レイノー症候群

執筆者:Koon K. Teo, MBBCh, PhD, McMaster University
レビュー/改訂 2019年 7月
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レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮で,単一または複数の手指に可逆的な不快感および変色(蒼白,チアノーゼ,紅斑,またはこれらの組合せ)がみられる。ときに,他の先端部位(例,鼻,舌)で発生することもある。この病態には,原発性のものと続発性のものがある。診断は臨床的に行い,検査では原発性と続発性の鑑別に焦点を置く。合併症のない症例の治療法としては,寒冷刺激の回避,バイオフィードバック,禁煙,必要に応じた血管拡張性カルシウム拮抗薬(例,ニフェジピン)またはプラゾシンの投与などがある。

全体での有病率は約3~5%であり,男性より女性で多く,高齢者より若年層でより多くみられる。レイノー症候群はおそらく,血管攣縮を誘発する過剰なα2アドレナリン作動性反応に起因すると考えられるが,その機序は明らかにされていない。

原発性レイノー症候群は,続発性よりもはるかに頻度が高く(症例の80%超),他疾患の症状または徴候を伴わずに発生する。レイノー症候群患者の残り20%は,原因となる基礎疾患(例,全身性強皮症)が最初の受診時に明らかであるか,その後に診断される。

続発性レイノー症候群は様々な疾患や病態に伴って発生するが,その大部分は結合組織疾患である(続発性レイノー症候群の原因の表を参照)。

表&コラム

ニコチンが続発性レイノー症候群に寄与していることが多いが,しばしば見落とされる。レイノー症候群は片頭痛異型狭心症肺高血圧症を伴うことがあり,これらの疾患が血管攣縮の機序を共有していることが示唆される。

レイノー症候群の症状と徴候

寒冷,精神的ストレス,または振動への曝露によって,単一または複数の手指に冷感,灼熱痛,錯感覚,間欠的な変色が引き起こされる。いずれも刺激を除去することで回復可能である。手を復温することで,正常な色と感覚の回復が早まる。

色の変化は手指上で明確な境界を示す。3段階(蒼白,続いてチアノーゼ,そして復温後に反応性充血による紅斑)の場合と2段階(チアノーゼ,紅斑),1段階(蒼白またはチアノーゼのみ)の場合がある。変化はしばしば対称性である。レイノー症候群は中手指節関節より近位では起こらず,最も一般的には中央の3本の指に出現し,まれに母指に出現する。血管攣縮は数分から数時間持続するが,原発性レイノー症候群では組織破壊をもたらすほど重度となることはまれである。

結合組織疾患に続発したレイノー症候群は,疼痛を伴う手指の壊疽へと進行することがあり,全身性強皮症に続発したレイノー症候群では,指尖部に極度の疼痛を伴う感染性潰瘍が生じる傾向がある。

レイノー症候群の臨床像
チアノーゼを伴うレイノー症候群
チアノーゼを伴うレイノー症候群
複数の指先にチアノーゼを認める。

© Springer Science+Business Media

蒼白を伴うレイノー症候群
蒼白を伴うレイノー症候群
手指に蒼白が不規則に生じている。

© Springer Science+Business Media

手指の壊疽を伴うレイノー症候群
手指の壊疽を伴うレイノー症候群
全身性強皮症にレイノー症候群が続発した本症例では,第2指に潰瘍および壊死が生じている。

© Springer Science+Business Media

レイノー症候群の診断

  • 臨床基準

  • 基礎疾患に対する診察および検査

レイノー症候群自体は臨床的に診断される。肢端チアノーゼでも寒冷刺激に反応して指趾の変色が生じるが,肢端チアノーゼは持続的で容易には回復せず,また栄養障害性変化,潰瘍,疼痛を引き起こさない点でレイノー症候群とは異なる。

原発性か続発性かの鑑別は臨床的に判断し,血管の臨床検査および血液検査により裏付けられる。

臨床所見

原因疾患の同定に焦点を置いた徹底的な病歴聴取と身体診察が参考になるが,これらで原因疾患の診断が得られるのはまれである。

原発性レイノー症候群を示唆する所見としては以下のものがある:

  • 発症年齢が40歳未満である(全症例の3分の2)

  • 両手に左右対称な軽度の発作が発生する

  • 組織壊死や壊疽を認めない

  • 他の原因を示唆する既往歴や身体所見がない

続発性レイノー症候群を示唆する所見としては以下のものがある:

  • 発症年齢が30歳以上である

  • 疼痛を伴う重度の発作が発生し,左右非対称で片側性のことがある

  • 虚血性病変を認める

  • 併存疾患を示唆する既往歴および所見がある

臨床検査

血管の臨床検査には指の脈波の形態および圧の評価が含まれる。

主な血液検査は,膠原病性血管疾患を診断する目的で行う(例,赤血球沈降速度[赤沈]またはC反応性タンパク[CRP]の測定,抗核抗体および抗DNA抗体,リウマトイド因子,抗セントロメア抗体,抗環状シトルリン化ペプチド[CCP]抗体,抗強皮症[SCL] 70抗体)。

レイノー症候群の治療

  • 誘因の回避

  • 禁煙

  • カルシウム拮抗薬またはプラゾシン

原発型の治療では,寒冷刺激の回避,禁煙,およびストレスが誘因の場合はリラクゼーション法(例,バイオフィードバック)またはカウンセリングを行う。利便性の良さから,行動療法より薬剤の方が多く用いられる。血管拡張性カルシウム拮抗薬(例,ニフェジピン徐放錠60~90mg,経口,1日1回,アムロジピン5~20mg,経口,1日1回,フェロジピン2.5~10mg,経口,1日2回,またはイスラジピン2.5~5mg,経口,1日2回)が最も効果的であり,プラゾシン1~5mg,経口,1日1回または1日2回がこれに続く。ニトログリセリンの外用軟膏,ペントキシフィリン400mg,経口,1日2回または1日3回を食事とともに投与,あるいはその両方が効果的となりうるが,ルーチンの使用を支持するエビデンスはない。β遮断薬,クロニジン,および麦角製剤は,血管収縮を惹起して症状を誘発ないし悪化させる可能性があるため,禁忌である。

続発型の治療では,基礎疾患に焦点を置く。カルシウム拮抗薬またはプラゾシンも適応となる。虚血性潰瘍の治療には,抗菌薬および鎮痛薬,またときに外科的デブリドマンが必要となることがある。低用量アスピリンで血栓症を予防できるが,理論的にはプロスタグランジン阻害から血管攣縮を悪化させる可能性がある。プロスタグランジン系薬剤(アルプロスタジル,エポプロステノール,イロプロスト)の静注が効果的なようであり,指の虚血がみられる患者で選択肢となりうる。しかしながら,この種の薬剤は広く利用可能にはなっておらず,その役割はまだ明確でない。

頸部または局所の交感神経切除術については議論があり,基礎疾患の治療を含めた他のあらゆる手段が奏効しない進行性の患者にのみ施行される。交感神経切除術はしばしば症状を消失させるが,改善は1~2年しか持続しないことがある。

レイノー症候群の要点

  • レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮である。

  • レイノー症候群は原発性の場合と,他の疾患(典型的には結合組織を侵す疾患)に伴う続発性の場合がある。

  • 原発性レイノー症候群は,続発性のものとは異なり,壊疽や組織の喪失につながることはまれである。

  • 診断は臨床的に行うが,疑われる原因を診断するために検査を考慮する。

  • 寒冷刺激,喫煙,その他あらゆる誘因を回避する。

  • 血管拡張性カルシウム拮抗薬またはプラゾシンを投与する。

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