胸壁腫瘍

執筆者:Robert L. Keith, MD, Division of Pulmonary Sciences and Critical Care Medicine, University of Colorado School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 7月
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胸壁腫瘍は良性のこともあれば悪性のこともあり,肺機能に悪影響を与えうる。

原発性胸壁腫瘍は,全ての胸部腫瘍の5%および全ての原発腫瘍の1~2%を占める。ほぼ半数が良性である。

胸壁で最も頻度の高い良性腫瘍は次のものである:

  • 骨軟骨腫

  • 軟骨腫

  • 線維性骨異形成

様々な悪性胸壁腫瘍が存在する。半数以上が遠隔臓器からの転移または隣接構造(乳房,肺,胸膜,縦隔)からの直接浸潤である。

胸壁から生じる最も頻度の高い原発性悪性腫瘍は以下のものである:

  • 肉腫;そのうち約45%が軟部組織から発生し,約55%が軟骨組織または骨組織から発生する。

軟骨肉腫は最も頻度の高い原発性胸壁肉腫であり,肋骨の前側のほか,より頻度は低いが,胸骨,肩甲骨,または鎖骨からも発生する。その他の骨腫瘍としては,骨肉腫や小細胞悪性腫瘍(例,ユーイング肉腫,アスキン腫瘍)などがある。

軟部組織の原発性悪性腫瘍で最も頻度が高いのは,線維肉腫(デスモイド腫瘍,神経線維肉腫)および悪性線維性組織球腫である。その他の原発腫瘍としては,軟骨芽細胞腫,骨芽細胞腫,黒色腫,リンパ腫,横紋筋肉腫,リンパ管肉腫,多発性骨髄腫,形質細胞腫などがある。

胸壁腫瘍の症状と徴候

軟部組織の胸壁腫瘍は,しばしば他の症状を伴わない限局性の腫瘤として現れる。多くの胸壁腫瘍は,他の臨床的理由で行われた画像検査の際に偶発的に検出される。発熱がみられる患者もいる。腫瘍が進行しない限り,患者には通常,痛みはない。対照的に,原発性の軟骨腫瘍および骨腫瘍はしばしば痛みを伴う。

胸壁腫瘍の診断

  • 画像検査

  • 生検

胸壁腫瘍を有する患者には,腫瘍の原発部位および進展範囲と胸壁腫瘍が原発性か転移性かを判定するために,胸部X線,CT,MRIのほか,ときにPET-CTが必要である。生検および組織学的評価により診断を確定する。

胸壁腫瘍の予後

予後はがんの種類,細胞の分化度,および病期によって異なるが,いずれの腫瘍も発生率が低いため,確固たる結論は限られている。中でも肉腫が最もよく研究されており,原発性胸壁肉腫は5年生存率が17%と報告されている。早期症例ほど生存率が高い。

胸壁腫瘍の治療

  • 手術

  • ときに多剤併用化学療法,放射線療法,および手術の併用

胸壁腫瘍のほとんどは,外科的切除および再建術により治療する。再建術ではしばしば筋皮弁と人工補綴材料を併用する。悪性胸水が存在する場合,外科的切除は禁忌となる。

多発性骨髄腫または孤立性形質細胞腫の症例では,化学療法と放射線療法を一次治療とすべきである。

ユーイング肉腫およびアスキン腫瘍などの小細胞悪性腫瘍は,化学療法,放射線療法,および手術を組み合わせた集学的治療を用いて治療すべきである。

遠隔腫瘍からの胸壁転移の症例では,手術以外の選択肢により症状が軽減できない場合にのみ,緩和的な胸壁切除が推奨される。

胸壁腫瘍の要点

  • 胸壁腫瘍はほぼ半数が良性である。

  • 悪性胸壁腫瘍のうち原発性のものは半数未満である。

  • 胸部の腫瘤または原因不明の胸壁痛がみられる場合は,発熱の有無にかかわらず,本疾患を考慮すべきである。

  • 胸壁腫瘍は画像検査での診断とその後の生検で診断する。

  • 大半の患者は外科的な切除と再建(悪性胸水がみられない限り)で治療し,ときに化学療法および/または放射線療法も施行する。

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