルチゾール,アルドステロンまたはその両方の合成が不十分であることを特徴とする。最もよくみられる型では,蓄積されたホルモン前駆体がアンドロゲン産生経路へ流入し,アンドロゲン過剰が生じる;まれな型ではアンドロゲン合成も不十分である。 様々な形態をとる先天性副腎過形成症においては,コレステロールから副腎ステロイドホルモンを合成する際に必要となる副腎酵素の1つに常染色体劣性遺伝性の欠損が生じるこ... さらに読む を有する女子乳児では,陰唇陰嚢融合と陰核肥大がみられることがあり,それらが男性の外性器と類似するため,性分化の異常として受診することがある。
思春期前の小児では成長が加速することがある。無治療では,早期骨端線閉鎖および低身長が生じる。思春期前の男児が罹患すると,性的成熟を早期に経験する可能性がある。
成人女性では,無月経,子宮萎縮,陰核肥大,乳房縮小,ざ瘡,多毛,声低音化,頭部脱毛,性欲亢進,および筋肉増大が生じうる。
成人男性では,過剰な副腎アンドロゲンが性腺機能を抑制して不妊を引き起こす可能性がある。精巣の異所性副腎組織が増大して腫瘍様になる場合がある。
副腎性器症候群の診断
テストステロン
その他の副腎アンドロゲン(デヒドロエピアンドロステロン[DHEA],デヒドロエピアンドロステロン硫酸エステル [DHEAS],アンドロステンジオン)
17-ヒドロキシプロゲステロン
デキサメタゾン抑制試験
ときに副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験
副腎の画像検査
副腎性器症候群は臨床的に疑われるが,過少月経や血漿テストステロン上昇を伴う軽度の男性型多毛症と男性化は 多嚢胞性卵巣症候群 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) 多嚢胞性卵巣症候群は,軽度の肥満,不規則な月経または無月経,およびアンドロゲン過剰の徴候(例,男性型多毛症,ざ瘡)を特徴とする臨床症候群である。ほとんどの患者では卵巣内に多発性嚢胞が生じる。診断は,妊娠検査,ホルモンの測定,画像検査による男性化腫瘍の除外による。治療は対症療法である。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は5~10%の女性に生じる。米国においては不妊の原因として最も一般的である。... さらに読む (Stein-Leventhal症候群)でも生じることがある。副腎性器症候群の診断は,副腎アンドロゲンの高値を認めることで確定される。
副腎過形成では,尿中デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびその硫酸塩(DHEAS)が上昇し,プレグナントリオール(17-ヒドロキシプロゲステロンの代産物)排泄がしばしば増加し,尿中遊離コルチゾールは正常であるか,または減少する。血漿DHEA,DHEAS,17-ヒドロキシプロゲステロン,テストステロン,およびアンドロステンジオンは上昇することがある。テトラコサクチド(合成ACTH)0.25mgを筋肉内投与した30分後に17-ヒドロキシプロゲステロン値が30nmol/L(1000ng/dL)を上回った場合は,最も一般的な型の副腎過形成が強く示唆される。
デキサメタゾン0.5mgを6時間毎に48時間経口投与することにより過剰なアンドロゲン産生が抑制された場合は,男性化腫瘍は除外される。過剰なアンドロゲン分泌が抑制されない場合は,副腎のCTまたはMRIおよび卵巣の超音波検査を施行して腫瘍を検索する。
副腎性器症候群の治療
副腎過形成に対するグルココルチコイドの経口投与
腫瘍の切除
副腎過形成に対してはグルココルチコイドを使用する(典型的には,経口ヒドロコルチゾンを起床時に10mg,正午に5mg,夕方に5mg)。あるいは,デキサメタゾン0.5~1mgを就寝時に経口投与してもよいが,この程度の低用量でもクッシング症候群の徴候が引き起こされる場合がある;そのため,この種のグルココルチコイドは一般に推奨されていない。就寝時の投与が,ACTH分泌を抑制するという観点では最も適切であるが,不眠症を引き起こす可能性がある。酢酸コルチゾン(25mg,経口,1日1回)またはプレドニゾン(5mgまたはときに最大10mg,経口,1日1回)で代用してもよい。男性化の症候は大半が消失するが,多毛と禿頭の回復は緩徐であり,声は低いままとなったり,妊孕性が障害されたりする場合もある。
腫瘍には副腎摘出術が必要である。コルチゾール分泌腫瘍を有する患者では,非腫瘍部の副腎皮質が萎縮し抑制されているため,ヒドロコルチゾンを術前後に投与する。
副腎性器症候群の要点
副腎性器症候群は,アンドロゲン分泌性の副腎腫瘍,または副腎過形成による。
男性化は女性でより顕著であり,男性は性腺機能の抑制により不妊となる可能性がある。
尿中および血漿中のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)とその硫酸塩(DHEAS)に加え,しばしば血漿中のテストステロン値が上昇する。
デキサメタゾン抑制試験および/または副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験を実施することがある。
副腎過形成はコルチコステロイド療法により治療し,腫瘍には副腎摘出術が必要である。