(神経眼科疾患および脳神経の疾患の概要 神経眼科疾患および脳神経の疾患の概要 特定の脳神経の機能障害は,眼,瞳孔,視神経,または外眼筋とその神経に影響を及ぼす可能性がある;そのため,そういった障害は,脳神経の疾患,神経眼科疾患,またはその両者とみなされる場合がある。 神経眼科疾患は,眼球運動および視覚を制御・統合する中枢経路の機能障害が関与していることもある。... さらに読む も参照のこと。)
第3脳神経の疾患の病因
麻痺および瞳孔障害を伴う第3脳神経(動眼神経)障害の一般的な原因としては,以下のものがある:
動脈瘤(特に後交通動脈の)
より頻度は低いが,脳幹を侵す髄膜炎(例,結核性髄膜炎)
瞳孔異常がみられない麻痺,特に部分的麻痺の最も一般的な原因は以下のものである:
第3脳神経虚血(通常, 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む または 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む による)または中脳の虚血
ときに,後交通動脈瘤が瞳孔異常を伴わない動眼神経麻痺の原因となることがある。
第3脳神経の疾患の症状と徴候
複視および眼瞼下垂(上眼瞼の垂れ下がり)が起こる。患眼は,正面注視時にやや外下方に偏位することがある;内転は遅延し,正中線を超えられないことがある。上方視が障害される。下方視を試みると,上斜筋の作用で眼球がやや内転し,また回転する。
瞳孔は正常または散大している可能性がある;直接または間接対光反射は遅延,または消失している(遠心路障害)。散瞳は初期徴候である可能性がある。
第3脳神経の疾患の診断
臨床的評価
CTまたはMRI
第3脳神経の疾患の鑑別診断としては以下のものがある:
動眼神経線維束を途絶させる中脳病変(Claude症候群,Benedict症候群)
軟膜の腫瘍または感染症
海綿静脈洞疾患(巨大頸動脈瘤,瘻孔,または血栓症)
眼球運動を制限する眼窩内器質性病変(例,眼窩ムコール症)
眼筋ミオパチー(例,甲状腺機能亢進症またはミトコンドリア病による)
神経筋接合部疾患(例,重症筋無力症またはボツリヌス症による)
鑑別は臨床的に行うことができる。眼球突出または眼球陥入,重症眼窩外傷の病歴,または明らかな眼窩炎症は,眼窩内の器質的疾患を示唆する。両側性眼筋麻痺,上方視または外転の麻痺,眼球突出,眼瞼後退,下方注視時の眼瞼の動きの遅れ(Graefe徴候)があり,瞳孔が正常な患者では,バセドウ病眼症(眼窩症)を考慮すべきである。
CTまたはMRIが必要である。散瞳および突発性の重度の頭痛(脳動脈瘤破裂を示唆)がみられる場合,または反応が進行性に低下している(ヘルニアを示唆)場合は,直ちに神経画像検査(CTまたは,可能であればMRI)を施行する。脳動脈瘤破裂が疑われ,CT(またはMRI)で血液が描出されない,あるいはCT(またはMRI)がすぐに利用できない場合は,腰椎穿刺,MRアンギオグラフィー,CT血管造影,脳血管造影など,他の検査が適応となる。海綿静脈洞疾患および眼窩ムコール症は,時宜を逃さず治療するために直ちにMRIを施行する必要がある。
第3脳神経の疾患の治療
原因によって様々
第3脳神経の疾患の治療法は原因によって異なる。
第3脳神経の疾患の要点
症状および徴候としては,複視,眼瞼下垂,眼球内転障害,上方および下方注視麻痺などがある。
瞳孔に影響がみられる場合は,動脈瘤およびテント切痕ヘルニアを考慮し,瞳孔に影響がみられない場合は,神経の虚血(通常,糖尿病または高血圧に続発するもの)を考慮する。
臨床的評価と神経画像に基づいて他の考えられる原因を除外する;激しい頭痛がある場合や,患者の反応が徐々に低下している場合は,直ちにCT(またはMRI)を施行する。
麻痺の原因になっている疾患を治療する。