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リンパ球性間質性肺炎

(リンパ性間質性肺炎)

執筆者:

Joyce Lee

, MD, MAS, University of Colorado School of Medicine

レビュー/改訂 2019年 9月
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リンパ球性間質性肺炎(LIP)は,肺胞の間質および気腔にリンパ球が浸潤する病態である。原因は不明である。症状および徴候は,咳嗽,進行性の呼吸困難,および断続性ラ音である。診断は病歴,身体診察,画像検査,および肺生検に基づく。治療はコルチコステロイド,細胞傷害性薬剤,またはその両方によるが,その効力は不明である。5年生存率は50~66%である。

LIPは,HIV陽性小児において ニューモシスチス ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jirovecii肺炎) Pneumocystis jiroveciiは免疫抑制患者,特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者およびコルチコステロイドの全身投与を受けている患者における肺炎の一般的な起因菌である。症状としては,発熱,呼吸困難,乾性咳嗽などがある。診断には,誘発または気管支鏡によって採取した喀痰検体における起因菌の証明が必要である。治療は抗菌薬によって行い,通常トリメトプリム/スルファメトキサゾールもしくはジアフェニルスルホン... さらに読む ニューモシスチス肺炎(<i >Pneumocystis jirovecii</i>肺炎) (Pneumocystis)感染後の肺疾患の最も一般的な病型であり,また HIV陽性小児 乳児および小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,レトロウイルスの一種であるHIV-1により(また頻度は低くなるが近縁のレトロウイルスであるHIV-2によっても)引き起こされる。感染すると進行性の免疫機能低下が引き起こされ,日和見感染症や悪性腫瘍が発生するようになる。末期には後天性免疫不全症候群(AIDS)となる。診断は,生後18カ月以上の小児では... さらに読む 乳児および小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 の最大半数におけるAIDS指標疾患である。LIPは,成人ではHIV感染の有無にかかわらず1%未満に起こる。女性および女児により多い。

原因は,自己免疫疾患,または エプスタイン-バーウイルス 伝染性単核球症 伝染性単核球症は,エプスタイン-バーウイルス(EBV,ヒトヘルペスウイルス4型)により引き起こされ,疲労,発熱,咽頭炎,およびリンパ節腫脹を特徴とする。疲労は数週間から数カ月間続くことがある。気道閉塞,脾破裂,および神経症候群などの重症合併症がときに起こる。診断は臨床的に,またはEBVの血清学的検査により行う。治療は支持療法による。 EBVは5歳未満の50%の小児が感染するヘルペスウイルスである。成人は90%以上がEBVに対して血清反応... さらに読む 伝染性単核球症 HIV ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ,もしくはその他のウイルス感染に対する非特異的反応であると仮定される。病因が自己免疫性であることを示唆するエビデンスには, シェーグレン症候群 シェーグレン症候群 シェーグレン症候群は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な分泌機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。シェーグレン症候群は様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自己抗体,ならびに(ときに)病理組織学的検査による。治療は通常,対症療法である。... さらに読む シェーグレン症候群 (LIP症例の25%)および他の疾患(例, 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む 関節リウマチ(RA) 橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎は甲状腺の慢性自己免疫性炎症で,リンパ球の浸潤を伴う。所見には,無痛性の甲状腺腫大および甲状腺機能低下症状がある。診断には抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の抗体価高値を証明することが含まれる。生涯にわたるL-チロキシン補充が一般的には必要となる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 橋本甲状腺炎は北米の原発性甲状腺機能低下症の最も一般的な原因であると考えられている。女性に数倍多く発生する。発生率は年齢とともに上昇し,... さらに読む ―症例の14%)との合併頻度が高いことなどがある。間接的病因としてウイルスが関与していることを示すエビデンスには,免疫不全状態(HIV/AIDS,combined variable immunodeficiency,無ガンマグロブリン血症―症例の14%)との合併が頻繁に認められること,およびLIP患者の肺組織でエプスタイン-バーウイルスDNAおよびHIV RNAが発見されることなどがある。この理論によれば,LIPの病態は,肺のリンパ組織が吸入気中または血液中の抗原に反応するという正常機能が過剰に発現したものである。

リンパ球性間質性肺炎の症状と徴候

成人では,リンパ球性間質性肺炎は進行性の呼吸困難および咳嗽を引き起こす。これらの症状は数カ月,一部の症例では数年にわたって進行し,発症時の平均年齢は54歳である。体重減少,発熱,関節痛,および盗汗が起こるが,より頻度は低い。

診察では断続性ラ音が聴取されることがある。肝脾腫,関節炎,およびリンパ節腫脹などの所見はまれであり,これらの所見は合併症または別の疾患の診断を示唆する。

リンパ球性間質性肺炎の診断

  • 高分解能CT(HRCT)

  • 確定のため,生検

リンパ球性間質性肺炎の診断は通常,リスクがあり,症状が矛盾しない患者で疑われる。画像検査およびときに肺生検が行われる。

胸部X線は,両側肺底部の線状網状または結節状の陰影を示すが,これはいくつかの肺感染症でみられる非特異的な所見である。より進行した例では,肺胞陰影,嚢胞,またはその両方がみられることがある。

胸部のHRCTを行い,これによって疾患の範囲の確定,肺門部解剖の明確化,および胸膜病変の同定ができる。HRCT所見は非常に多様である。特徴的所見は,小葉中心性および胸膜下結節,気管支血管束の肥厚,結節状のすりガラス陰影,および嚢胞様構造である。

著明な低酸素血症が起こることがある。

感染症を除外するために気管支肺胞洗浄を行うべきであり,これによりリンパ球の増加が明らかになる場合がある。

ルーチンの臨床検査および血清タンパク質電気泳動(SPEP)を行うが,これは約80%の患者で血清タンパク質の異常がみられるためであり,多クローン性免疫マグロブリン血症および低ガンマグロブリン血症が最も頻度が高いが,その意義は不明である。

成人の診断では,肺生検を行い,リンパ球および他の免疫細胞(形質細胞,免疫芽球,組織球)の浸潤による肺胞中隔の拡張を証明する必要がある。浸潤はときに気管支および脈管に沿ってみられるが,肺胞中隔に沿ってみられる頻度が最も高い。LIPを原発性リンパ腫と鑑別するため,組織の免疫組織化学染色およびフローサイトメトリーを行わなければならない。LIPでは,浸潤物が多クローン性(T細胞およびB細胞の両方を含む)であるのに対し,その他のリンパ腫では浸潤物は単クローン性である。その他の一般的な所見には,胚中心および非乾酪性肉芽腫を伴う多核巨細胞などがある。

リンパ球性間質性肺炎の予後

成人におけるLIPの自然経過および予後はほとんど分かっていない。自然に軽快することもあれば,コルチコステロイドまたはその他の免疫抑制薬による治療後に軽快することもあり,また,リンパ腫へ転化,もしくは呼吸機能不全を伴う肺線維症が発生することもある。5年生存率は50~66%である。一般的な死因は,感染症,悪性リンパ腫の発生(5%),および肺の線維化の進行である。

リンパ球性間質性肺炎の治療

  • コルチコステロイドまたは細胞傷害性薬剤

リンパ球性間質性肺炎の治療はコルチコステロイド,細胞傷害性薬剤,またはその両方によるが,間質性肺疾患の他の多くの原因と同様に,このアプローチの効果も不明である。

リンパ球性間質性肺炎の要点

  • リンパ球性間質性肺炎は全体的にはまれな疾患であるが,HIV陽性小児においては最も一般的な肺疾患の1つである。

  • 症状および徴候は非特異的な傾向がある。

  • 高分解能CT,気管支肺胞洗浄,およびときに肺生検を行う。

  • 治療はコルチコステロイド,細胞傷害性薬剤,またはその両方による。

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