頸部痛および背部痛の評価

執筆者:Peter J. Moley, MD, Hospital for Special Surgery
レビュー/改訂 2020年 11月
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頸部痛および背部痛は最も一般的な受診理由の1つである。本章では,後頸部を含む頸部痛(前頸部に限った痛みは扱わない)および腰痛を扱うが,ほとんどの重度の外傷性損傷(例,骨折脱臼亜脱臼)は扱わない。

頸部痛および背部痛の病態生理

原因によっては,頸部痛または背部痛は神経症状を伴うことがある。

神経根が侵されている場合,痛みがその神経根の分布に沿って遠位に放散することがある(根性痛)。その神経根によって支配される領域の筋力,感覚,および反射が障害を受ける可能性がある。( See heading on page 反射の評価。)

表&コラム

脊髄が侵されると,侵された脊髄レベル以下の全てのレベルで,筋力,感覚,および反射が障害されることがある(segmental neurologic deficitsと呼ばれる)。

馬尾が侵されると,腰仙部に髄節性の障害が発生し,典型的には腸の機能障害(便秘または便失禁),膀胱の機能障害(尿閉または尿失禁),肛門周囲の感覚消失,勃起障害,ならびに直腸の緊張低下および括約筋反射(例,球海綿体筋反射,肛門収縮反射)の消失を伴う。

脊椎の有痛性疾患はいずれも傍脊柱筋の反射による収縮(攣縮)をも引き起こすことがある。

頸部痛および背部痛の病因

ほとんどの頸部痛および背部痛は脊椎の構造の疾患により引き起こされる。筋肉痛がよくみられる症状であり,典型的には脊髄神経後枝による深層筋の刺激を原因とし,浅層筋の場合は脊椎損傷に対する局所の反応に起因する。頸椎および腰椎の捻挫は非常にまれである。線維筋痛症が頸部痛および背部痛に併存することがあるが,頸部または背部のみに痛みを引き起こす可能性はあまり高くない。ときに,痛みは脊椎外の疾患(特に血管,消化管,または泌尿生殖器の疾患)からの関連痛であることがある。一部のまれな(脊椎および脊椎外の)原因は重篤である。

ほとんどの脊椎の疾患の原因は次のものである:

  • 機械的障害

感染症,炎症,がん,または骨粗鬆症もしくはがんに起因する脆弱性骨折など,非機械的障害に関連するものはごく少数である。

一般的な原因

機械的な脊椎の疾患による痛みの原因は,ほとんどが以下のものである:

頸部痛および腰痛の最も一般的な原因は以下の通りである。

これらは全て,痛みを引き起こすことなく存在する場合もある。

いくつかの解剖学的異常(例,椎間板の隆起または変性,骨棘,脊椎分離,椎間関節異常)は,頸部痛または背部痛のない人々に一般的にみられるため,痛みの病因としては疑わしい。しかし,背部痛の病因は(特に機械的なものの場合)多因子性であることが多く,疲労,身体的デコンディショニング,筋肉痛,姿勢不良,安定化筋の筋力低下,柔軟性の低下,およびときに心理社会的ストレスまたは精神医学的異常により増悪する基礎疾患を伴う。したがって,単一の原因を同定するのは困難または不可能なことが多い。

線維筋痛症などの全身性の筋筋膜性疼痛症候群に頸部痛および/または背部痛が含まれることが多い。

重篤でまれな原因

重篤な原因は,障害および死亡を防ぐために時機を逸さない治療を要することがある。

重篤な脊椎外疾患としては以下のものがある:

重篤な脊椎疾患としては以下のものがある:

  • 感染症(例,椎間板炎,硬膜外膿瘍,骨髄炎

  • 原発性腫瘍(脊髄または脊椎の

  • 転移性脊椎腫瘍(乳房,肺,または前立腺由来が最も多い)

機械的な脊椎疾患は,脊髄神経根(または特に脊髄)を圧迫する場合に,重篤となる可能性がある。脊髄圧迫は,頸椎,胸椎,および上位腰椎のみに起こり,重度の脊柱管狭窄症,または腫瘍,脊髄硬膜外膿瘍,脊髄硬膜外血腫などの疾患によって生じることがある。神経圧迫は一般的には椎間板ヘルニアが生じているレベルに発生し,傍正中部または椎間孔部にみられるか,正中部または外側陥凹部で狭窄を伴うか,神経根の通過する椎間孔部でみられる。

その他のまれな原因

頸部痛および背部痛は,以下のような他の多くの疾患の結果として生じうる:

頸部痛および背部痛の評価

概要

頸部痛および背部痛の原因は多因子性であることが多いため,多くの患者で確定診断ができない。しかし,可能であれば以下の点を判定すべきである:

  • 痛みが脊椎に起因するか脊椎外に起因するか

  • 原因は重篤な疾患か

重篤な原因が除外されれば,背部痛はときに以下のように分類される:

  • 非特異的な頸部痛または腰痛

  • 根性症状による頸部痛または腰痛

  • 跛行(神経性)を伴う腰部脊柱管狭窄症または脊髄症を伴う頸部脊柱管狭窄症

  • その他の脊椎の原因に関連した頸部痛または腰痛

病歴

現病歴の聴取では,痛みの性質,発症,期間,重症度,部位,放散,および経時変化,ならびに休息,活動,体位の変化,荷重負荷,時間帯(例,夜,起床時)などの軽快因子または増悪因子を対象に含めるべきである。注意すべき随伴症状として,こわばり,しびれ,錯感覚,筋力低下,尿失禁または尿閉便秘便失禁などがある。

システムレビュー(review of systems)では,発熱,発汗,および悪寒(感染症);体重減少および食欲不振(感染症またはがん);嚥下時の頸部痛の悪化(食道疾患);食欲不振,悪心,嘔吐,黒色便,血便,および腸管機能または便の変化(消化管疾患);泌尿器症状および側腹部痛(尿路疾患),特に間欠性,仙痛性,および反復性の場合(腎結石症);咳嗽,呼吸困難,および吸気時の悪化(肺疾患);性器出血または腟分泌物および月経周期に関連する痛み(骨盤内疾患);疲労,抑うつ症状,および頭痛(多因子性の機械的な頸部痛または背部痛)など,原因を示唆する症状に注意すべきである。

既往歴の聴取では,既知の頸部もしくは背部の疾患(骨粗鬆症変形性関節症,椎間板疾患,および最近のまたは離れた部位の損傷など)および手術,背部の疾患に対する危険因子(例,がん[乳癌,前立腺癌,腎癌,肺癌,結腸癌に加えて白血病など]),動脈瘤に対する危険因子(例,喫煙,高血圧),感染症に対する危険因子(例,免疫抑制;静注薬物の使用;最近の手術,血液透析,穿通性外傷,または細菌感染);ならびに基礎にある全身性疾患の関節外の特徴(例,下痢,腹痛,ぶどう膜炎,乾癬)などを対象に含める。

身体診察

体温および全般的な外観に注意する。可能であれば,患者が診察室に入り,服を脱ぎ,診察台に上る様子を観察し,歩行およびバランスを評価すべきである。

診察は脊椎および神経学的診察に焦点を合わせる。痛みの機械的な発生源が脊椎にみられない場合,局所痛または関連痛の発生源がないかを調べる。

脊椎の診察では,背部および頸部を視診し,視認可能な何らかの変形,紅斑部位,または小水疱性の発疹がないか確認する。脊椎および傍脊柱筋を触診し,圧痛および筋緊張の変化がないか確認する。全体の可動域を調べる。頸部痛の患者では,肩関節を診察する。腰痛の患者では,股関節を診察する。

神経学的診察では,脊髄全体の機能を評価すべきである。筋力,感覚,および深部腱反射を検査する。反射検査は,正常な脊髄機能を確認するための最も信頼できる理学的検査の1つである。皮質脊髄路の機能障害は,足底反応による母趾背屈およびホフマン(Hoffman)徴候によって示唆され,ほとんどの場合は反射の亢進を伴う。

ホフマン徴候を調べるには,中指の爪または手掌面を軽く弾く;母指の末節骨が屈曲すれば検査は陽性であり,通常は頸髄の狭窄または脳病変により引き起こされる皮質脊髄路の機能障害が示唆される。感覚の所見は主観的であり,信頼できないことがある。

下肢伸展挙上テストが坐骨神経痛の確定に役立つ。患者を仰向けに寝かせて両膝を伸ばし,足関節を背屈させる。患側の下肢を,膝は伸ばしたままで臨床医がゆっくり持ち上げる。坐骨神経痛がある場合,典型的には10~60°の角度に持ち上げると症状が生じる。坐骨神経痛を確かめるために膝関節をしばしば後方から触診するが,これはおそらく妥当な検査法ではない。

交叉性下肢伸展挙上(crossed straight leg raise)テストでは,健側の下肢を持ち上げる;患側の下肢に坐骨神経痛が起これば,検査は陽性である。下肢伸展挙上テストが陽性であることは椎間板ヘルニアに対し感度が高いが特異度が低い;交叉性下肢伸展挙上テストは,感度は低いが特異度は90%である。

椅子座位での下肢伸展挙上テストは,患者に股関節を90°に屈曲させた椅子座位をとらせて行い,膝が完全に伸展するまで下腿をゆっくり持ち上げる。坐骨神経痛がある場合,下肢を伸展するにつれて脊椎の痛み(およびしばしば根性症状)が起こる。スランプテストは脊髄神経根を牽引する点で下肢伸展挙上テストと類似しているが,椅子座位で患者を「もたれかかる(slumping)」姿勢(胸椎および腰椎を屈曲)にして頸部を屈曲させて行う。スランプテストは,下肢伸展挙上テストと比較して,椎間板ヘルニアの検出感度が高いが特異度が低い。

全身状態の観察では,肺を聴診する。腹部について,圧痛,腫瘤,および,特に55歳以上の患者で,拍動性腫瘤(腹部大動脈瘤を示唆する)がないか確認する。拳で肋骨脊柱角を打診して,腎盂腎炎を示唆する叩打痛がないか確認する。

便潜血検査を含む直腸診および男性では前立腺検査を行う。直腸の緊張および反射を評価する。骨盤内疾患を示唆する症状または原因不明の発熱がある女性では内診を行う。

下肢の脈を確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 5cmを超える腹部大動脈(特に圧痛がある場合)または下肢の脈拍欠損

  • 急性の引き裂かれるような上背部痛および中背部痛

  • がん,診断されたものまたは疑われるもの

  • 神経脱落症状

  • 発熱または悪寒

  • 限局性の腹部圧痛,腹膜刺激徴候,黒色便,または血便などの消化管所見

  • 感染症の危険因子(例,免疫抑制;静注薬物の使用;最近の手術,穿通性外傷,または細菌感染)

  • 髄膜症

  • 重度の夜間痛または生活に支障を来す痛み

  • 原因不明の体重減少

所見の解釈

重篤な脊椎外の疾患(例,がん,大動脈瘤,硬膜外膿瘍,骨髄炎)は背部痛のまれな原因であるが,それ自体はまれではない(特に高リスク集団において)。

レッドフラグサインがあれば重篤な原因の疑いを強めるべきである(背部痛がある患者におけるレッドフラグサインの解釈の表を参照)。

表&コラム

他の所見も参考になる。屈曲に伴う痛みの悪化は椎間板疾患と一致する;伸展に伴う悪化は,脊柱管狭窄症または椎間関節を侵している関節炎を示唆する。特定のトリガーポイントにおける圧痛は,脊椎の疾患に起因する筋肉痛を示唆する。

検査

通常,痛みの期間が短ければ(4~6週間未満)検査は不要であるが,レッドフラグサインがある場合,重篤な外傷(例,自動車事故,高所からの転落,穿通性外傷)を受けた場合,または評価により特異的な非機械的な原因(例,腎盂腎炎)が示唆される場合は除く。

単純X線では,ほとんどの椎間板高の減少,前方への脊椎すべり症,アライメント不良,骨粗鬆症性(脆弱性)骨折変形性関節症,およびその他の重篤な骨の異常(例,感染症または腫瘍によるもの)が同定可能であり,MRIやCTなどの追加の画像検査が必要かどうかの判断に役立つ場合がある。しかし,軟部組織(椎間板)または神経組織の異常(多数の重篤な疾患で生じる)は同定されない。

検査は,所見および疑われる原因に基づいて行う。検査はまた,初期治療が不成功に終わった患者または症状が変化した患者でも適応となる。疑われる特異的な原因に対する検査としては,以下のものがある:

  • 神経脱落症状,特に神経根圧迫または脊髄圧迫と一致するもの:MRIおよび頻度は低いがCTによる脊髄造影を可能な限り早く行う

  • 感染の可能性:白血球数,赤血球沈降速度(赤沈),画像検査(通常はMRIまたはCT),および感染組織の培養

  • がんの可能性:CTまたはMRI,血算,および場合によっては生検

  • 動脈瘤の可能性:CT,血管造影,またはときに超音波検査

  • 大動脈解離の可能性:血管造影,CT,またはMRI

  • 生活に支障を来す症状または6週間以上続く症状:画像検査(通常はMRIまたはCT)および感染が疑われる場合は白血球数および赤沈;一部の臨床医は,異常の部位特定およびときに診断に役立てるために脊椎の前後および側面のX線から始める

  • 他の脊椎外の疾患:状況に応じた検査(例,肺疾患に対する胸部X線,尿路疾患または明らかな機械的原因がない背部痛に対する尿検査)

頸部痛および背部痛の治療

基礎疾患を治療する。

急性の筋骨格痛(神経根障害を伴うまたは伴わないもの)を以下によって治療する:

  • 鎮痛薬

  • 腰椎の安定化および運動

  • 加温および冷却

  • 必要に応じて活動の修正および安静(最大48時間)

  • 安心させること

急性の非特異的な(非根性の)頸部痛または腰痛がある患者では,特異的な病因を同定するための詳細な評価を行わずに治療を開始することがある。

パール&ピットフォール

  • 非特異的で非根性の背部痛があり,レッドフラグサインがない患者は対症的に治療し,検査を最初に必要としない。

鎮痛薬

アセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が鎮痛薬の第1選択である。まれに,重度の急性の痛みに対してオピオイド(適切な注意事項を守る)が必要になることがある。痛みと攣縮のサイクルを抑えるために,急性外傷後直ちに行う十分な鎮痛が重要である。長期使用の便益を示すエビデンスは弱いかまたは存在しないため,オピオイドの使用期間は限定すべきである。

頸椎および腰椎の安定化および運動

運動ができるほどに急性痛が軽減したら,頸椎または腰椎の安定化プログラムを理学療法士の監督下で開始する。このプログラムは可能になればただちに開始すべきであり,動作の回復,傍脊柱筋を強化する運動,作業姿勢の指導などが含まれ,その目的は背部の支持構造を強化して慢性化または再発の可能性を減らすことである。腰痛の場合は,「体幹(core)」(腹部および腰部)の筋力強化が重要であり,台上で仰臥位または腹臥位での動作から開始して,四つ這い位(手と膝をつく),最終的に立位での活動へと進んでいくことが多い。

加温および冷却

急性の筋攣縮はまた,冷却または加温によって緩和することもある。外傷後最初の2日間は,通常は加温よりも冷却が好ましい。氷および冷却パックは皮膚に直接当てるべきでない。それらは(例,プラスチックに)包み込んで,タオルまたは布の上から当てるべきである。20分後に氷を外し,後に再び20分間当てる(60~90分間かけて行う)。このプロセスを24時間の間に数回繰り返してよい。加温には温熱パッドを用い,同じ時間行ってよい。背部の皮膚は熱に対する感度が低いことがあるため,熱傷を予防するために温熱パッドは注意深く用いなければならない。パッドを背部に当てたまま眠り込むことによる長時間の曝露を避けるために,患者には就寝時に温熱パッドを使わないよう指導する。ジアテルミー(深部温熱療法)は,急性期後の筋攣縮および痛みを軽減するのに役立つことがある。

コルチコステロイド

重度の根性症状および腰痛がある患者では,一部の医師は1コースの経口コルチコステロイドを施行するか,または硬膜外注射を行う専門医へ早期紹介することを推奨している。しかし,コルチコステロイドの全身投与および硬膜外投与の使用を支持するエビデンスには議論の余地がある。コルチコステロイドの硬膜外注射を予定している場合は,病変の同定,局在診断,および最適な治療ができるよう,注射前にMRIを施行する。

筋弛緩薬

経口筋弛緩薬(例,シクロベンザプリン[cyclobenzaprine],メトカルバモール,メタキサロン[metaxalone],ベンゾジアゼピン系)に関しては議論がある。これらの薬剤の便益は,中枢神経系作用およびその他の有害作用と比較検討すべきである(特により重度の有害作用がありうる高齢患者で)。筋弛緩薬は,中枢性疼痛症候群(例,線維筋痛症)を有し夜間のシクロベンザプリン[cyclobenzaprine]により睡眠が促進され疼痛が軽減する可能性がある患者を除き,目に見える触知可能な筋攣縮がある患者に限定すべきであり,72時間を超えて用いてはならない。

安静および固定

ときに苦痛を緩和するために初期の短い期間(例,1~2日間)身体活動を減らす必要があるが,長期の床上安静,脊椎の牽引,およびコルセットは有益ではない。頸椎の痛みがある患者では,痛みが緩和し安定化プログラムに参加できるようになるまで,頸部カラーおよび頸部補正枕(contour pillow)が有益なことがある。

脊椎マニピュレーション

脊椎マニピュレーションは,筋攣縮または急性の背部もしくは頸部の損傷によって引き起こされる痛みの軽減に役立つことがあるが,高速度の整復操作は55歳以上の患者および重度の椎間板疾患,頸椎の関節炎頸部脊柱管狭窄症,または骨粗鬆症を有する患者にはリスクが伴う可能性がある(例,頸部の整復操作による椎骨動脈損傷)。

安心させること

非特異的な筋骨格の急性背部痛がある患者には,予後は良好であり,運動および訓練は多少の苦痛を引き起こしても安全であると伝えて安心させるべきである。臨床医は,几帳面,親切,堅実,および中立的であるべきである。抑うつが数カ月間持続するかまたは二次的疾病利得が疑われる場合は,心理学的評価を考慮すべきである。

老年医学的重要事項

腰痛は60歳以上の成人の50%に発生する。

非外傷性の腰痛がある高齢患者では,たとえその診断を示唆する身体所見がなくとも腹部大動脈瘤(およびそれを検出するためのCTまたは超音波検査)を考慮すべきである(特に喫煙者または高血圧患者)。

原因が合併症のない筋骨格の背部痛であると思われる場合でも,高齢患者に対しては脊椎の画像検査が適切であることがある(例,がんを除外するため)。

経口筋弛緩薬(例,シクロベンザプリン[cyclobenzaprine],メトカルバモール,メタキサロン[metaxalone])およびオピオイドの使用に関しては議論がある;高齢患者においては抗コリン作用,中枢神経系作用,およびその他の有害作用が潜在的な有益性を上回ることがある。

頸部痛および背部痛の要点

  • 腰痛は60歳以上の成人の50%に発生する。

  • 頸部痛および背部痛のほとんどは機械的な脊椎疾患により引き起こされ,通常は非特異的な自然に軽快する筋骨格障害である。

  • 背部痛は多因子性であることが多く,特異的な病因の同定を困難にしている。

  • 機械的な疾患の大半は鎮痛薬,早期の身体活動,および運動で治療し,長期の床上安静や不動状態は避ける。

  • 急性の非根性の背部痛がある患者では,特異的な病因を同定するための詳細な評価を行わずに治療を開始することがある。

  • 重篤な脊椎または脊椎外の疾患はまれな原因であるが,レッドフラグサインにより検査の必要性が示唆されることが多い。

  • 身体診察時の脊髄機能の評価としては,仙骨神経の機能(例,直腸の緊張,肛門括約筋反射,球海綿体反射),膝蓋腱反射およびアキレス腱反射,ならびに筋力の検査などがある。

  • 脊髄圧迫を示唆する髄節性の神経脱落症状がある患者では,可能な限り早くMRIまたはCTによる脊髄造影が必要である。

  • 明らかに機械的とは言えない腰痛のある高齢患者では,たとえその診断を示唆する身体所見がなくとも腹部大動脈瘤を考慮すべきである。

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