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閉塞性血栓血管炎

(バージャー病)

執筆者:

Koon K. Teo

, MBBCh, PhD, McMaster University

レビュー/改訂 2019年 7月
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閉塞性血栓血管炎は,小型および中型の動脈と一部の表在静脈に生じる炎症性血栓症で,四肢遠位部の動脈虚血と表在性血栓性静脈炎を引き起こす。最も重要な危険因子はタバコ使用である。症状と徴候には,跛行,治癒しない足潰瘍,安静時痛,壊疽などがある。診断は臨床所見,非侵襲的な血管検査,血管造影,および他の原因の除外による。治療はタバコ使用の中止である。タバコ使用を中止した場合の予後は極めて良好であるが,中止しなければ進行は避けられず,しばしば肢切断が必要となる。

閉塞性血栓血管炎は,ほぼ例外なくタバコ使用者に発生し(ほぼ全症例が喫煙者),主として20~40歳の男性に発症し,女性での発生はまれである。ヒト白血球抗原HLA(HLA)の遺伝子型A9およびB5の保有者で,より発生頻度が高い。有病率はアジアおよび中東で最も高い。

閉塞性血栓血管炎は,四肢の小型および中型の動脈としばしば表在静脈において局所的な炎症を引き起こす。急性閉塞性血栓血管炎では,閉塞を引き起こす血栓に内膜への好中球およびリンパ球浸潤を伴い,内皮細胞が増殖するが,内弾性板は正常である。中間の段階では,血栓が器質化した後に閉塞部が不完全ながら再疎通する;中膜は保たれているが,線維芽細胞が浸潤していることがある。古い病変部では動脈周囲に線維化が起こることがあり,ときに隣接する静脈および神経に影響を及ぼす。

原因は不明であるが,喫煙が最も重要な危険因子である。発生機序には,遅延型過敏反応やtoxic angiitisが関与している可能性がある。別の仮説によると,閉塞性血栓血管炎は,血管の構成要素であるヒトI型およびIII型コラーゲンに対する細胞性の過敏症によって引き起こされる 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患では,免疫系が内因性抗原(自己抗原)に対する抗体を産生する。以下の過敏反応が関与することがある: II型:抗体で覆われた細胞が抗体で覆われた異物粒子と同様に 補体系を活性化して,組織損傷を引き起こす。 III型:損傷の機序に抗原抗体複合体の沈着が関与する。 IV型:損傷がT細胞介在性である。 ( アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む である可能性もある。

閉塞性血栓血管炎の症状と徴候

発症は緩徐で,上肢および下肢の最も遠位にある血管から始まり,冷感,しびれ,ピリピリ感,または灼熱痛を伴う。これらの症状は,疾患の客観的所見が得られる前に現れることがある。 レイノー症候群 レイノー症候群 レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮で,単一または複数の手指に可逆的な不快感および変色(蒼白,チアノーゼ,紅斑,またはこれらの組合せ)がみられる。ときに,他の先端部位(例,鼻,舌)で発生することもある。この病態には,原発性のものと続発性のものがある。診断は臨床的に行い,検査では原発性と続発性の鑑別に焦点を置く。合併症のない症例の治療法としては,寒冷刺激の回避,バイオフィードバック,禁煙,必... さらに読む レイノー症候群 がよくみられる。患肢に間欠性跛行が生じ(通常は足弓または下肢に起こり,手,腕,大腿部ではまれである),安静時痛に進行することがある。疼痛が重度で持続する場合は,しばしば患側の下肢で冷感,過度の発汗,およびチアノーゼがみられるようになるが,これは交感神経の過剰興奮に起因するものと考えられる。その後,ほとんどの患者で虚血性潰瘍が生じ,壊疽へと進行することもある。

足の単一または複数の動脈のほか,しばしば手首において,脈が減弱ないし消失する。喫煙者で四肢に潰瘍のある若年男性では,アレンテストが陽性(検者が尺骨動脈と橈骨動脈を同時に圧迫し,続いて交互に圧迫を解除したとき,手が蒼白のままとなる)の場合,本疾患が示唆される。罹患した手,足,指趾では,挙上による蒼白と下垂による発赤がよくみられる。虚血性潰瘍および壊疽は,通常は単一または複数の指趾において,本疾患の早期に発生することもあるが,急性には起こらない。非侵襲的な検査により,罹患した足趾,足,および手指に大幅な血流減少と血圧低下が認められる。

閉塞性血栓血管炎の診断

  • 検査による虚血の他の原因の除外

  • 血管造影

本症は病歴と身体所見から示唆される。以下の場合に診断確定となる:

  • 下肢では足関節上腕血圧比(上肢での収縮期血圧に対する足関節での収縮期血圧の比)から,上肢では分節的血圧測定から,遠位部の虚血が示される

  • 心エコー検査により心臓塞栓が除外される

  • 血液検査(例,抗核抗体,リウマトイド因子,補体,抗セントロメア抗体,抗強皮症[SCL-70]抗体の測定)により血管炎が除外される。

  • 抗リン脂質抗体の検査により抗リン脂質抗体症候群が除外される(ただし,閉塞性血栓血管炎ではわずかに高値となる可能性がある)。

  • 血管造影で特徴的所見が認められる(手足の遠位動脈の分節的閉塞,閉塞部周辺にみられる蛇行したコルク栓抜き状の側副血管,アテローム性動脈硬化がない)

閉塞性血栓血管炎の治療

  • 禁煙

  • 局所的な処置

  • ときに薬物療法

その他の対策として以下のものがある:

  • 寒冷を避ける

  • 血管収縮を引き起こす薬剤を避ける

  • 熱傷,化学損傷,および機械的損傷(特に合っていない履き物による損傷)を避ける

禁煙の第一段階にある患者には,イロプロストを0.5~3ng/kg/分で6時間かけて静注する方法が肢切断の予防に役立つ可能性がある。ペントキシフィリン,カルシウム拮抗薬,およびトロンボキサン阻害薬の投与を経験的に試みてもよいが,これらの薬剤の使用を支持するデータはない。抗内皮細胞抗体測定を利用した疾患経過のフォローアップが研究されている。これらの治療選択肢が無効に終わった場合は,足関節上腕血圧比が0.35以上で糖尿病のない患者の約70%では,腰部交感神経の化学的アブレーションまたは外科的交感神経切除術により,虚血性疼痛を軽減し,潰瘍の治癒を促進することが可能である。

閉塞性血栓血管炎の要点

  • 閉塞性血栓血管炎は,四肢遠位部の小型および中型の動脈やときに表在静脈に生じる炎症性血栓症である。

  • ほぼ例外なく20~40歳の男性喫煙者で発生する。

  • 跛行がみられることがあり,また単一または複数の指趾に虚血性潰瘍および壊疽が生じることもある。

  • 診断は臨床的に行うが,虚血の他の原因を検査によって除外する。

  • 禁煙が必須であり,イロプロストの点滴が肢切断を回避する上で有用となりうるが,これ以外の薬剤の使用を支持するエビデンスはほとんどない。

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