回避・制限性食物摂取症(ARFID)

執筆者:Evelyn Attia, MD, Columbia University Medical Center;
B. Timothy Walsh, MD, College of Physicians and Surgeons, Columbia University
レビュー/改訂 2020年 6月
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回避・制限性食物摂取症は,食物摂取量の制限を特徴とし,身体像の歪みや身体像へのとらわれはみられない(神経性やせ症と神経性過食症でみられる)。

摂食障害群に関する序論も参照のこと。)

回避・制限性食物摂取症は,典型的には小児期に始まるが,いかなる年齢でも発症しうる。この障害は,当初は小児期によくみられる偏食に類似することがあり,偏食の場合,小児は特定の食品や特定の色,硬さ,または匂いの食品の摂取を拒否する。しかしながら,そのような食物に関するこだわりは,回避・制限性食物摂取症とは異なり,通常はごく少数の食品に関するものであり,食欲,全体的な食物摂取量,ならびに成長および発達は正常である。

回避・制限性食物摂取症の患者が食べなくなる理由は,食べることへの関心を失うことや,食べることで窒息や嘔吐など有害な結果が生じるのを恐れることなどがある。感覚的特徴(例,色,硬さ,匂い)のために特定の食物を避ける場合がある。

ARFIDの症状と徴候

回避・制限性食物摂取症の患者は,以下のいずれかが生じるまで,摂食を回避し,食物摂取を制限する:

  • 有意な体重減少,または小児では期待される成長が得られない

  • 有意な栄養欠乏

  • 経腸栄養(例,栄養管を介して)または経口栄養補助食品への依存

  • 心理社会的機能の著明な障害

栄養欠乏により生命が脅かされる可能性があり,社会的機能(例,家族そろっての食事への参加,食事の可能性がある状況での友人との時間の共有)が著しく損なわれる可能性もある。

ARFIDの診断

  • 臨床基準

回避・制限性食物摂取症の診断基準には以下のものがある:

  • 食物の制限により,有意な体重減少,小児では期待される成長が得られない,有意な栄養欠乏,栄養サポートへの依存,および/または心理社会的機能の著明な障害を来す

  • 食物の制限が食物の入手困難,文化的慣習(例,宗教的な断食),身体疾患,医学的治療(例,放射線療法,化学療法),または他の摂食障害(特に神経性やせ症ないしは神経性過食症)によって引き起こされたものではない

  • 自分の体重または体型に対する認知に歪みがあることを示す証拠が認められない。

しかしながら,食物摂取量の減少の原因となる身体疾患を有するが,典型的に予想されるよりはるかに長期間にわたり,かつ具体的な介入が必要となる程度まで,摂取量の減少を維持する患者は,回避・制限性食物摂取症とみなされる場合がある。

初診時に,医師は身体疾患のほか,他の摂食障害群うつ病統合失調症,および他者に負わせる作為症など,食欲および/または摂食量を障害する他の精神障害を除外する必要がある。

ARFIDの治療

  • 認知行動療法

摂食を正常化する一助として認知行動療法がよく用いられる。食べるものに対して患者が感じている不安を和らげるのに役立つ可能性もある。

ARFIDの要点

  • 回避・制限性食物摂取症は,生命を脅かす栄養欠乏を引き起こす可能性や,社会的機能(例,家族そろっての食事への参加)を著しく損なう可能性がある。

  • 診断は具体的な基準,特に回避・制限性食物摂取症と神経性やせ症または神経性過食症との鑑別に基づいて下される。

  • 治療は認知行動療法により行い,これは患者の摂食を正常化させることを目的とする。

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