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C型肝炎,急性

執筆者:

Sonal Kumar

, MD, MPH, Weill Cornell Medical College

レビュー/改訂 2020年 12月
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C型肝炎は,しばしば血液感染するRNAウイルスによって引き起こされる。ときに食欲不振や倦怠感,黄疸などのウイルス性肝炎の典型症状を引き起こすが,無症状のこともある。まれに劇症肝炎や死に至る。約75%で慢性肝炎となり,肝硬変やまれに肝細胞癌に至ることもある。診断は血清学的検査による。治療は抗ウイルス薬による。利用可能なワクチンはない。

肝炎の原因 肝炎の原因 肝炎とは,びまん性または斑状の壊死を特徴とする肝臓の炎症である。 肝炎には急性の場合と慢性(通常は6カ月以上続く場合と定義される)の場合がある。 急性ウイルス性肝炎は,ほとんどの症例で自然に消失するが, 慢性肝炎に進行する場合もある。 肝炎の一般的な原因としては以下のものがある:... さらに読む 急性肝炎の概要 急性ウイルス性肝炎の概要 急性ウイルス性肝炎は,多様な伝播様式と疫学的性質を有する一群の肝親和性ウイルスによって引き起こされる,肝臓のびまん性炎症である。ウイルス感染による非特異的な前駆症状に続いて,食欲不振,悪心,しばしば発熱または右上腹部痛がみられる。黄疸がしばしばがみられ,典型的には他の症状が消失し始める頃に発生する。ほとんどの症例で自然消失するが,慢性肝炎に進行する場合もある。ときに,急性ウイルス性肝炎から急性肝不全に進行する(劇症肝炎を示唆する)。診断... さらに読む ,および C型慢性肝炎 C型肝炎,慢性 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む も参照のこと。)

C型肝炎ウイルス(HCV)は, 急性ウイルス性肝炎 急性ウイルス性肝炎の概要 急性ウイルス性肝炎は,多様な伝播様式と疫学的性質を有する一群の肝親和性ウイルスによって引き起こされる,肝臓のびまん性炎症である。ウイルス感染による非特異的な前駆症状に続いて,食欲不振,悪心,しばしば発熱または右上腹部痛がみられる。黄疸がしばしばがみられ,典型的には他の症状が消失し始める頃に発生する。ほとんどの症例で自然消失するが,慢性肝炎に進行する場合もある。ときに,急性ウイルス性肝炎から急性肝不全に進行する(劇症肝炎を示唆する)。診断... さらに読む を引き起こすフラビウイルス(一本鎖RNAウイルス)であり, 慢性ウイルス性肝炎 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は肝炎が6カ月以上続く場合をいう。一般的な原因としては,B型およびC型肝炎ウイルス,非アルコール性脂肪肝炎(NASH),アルコール性肝疾患,自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎)などがある。多くの患者では急性肝炎の病歴がなく,最初の徴候は無症候性のアミノトランスフェラーゼ高値である。受診時から肝硬変やその合併症(例,門脈圧亢進症)がみられる場合もある。確定診断とグレードおよび病期の判定のために,ときに生検が必要となる。治療は合併症と... さらに読む の一般的な原因の1つである。HCVには主要な亜型が6つ存在し,それぞれ異なるアミノ酸配列を有し(ゲノタイプ),地域により頻度が異なり,病原性や治療に対する反応性も異なる。HCVはまた,時間の経過とともに感染者の体中でそのアミノ酸配列を変化させ,亜種を生み出す。

HCV感染症は,ときに以下のような特定の全身性疾患と同時にみられることがある:

機序は不明である。

アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8... さらに読む アルコール性肝疾患 患者の最大20%がHCVを保有している。アルコール使用と薬物使用の併存例は症例全体のごく一部であることから,この高い関連性の理由は不明である。これらの患者では,HCVとアルコールが肝臓の炎症および線維化を相乗的に悪化させる。

C型肝炎の伝播

感染経路としては血液感染の頻度が最も高く,主に静注薬物使用者が注射針を共有する際に起こるが,滅菌されていない器具による刺青やボディーピアスを介して感染することもある。

C型肝炎の性感染および母親から乳児への垂直感染は比較的まれである。

献血血液のスクリーニング検査が開始されて以来,輸血を介したC型肝炎の感染は極めてまれになった。

明確な危険因子のない患者での散発例もみられる。

HCVの保有率は,地域をはじめとする危険因子により異なる。

総論の参考文献

  • 1.CDC: Hepatitis C questions and answers for health professionals.Accessed 11/29/20.

C型急性肝炎の症状と徴候

HCVは慢性化率が最も高い(約75%)。結果として生じる C型慢性肝炎 C型肝炎,慢性 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む は,通常は無症状または良性であり,20~30%の患者では 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む に進行するが,肝硬変の出現までにはしばしば数十年を要する。HCVによる肝硬変の結果として 肝細胞癌 肝細胞癌 肝細胞癌は通常,肝硬変患者に発生し,B型およびC型肝炎ウイルス感染症の有病率が高い地域ではよくみられる。症状と徴候は通常,非特異的である。診断はα-フェトプロテイン(AFP)値と画像検査のほか,ときに肝生検に基づく。高リスク患者には,定期的なAFPの測定および超音波検査によるスクリーニングがときに推奨される。がんが進行した場合または肝合成能が低下した場合の予後は不良であるが,肝臓に限局した小さな腫瘍であれば,アブレーション治療で症状を緩... さらに読む が生じうるが,肝硬変のない慢性感染による肝細胞癌の発生はまれである(B型肝炎とは異なる)。

C型急性肝炎の診断

  • 血清学的検査

  • HCV RNAの測定

急性ウイルス性肝炎が疑われる場合は,以下の検査によってA型,B型,C型肝炎ウイルスのスクリーニングを行う:

  • A型肝炎ウイルスに対するIgM抗体(IgM-HAV抗体)

  • B型肝炎表面抗原(HBs抗原)

  • B型肝炎ウイルスコアに対するIgM抗体(IgM-HBc抗体)

  • C型肝炎ウイルスに対する抗体(HCV抗体)およびHCV RNA

HCV抗体の検査で陽性と判定された場合は,C型肝炎の活動性感染を過去の感染と鑑別するためにHCV-RNAを測定する(C型肝炎の血清学的検査 C型肝炎の血清学的検査 C型肝炎の血清学的検査 の表を参照)。

C型肝炎では,血清HCV抗体の測定値から,その感染が慢性か,過去のものか,急性かが判断できるが,この抗体に防御能はない。不明確な症例やC型肝炎の疑いが強い場合では,HCV-RNAを測定する。HCV抗体は,通常は急性感染期の2週間以内に出現するが,ときに遅れる場合もある一方,HCV-RNAはより速やかに陽性化する。

その他の検査

以前に施行されていなければ,肝機能検査が必要であり,検査項目には血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アルカリホスファターゼ,およびビリルビンを含める。

肝機能と重症度を評価するために,血清アルブミン,ビリルビン,血小板数,プロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)などの他の検査を行うべきである。

C型急性肝炎の治療

  • 抗ウイルス療法

C型肝炎については,非常に効果的な 直接作用型抗ウイルス薬 HCV治療の概要 (DAA)がいくつかあり,慢性感染に移行する可能性を低減できる可能性がある。現時点では,急性HCV感染症の初回診断後に自然治癒を待たずに治療を開始することが推奨されている。

アルコールおよび肝毒性のある薬剤(例,アセトアミノフェン)は肝傷害を悪化させることから,飲酒は控えるべきである。一般的に指示される床上安静を含めた食事や活動の制限には,科学的根拠がない。

ウイルス性肝炎は,地域または州の保健局に報告すべきである。

治療に関する参考文献

C型急性肝炎の予防

高リスク行動(例,薬物注射針の共用,刺青およびボディーピアス)を控えるよう患者を指導すべきである。

血液を始めとする体液(例,唾液,精液)は感染性があるとみなす。注射針への1回の曝露後の感染リスクは約1.8%である。バリアによる感染防御が推奨されるが,患者の隔離はC型急性肝炎の予防には全く効果がない。

HCVに感染した医療従事者からの感染リスクは低いようであり,C型肝炎に感染した医療従事者の行動を制限するCDCの勧告はない。

輸血後感染は,不要な輸血を避けることや,全てのドナーについてB型およびC型肝炎のスクリーニングを行うことによって,最小限に抑えることができる。スクリーニングの実施により,輸血後B型およびC型肝炎の発生率は低下しており,現在の米国では極めてまれとなっている。

HCVの免疫学的予防に使用できる製品は存在しない。HCVでは,ゲノムが変化しやすい性質がワクチン開発の妨げになっている。

抗ウイルス療法による曝露前および曝露後予防は推奨されない。

C型急性肝炎の要点

  • C型肝炎は通常,汚染された血液との接触により感染し,他の体液の粘膜接触や感染した母親からの周産期感染はまれである。

  • C型急性肝炎患者の約75%がC型慢性肝炎に移行し,そのうち20~30%が肝硬変に進行し,肝硬変患者の一部は肝細胞癌を発症する。

  • HCV抗体およびHCV RNAの検査により診断する。

  • C型肝炎の初回診断後には,自然治癒を待つことなく,抗ウイルス薬で治療する。

  • C型肝炎に対するワクチンはない。

C型急性肝炎についてのより詳細な情報

  • CDC: Hepatitis C questions and answers for health professionals: This web site provides an overview of hepatitis C (including definitions, statistics, risk factors, and complications) and information about transmission, symptoms, diagnosis, and treatment, as well as hepatitis C and pregnancy.Accessed 11/29/20.

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