胸部理学療法

執筆者:Andrea R. Levine, MD, University of Maryland School of Medicine;
Jason Stankiewicz, MD, University of Maryland Medical Center
レビュー/改訂 2020年 2月
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    胸部理学療法は,体外から物理的な力を加えて気道分泌物の移動および除去を促進する手技であり,胸壁軽打法,体位ドレナージ,振動法などがある。濃厚,粘稠,大量,または被包化した分泌物を除去するのに,咳嗽では不十分な患者に対して適応となる(1)。例としては以下の疾患を有する患者があげられる:

    胸部理学療法を支持する強力なエビデンスを示した質の高い臨床試験は比較的少ないものの,胸部理学療法が嚢胞性線維症患者におけるケアの重要な要素の1つであることに変わりはない。

    禁忌

    胸部理学療法の禁忌事項は全て相対的であり,以下のものが含まれる:

    • 出血性素因(抗凝固療法を含む)

    • 体位または手技による不快感

    • 頭蓋内圧亢進

    • 最近の喀血

    • 肋骨骨折

    • 脊椎骨折または骨粗鬆症

    手技

    胸部理学療法は呼吸療法士によって実施される場合もあるが,その手技を患者の家族に教えることもしばしばある。

    最も一般的に用いられる方法は以下のものである:

    • 体位ドレナージおよび胸壁軽打法

    体位ドレナージおよび胸壁軽打法では,特定の肺葉または区域からの分泌物の排出を容易にするために患者の体を回転させ,同時に手をくぼめて叩くことで貯留分泌物の付着を緩め移動させて,喀出または排出を促す。この手技は,患者にとってやや不快で疲れるものである。手で胸部を軽打するかわりの手法として,機械による振動および加圧ベスト(inflatable vest)などがある。

    その他の気道クリアランスの方法として,呼吸パターンのコントロール,気道開通性維持のための呼気陽圧装置,および痰を移動させるための超低周波気道振動装置などがある。気道クリアランスの方法はいずれも同等であり,個々の患者の必要性および好みに基づいて方法を選択すべきである。

    合併症

    合併症はまれであるが,体位に関連する低酸素症および遊離した分泌物が肺の他領域に入ることなどがある。

    総論の参考文献

    1. 1.McCool FD, Rosen MJ: Nonpharmacologic airway clearance therapies: AACP evidence-based clinical practice guidelines.Chest 129: (1 suppl.): 250S–259S, 2006.doi: 10.1378/chest.129.1_suppl.25OS

    2. 2.Osadnik CR, McDonald CF, Jones AP, Holland AE: Airway clearance techniques for chronic obstructive pulmonary disease.Cochrane Database Syst Rev Mar 14;(3):CD008328, 2012.doi: 10.1002/14651858.CD008328.pub2

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