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ビタミンD中毒

執筆者:

Larry E. Johnson

, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences

レビュー/改訂 2020年 11月
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通常,ビタミンD中毒は過剰量の服用に起因する。ビタミンD中毒では,骨吸収および腸管でのカルシウムの吸収が亢進し, 高カルシウム血症 高カルシウム血症 高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,がんなどがある。臨床的特徴としては多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡などがある。診断は,イオン化カルシウムおよび副甲状腺ホルモンの血清中濃度測定による。カルシウムの排泄を増強し骨のカルシウム吸収を抑制... さらに読む が生じる。著しい高カルシウム血症により,一般的に症状が生じる。診断は一般的に,上昇した血中25(OH)D濃度に基づく。治療は,ビタミンDの服用中止,食事からのカルシウム摂取の制限,血管内容量不足を回復させることから成り,中毒が重度である場合,コルチコステロイドまたはビスホスホネートを投与する。

1,25-ジヒドロキシビタミンD(最も活性の高いビタミンD代謝物)の合成は厳密に制御されているため,ビタミンD中毒は通常,過剰量(処方またはビタミン大量投与による)を服用した場合にのみ起こる。ビタミンD1000μg(40,000単位)/日の投与は,乳児で1~4カ月以内に中毒を引き起こす。成人では,数カ月にわたって1250μg(50,000単位)/日を服用すると,中毒が生じる可能性がある。 副甲状腺機能低下症 低カルシウム血症 低カルシウム血症とは,血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること,または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。原因には,副甲状腺機能低下症,ビタミンD欠乏症,および腎疾患がある。症状としては,錯感覚,テタニーのほか,重度であれば痙攣,脳症,心不全などがある。診断には,血清アルブミン値で補正された血清カルシウム... さらに読む の積極治療が度を越した場合,ビタミンD中毒が医原性に起こることがある。

ビタミンD中毒の生理

ビタミンDには主に以下の2つの種類がある:

  • D2(エルゴカルシフェロール

  • D3(コレカルシフェロール):自然に生じる種類であり,低用量の補給に用いる

ビタミンD3は直射日光への曝露(紫外線B波の照射)によって皮膚で合成され,食事では主に魚の肝油や海水魚から得られる(ビタミンの供給源,機能,および作用 ビタミンの供給源,機能,および作用 ビタミンの供給源,機能,および作用 の表を参照)。一部の先進国では,牛乳やその他の食品がビタミンDで強化されている。ヒトの母乳はビタミンDの含有量が少なく,平均で強化した牛乳の10%しか含まれていない。

ビタミンD濃度は加齢とともに減少する可能性がある(皮膚での合成が低下するため)。サンスクリーン剤の使用や黒ずんだ皮膚色素沈着も皮膚でのビタミンDの合成を低下させる。

ビタミンDは,ホルモンとして働くいくつかの活性化代謝物をもつプロホルモンである。ビタミンDは,肝臓によって25(OH)D(カルシフェジオール,カルシジオール,25-ヒドロキシコレカルシフェロール,または25-ヒドロキシビタミンD)に代謝され,その後腎臓により1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール,カルシトリオール,または活性型ビタミンDホルモン)に変換される。血液中での主な形態である25(OH)Dにはある程度代謝活性があるが,1,25-ジヒドロキシビタミンDの代謝活性が最も高い。1,25-ジヒドロキシビタミンDへの変換は,それ自体の濃度,副甲状腺ホルモン(PTH),ならびにカルシウムおよびリンの血清中濃度によって調節されている。

ビタミンDは多くの器官系に影響を与えるが(ビタミンDおよびその代謝物の作用 ビタミンDおよびその代謝物の作用 ビタミンDおよびその代謝物の作用 の表を参照),主に腸管からのカルシウムおよびリンの吸収を高め,正常な骨形成および石灰化を促進する。

ビタミンDとその類縁物質は, 乾癬 乾癬 乾癬は,銀白色の鱗屑で覆われた境界明瞭な紅色の丘疹および局面として生じることが最も多い炎症性疾患である。遺伝因子を含めて,複数の因子が寄与する。よくみられる誘因として,外傷,感染,特定の薬剤などがある。症状は通常軽微であるが,軽度から重度のそう痒が生じることがある。整容的な面で重大となることがある。疼痛を伴う関節炎を合併する重症例もある(... さらに読む 乾癬 ,副甲状腺機能低下症,および 腎性骨異栄養症 カルシウムとリン カルシウムとリン の治療に用いられることがある。白血病,乳癌,前立腺癌,結腸癌,またはその他のがんの予防におけるビタミンDの有用性は証明されておらず,成人におけるその他様々な骨以外の疾患の治療効果も証明されていない(1–3 総論の参考文献 日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば予防が可能である。まれに,遺伝性疾患によりビタミンDの代謝障害(依存症)が起こる。... さらに読む )。ビタミンDの補給によって,うつ病や心血管疾患が効果的に治療ないし予防されることはなく(4, 5 総論の参考文献 通常,ビタミンD中毒は過剰量の服用に起因する。ビタミンD中毒では,骨吸収および腸管でのカルシウムの吸収が亢進し, 高カルシウム血症が生じる。著しい高カルシウム血症により,一般的に症状が生じる。診断は一般的に,上昇した血中25(OH)D濃度に基づく。治療は,ビタミンDの服用中止,食事からのカルシウム摂取の制限,血管内容量不足を回復させることから成り,中毒が重度である場合,コルチコステロイドまたはビスホスホネートを投与する。... さらに読む ),骨折や転倒が予防されることもない。しかし,ビタミンDとカルシウムを併用して1日当たりの推奨量を摂取すると股関節骨折のリスクが低下することが一部のエビデンスから示唆されている(6 総論の参考文献 日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば予防が可能である。まれに,遺伝性疾患によりビタミンDの代謝障害(依存症)が起こる。... さらに読む )。

総論の参考文献

  • 1.Autier P, Mullie P, Macacu A, et al: Effect of vitamin D supplementation on non-skeletal disorders: A systematic review of meta-analyses and randomised trials.Lancet Diabetes Endocrinol 5 (12):986–1004, 2017.doi: 10.1016/S2213-8587(17)30357-1

  • 2.Manson JE, Cook NR, Lee IM, et al: Vitamin D supplements and prevention of cancer and cardiovascular disease.N Engl J Med 380(1):33-44, 2019.doi: 10.1056/NEJMoa1809944

  • 3.LeFevre ML, LeFevre NM: Vitamin D screening and supplementation in community-dwelling adults: Common questions and answers. Am Fam Physician 97(4):254-260, 2018.

  • 4.Okereke OI, Reynolds CF 3rd, Mischoulon D, et al: Effect of long-term vitamin D3 supplementation vs placebo on risk of depression or clinically relevant depressive symptoms and on change in mood scores: A randomized clinical trial. JAMA 324(5):471-480, 2020.doi: 10.1001/jama.2020.10224

  • 5.Barbarawi M, Kheiri B, Zayed Y, et al: Vitamin D supplementation and cardiovascular disease risks in more than 83,000 individuals in 21 randomized clinical trials: A meta-analysis [published correction appears in JAMA Cardiol 2019 Nov 6]. JAMA Cardiol 4(8):765-776, 2019.doi: 10.1001/jamacardio.2019.1870

  • 6.Yao P, Bennett D, Mafham M, et al: Vitamin D and calcium for the prevention of fracture: A systematic review and meta-analysis. JAMA Netw Open 2(12):e1917789, 20019.doi:10.1001/jamanetworkopen.2019.17789

ビタミンD中毒の症状と徴候

ビタミンD中毒の診断

  • 高カルシウム血症に加えて危険因子または血清25(OH)D濃度の上昇

過剰なビタミンD摂取歴が,ビタミンD中毒を他の高カルシウム血症の原因と鑑別する唯一の手がかりとなることがある。12~16mg/dL(3~4mmol/L)への血清カルシウム濃度の上昇は,中毒症状が生じる場合の一定した所見である。血清25(OH)D濃度は,通常150ng/mL(375nmol/L)を超えて上昇する。1,25-ジヒドロキシビタミンDの濃度(診断を確定するために測定する必要はない)は正常となることがある。

ビタミンD,特に強力な1,25-ジヒドロキシビタミンDの大量投与を受けている全ての患者で,血清カルシウム値を頻回に(初めは毎週,後に毎月)測定すべきである。

ビタミンD中毒の治療

  • 静注による水分補給に加えてコルチコステロイドまたはビスホスホネート

ビタミンDの摂取を中止した後,血中カルシウム濃度を低下させるために,水分補給(生理食塩水の静注による)を行い,コルチコステロイドまたはビスホスホネート(骨吸収を阻害する)を投与する。

腎障害または異所性石灰化は,もしあれば,不可逆性である可能性がある。

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