腎血管性高血圧

執筆者:Matthew R. Weir, MD, University of Maryland School of Medicine
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 修正済み 2025年 2月
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腎血管性高血圧は,片側もしくは両側の腎動脈またはその分枝の部分または完全閉塞により血圧が上昇する病態である。長期化しない限り,通常は無症状である。50%未満の患者では,片側または両側の腎動脈に血管雑音が聴取される。診断は身体診察とduplex法による超音波検査,CT血管造影,またはMRアンギオグラフィーによる腎画像検査により行う。治療としては薬物療法のほか,ときに経皮的血管形成術または外科的な血行再建術を行う。

高血圧も参照のこと。)

腎血管疾患は可逆的な高血圧の最も一般的な原因の1つであるが,全高血圧症例に占める割合は1%に満たない(1)。腎動脈の狭窄または閉塞や,腎副動脈またはそれらの分枝の狭窄または閉塞は,患側腎の傍糸球体細胞からのレニン分泌を刺激することで,高血圧を引き起こす。狭窄が血圧上昇につながる可能性が高くなるには,動脈内腔面積が70%以上低下し,かつ狭窄後の圧較差が有意でなければならない。

全体として,約80%の症例が腎動脈硬化に起因し,20%が線維筋性異形成によるものである。動脈硬化は50歳以上の男性でより多くみられ,主に腎動脈近位3分の1に影響を及ぼす。線維筋性異形成は若年患者(通常は女性)でより多くみられ,通常は主腎動脈遠位3分の2と腎動脈分枝に生じる。まれな原因として,塞栓,外傷,手術中の意図しない結紮,腫瘍による腎茎部の外的圧迫などがある。

腎血管性高血圧は,心拍出量の増加と末梢血管抵抗の増大を特徴とする。

総論の参考文献

  1. 1.Dworkin LD, Cooper CJ.Clinical practice.Renal-artery stenosis. N Engl J Med 361(20):1972-1978, 2009.doi:10.1056/NEJMcp0809200

腎血管性高血圧の症状と徴候

腎血管性高血圧は通常,無症状である。心窩部で収縮期・拡張期に血管雑音が聴取され,通常は片側または両側の上腹部に放散し,とき背部に及ぶこともあり,本疾患にほぼ特有であるが,線維筋性異形成患者全体では約50%で聴取されるのみであり,腎動脈硬化症のある患者ではほとんど聴取されない。

以下の場合は腎血管性高血圧を疑うべきである

  • 拡張期高血圧が突然発生した

  • 新たに発生した高血圧または以前からの安定した高血圧が6カ月間で急速に増悪した

  • 高血圧が当初から重度(例,収縮期血圧 > 180mmHg)である

  • 原因不明の腎機能の悪化がみられる

  • 高血圧が薬剤に抵抗性を示す

背部もしくは側腹部に外傷の既往があるか,この部位に急性疼痛(血尿の有無は問わない)がみられる場合は,腎血管性高血圧(原因として動脈損傷が考えられる)が示唆されるが,これらの所見はまれである。

画像検査で偶然発見された腎臓の大きさの非対称(差が1cmを超える),および原因不明の急性肺水腫または心不全のエピソードを繰り返している場合にも,腎血管性高血圧が示唆される。

腎血管性高血圧の診断

  • 最初の同定は超音波検査,MRアンギオグラフィー,またはCT血管造影による

  • 確定診断は腎血管造影(治療として施行する場合もあり)

腎血管性高血圧が疑われる場合は,超音波検査,MRアンギオグラフィー,またはCT血管造影が妥当な非侵襲的な初期検査である。線維筋性異形成の検出については,狭窄病変が生じる部位(典型的には腎動脈のうち腎臓内にある部分を侵す)の関係から,非侵襲的検査は信頼性が低い。

腎血管造影は確定的な検査であり,非侵襲的検査で判断できず,かつ臨床的な疑いが強い場合に施行されることがある。

Duplex法によるドプラ超音波検査では腎血流を調べることができ,主腎動脈の有意な狭窄(例,60%を超える)を同定する上で信頼性の高い非侵襲的検査法である。感度と特異度は,熟練した検者が行った場合で85~90%である(1)。分枝狭窄の患者では精度が低下する。

MRアンギオグラフィーは腎動脈を調べる上で,より正確かつ特異的な非侵襲的検査法である(2)。しかしながら,腎性全身性線維症などのガドリニウム関連の合併症に関する懸念から,適応に制限があり,特に腎機能不全のある患者その制限が強い。

CT血管造影は別の非侵襲的検査であり,感度および特異度はおよそ95%である(3)。放射線造影剤への曝露があることから,腎機能不全のある患者では適応が制限される。

腎血管造影は,非侵襲的な画像検査で血管形成術またはステント留置術の適応病変が示された場合,または他のスクリーニング検査の結果が確定的でない場合に施行する。腎動脈への選択的注入を伴うデジタルサブトラクション血管造影でも確定診断が可能であるが,この手技では血管形成術やステント留置術を施行することができない。

核医学検査が診断目的で用いられることはまれであり,ときに両腎で血流および濾過を比較する機能評価の検査として用いられることがある。カプトプリル経口投与の前後に撮像を行う。このアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は罹患動脈を狭小化させ,シンチグラフィー中に灌流を低下させる。狭小化により,カプトプリル投与の前後に測定される血清レニン測定値も上昇する。この検査は,腎機能が低下した患者では信頼性が低下することがある。

腎静脈血レニン活性の測定はときに誤った判断につながることがあり,手術が考慮されない限り必要ない。しかしながら,片側例では,腎静脈血レニン活性の比(健側に対する患側の比)が1.5を超える場合,通常は血行再建で予後良好と予想される。この検査は,ナトリウム欠乏によるレニン分泌刺激がみられるときに行う。

診断に関する参考文献

  1. 1.Williams GJ, Macaskill P, Chan SF, et al.Comparative accuracy of renal duplex sonographic parameters in the diagnosis of renal artery stenosis: paired and unpaired analysis. AJR Am J Roentgenol 2007;188(3):798-811.doi:10.2214/AJR.06.0355

  2. 2.Postma CT, Joosten FB, Rosenbusch G, Thien T.Magnetic resonance angiography has a high reliability in the detection of renal artery stenosis. Am J Hypertens 1997;10(9 Pt 1):957-963.doi:10.1016/s0895-7061(97)00157-x

  3. 3.Olbricht CJ, Paul K, Prokop M, et al.Minimally invasive diagnosis of renal artery stenosis by spiral computed tomography angiography. Kidney Int 1995;48(4):1332-1337.doi:10.1038/ki.1995.418

腎血管性高血圧の治療

  • 高血圧,動脈硬化,および関連疾患に対する積極的な内科的管理

  • 線維筋性異形成には,ときに血管形成術の単独またはステント留置術との併用

  • まれにバイパス術

無治療での予後は,無治療の本態性高血圧患者と同様である。

全例で高血圧に対する積極的な内科的管理を行うべきである。

動脈硬化性腎動脈狭窄症

動脈硬化性腎動脈狭窄症の患者に対しては,大規模ランダム化試験であるCORAL(cardiovascular outcomes in renal atherosclerotic lesions)試験で得られたデータから,ステント留置術は内科的管理単独と比較して予後を改善しなかったことが示された(1)。ステント留置術は小幅ではあるが統計学的に有意な収縮期血圧の低下(-2mmHg)をもたらしたが,脳卒中,心筋梗塞,心不全,心血管疾患または腎疾患に起因する死亡,および腎疾患の進行(腎代替療法の導入を含む)の予防において臨床的に有意な便益をもたらさなかった。重要な点として,CORAL試験では,動脈硬化を管理するための抗血小板薬およびスタチンとともに,全ての患者に対して高血圧および糖尿病(あれば)に対する積極的な内科的管理も行われた。

そのため,血管形成術を回避する決定には,現行の内科的管理のガイドラインに対する厳格なアドヒアランスが必須条件とされた(2)。血圧に対する至適な内科的治療により血清クレアチニン値が50%以上上昇する場合は,腎動脈ステント留置術が腎機能の維持に役立つ可能性がある(3)。内科的管理のガイドラインを厳格に遵守できない患者でも,腎動脈狭窄が70%を超える場合は,ステント留置術が考慮されることがある。

線維筋性異形成

腎動脈の線維筋性異形成を有する患者の大半には,経皮的血管形成術(PTA)が推奨される。ステント留置術は再狭窄のリスクを低下させるが,施行後に抗血小板薬(例,アスピリン,クロピドグレル)を投与する。腎動脈分枝での広範な病変のためPTAを技術的に施行できない場合のみ,伏在静脈によるバイパス術が推奨される。ときに,完全な外科的血行再建を行うには,体外でのみ可能なマイクロサージェリーと腎臓の自己移植が必要になる。適切に選択された患者での治癒率は90%であり,手術死亡率は1%未満である(4)。

技術的な理由から血行再建を行えない患者では,常に腎摘出術より薬物療法の方が好ましい。

治療に関する参考文献

  1. 1.Cooper CJ, Murphy TP, Cutlip DE, et al: Stenting and medical therapy for atherosclerotic renal-artery stenosis.N Engl J Med 370:13–22, 2014.doi: 10.1056/NEJMoa1310753

  2. 2.Whelton PK, Carey RM, Aronow WS, et al: 2017 ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines.Hypertension 71(6):e13–e115, 2018. doi: 10.1161/HYP.0000000000000065

  3. 3.Bhalla V, Textor SC, Beckman JA, et al.Revascularization for Renovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension 2022;79(8):e128-e143.doi:10.1161/HYP.0000000000000217

  4. 4.Modrall JG, Rosero EB, Smith ST, et al.Operative mortality for renal artery bypass in the United States: Results from the National Inpatient Sample. J Vasc Surg 48(2):317-322, 2008.doi:10.1016/j.jvs.2008.03.014

要点

  • 腎動脈の狭窄(70%を超える)または閉塞は,患側腎の傍糸球体細胞からのレニン分泌を刺激することにより,高血圧を引き起こす。

  • 約80%の症例が動脈硬化に起因し,20%が線維筋性異形成によるものである。

  • 拡張期高血圧を突然発生した場合,新たに発生した高血圧または以前からの安定した高血圧が6カ月内に急速に増悪した場合,および高血圧が初診時から重度(収縮期血圧180mmHg以上)であるか,腎機能の悪化を伴っているか,薬物治療に強い抵抗性を示す場合は,腎血管性高血圧を疑う。

  • 確定診断検査である腎血管造影を行うべき患者を同定するため,超音波検査,MRアンギオグラフィー,またはCT血管造影を施行する。

  • 高血圧,動脈硬化,および関連疾患に対して積極的な薬物療法を施行する。

  • 線維筋性異形成の患者には,経皮的血管形成術および/またはステント留置術,あるいはまれに血管バイパス術を考慮する。

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