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下痢

執筆者:

Jonathan Gotfried

, MD, Lewis Katz School of Medicine at Temple University

最終査読/改訂年月 2020年 3月
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便の60~90%は水分である。欧米では,便の量は健康な成人で100~200g/日,乳児で10g/kg/日で,非吸収性食物(主に炭水化物)の量によって異なる。下痢は,排便量が1日当たり200gを超える場合と定義される。しかしながら,多くの人は便の流動性が高まることを下痢と考えている。これに対して,食物繊維を摂取した多くの人が体積の大きな有形の便を出すが,それを下痢とみなすことはない。

(Professional.See also page 吸収不良の概要 吸収不良の概要 吸収不良とは,食物中の物質が十分に同化されない状態であり,消化,吸収,または輸送の障害に起因する。 吸収不良は,多量栄養素(例,タンパク質,炭水化物,脂肪),微量栄養素(例,ビタミン,ミネラル),またはその両方に影響を及ぼすことがあり,結果として便中への過剰排泄,栄養欠乏,および消化管症状が起こる。吸収不良は,ほぼ全ての栄養素の吸収障害を... さらに読む およびProfessional.see chapter 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし,クローン病と潰瘍性大腸炎が含まれる。 消化管粘膜における細胞性免疫応答により炎症が生じる。炎症性腸疾患の正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こすこ... さらに読む 小児の下痢 小児の下痢 下痢とは,小児の正常なパターンから逸脱した頻回の軟便または水様便の排出である。 下痢には,食欲不振,嘔吐,急激な体重減少,腹痛,発熱,または血液の排出が伴うことがある。下痢が重症で持続する場合は脱水の可能性が高い。脱水が認められない場合でも,慢性の下痢によって通常体重は減少するか,または増加しなくなる。 下痢は小児で非常によくみられる問題であり,下痢による死亡は世界で1年当たり約150万例である。米国では5歳未満の小児の入院の約9%を占... さらに読む については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。)

下痢の合併症

病因にかかわらず下痢により合併症が起こりうる。体液喪失による脱水,電解質喪失(ナトリウム,カリウム,マグネシウム,塩化物)に加えて,血管虚脱もときに起こる。虚脱は,重症の下痢患者(例,コレラ患者),非常に若い患者,極めて高齢の患者,衰弱した患者では,急速に起こりうる。重炭酸塩の喪失は,代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳酸の蓄積,腎不全,薬物または毒素の摂取(高アニオンギャップ),消化管または腎からのHCO3... さらに読む を引き起こす可能性がある。低カリウム血症 低カリウム血症 低カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/L未満となった状態である。最も頻度の高い原因は腎臓または消化管からの過剰喪失である。臨床的特徴としては筋力低下や多尿などがあり,重度の低カリウム血症では心臓の興奮性亢進が生じることがある。診断は血清学的検査による。治療はカリウム投与および原因の管理である。... さらに読む は,重症または慢性下痢患者,もしくは便に過剰な粘液が含まれている場合に起こりうる。長期下痢後の低マグネシウム血症 低マグネシウム血症 低マグネシウム血症とは,血清マグネシウム濃度が1.8mg/dL(0.70mmol/L)未満となった状態である。原因には,マグネシウムの摂取不足および吸収不足や,高カルシウム血症またはフロセミドなどの薬物による排泄増加がある。臨床的特徴はしばしば随伴する低カリウム血症や低カルシウム血症によるものであり,嗜眠,振戦,テタニー,痙攣,不整脈がある。治療はマグネシウムの補充による。 (マグネシウム濃度の異常の概要も参照のこと。)... さらに読む はテタニーを引き起こしうる。

病因

正常では,小腸と大腸で経口摂取および消化管分泌物に由来する水分の99%が吸収される(1日当たりの全水分負荷量10L中の約9L)。したがって,腸管での水分吸収に少量の減少(例,1%)が生じても,また分泌量が増加しても,下痢を引き起こすのに十分な水分含量の増加につながる。

下痢にはいくつかの原因がある(Professional.see table 下痢の主な原因* 下痢の主な原因* 下痢の主な原因* )。いくつかの基礎的な機序が臨床的に重大な下痢の大半を引き起こしている。最も一般的なものは,浸透圧負荷の上昇,分泌の増加/吸収の減少,および接触時間/表面積の減少の3つである。多くの疾患では,複数の機序が影響を及ぼしている。例えば,炎症性腸疾患 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし,クローン病と潰瘍性大腸炎が含まれる。 消化管粘膜における細胞性免疫応答により炎症が生じる。炎症性腸疾患の正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こすこ... さらに読む でみられる下痢は,粘膜の炎症,壁内への滲出,および腸細胞機能に影響を及ぼす複数の分泌促進物質および細菌毒素によって引き起こされる。

浸透圧負荷

下痢は,非吸収性の水溶性溶質が腸内に残留して水分を貯留させる場合に起こる。そのような溶質としては,ポリエチレングリコール,マグネシウム塩(水酸化マグネシウムおよび硫酸マグネシウム),リン酸ナトリウムなどがあり,これらは緩下薬として使用される。浸透圧性下痢は糖不耐症(例,ラクターゼの欠乏による乳糖不耐症 炭水化物不耐症 炭水化物不耐症は,腸内酵素が少なくとも1つ欠損しているために,特定の炭水化物を消化できない状態である。症状としては下痢,腹部膨隆,鼓腸などがある。診断は臨床所見と水素呼気試験による。治療は原因の二糖類を食事から除去することである。 炭水化物不耐症は吸収不良症候群の一種である。 正常では,二糖類は小腸上皮細胞の刷子縁に存在する二糖類分解酵素(例,ラクターゼ,マルターゼ,イソマルターゼ,スクラーゼ[インベルターゼ])によって単糖類に分解され... さらに読む )で起こる。ヘキシトール(例,ソルビトール,マンニトール,キシリトール)または高果糖コーンシロップは,キャンディー,ガム,およびフルーツジュースに砂糖の代用品として使用されているが,吸収されにくいため,大量に摂取すると浸透圧性下痢が起こる。緩下薬として使用されているラクツロースも同様の機序により下痢を引き起こす。特定の食品(Professional.see table 下痢の主な原因* 下痢の主な原因* 下痢の主な原因* )の過剰摂取によって浸透圧性下痢が起こることがある。

分泌物の増加/吸収の減少

下痢は,腸管の電解質と水分の分泌が吸収を上回った場合に起こる。分泌物増加の原因としては,感染,未吸収の脂肪,特定の薬物,各種の内因性および外因性分泌促進物質などがある。

感染症(例,胃腸炎 胃腸炎 胃腸炎は,胃,小腸,および大腸の粘膜組織に炎症が生じる病態である。大半の症例が感染性胃腸炎であるが,薬剤や化学的毒性物質(例,金属,植物性物質)の摂取後に発生する場合もある。感染は食品,水,またはヒトからヒトの経路を介して成立する。米国では,毎年6人に1人が食中毒にかかると推定されている。症状としては食欲不振,悪心,嘔吐,下痢,腹部不快感... さらに読む )は分泌性下痢の最も一般的な原因である。食中毒を合併した感染症は,急性下痢(持続期間4日未満)の最も一般的な原因である。ほとんどのエンテロトキシンは,小腸および大腸における水分吸収の重要な推進力であるナトリウムとカリウムの交換を阻害する。

薬物は,小腸の分泌を直接(例,キニジン,キニーネ,コルヒチン,アントラキノン系下剤,ヒマシ油,プロスタグランジン)または脂肪吸収を阻害することによって間接的に(例,オルリスタット)刺激する。

様々な内分泌腫瘍が分泌促進物質を産生し,そのような腫瘍としてはVIPoma VIPoma VIPomaは,血管作動性腸管ペプチド(VIP)を分泌する非β膵島細胞腫瘍で,水様性下痢,低カリウム血症,および無酸症を呈する症候群(WDHA症候群)を来す。診断は血清VIP濃度による。腫瘍の局在診断はCTおよび超音波内視鏡検査による。治療は外科的切除である。 VIPomaは,膵島細胞から発生する膵内分泌腫瘍の一種である。これらの腫瘍のうち50~75%は悪性で,診断時に極めて大きい(7cm)ものもある。VIPomaの約6%は,多発性内分... さらに読む (血管作動性腸管ペプチド),ガストリノーマ ガストリノーマ ガストリノーマはガストリン産生腫瘍で,通常膵臓または十二指腸壁に発生する。結果として胃酸の過剰分泌と進行の速い難治性の消化性潰瘍が生じる(ゾリンジャー-エリソン症候群)。診断は血清ガストリン濃度の測定による。治療はプロトンポンプ阻害薬および外科的切除である。 (膵内分泌腫瘍の概要も参照のこと。) ガストリノーマは,膵島細胞から発生する膵内分泌腫瘍の一種であるが,十二指腸および,はるかにまれであるが,体内の他の部位のガストリン産生細胞から... さらに読む (ガストリン),肥満細胞症 肥満細胞症 肥満細胞症は,皮膚または他の組織および器官の肥満細胞浸潤である。症状は主にメディエータ放出に起因し,そう痒,紅潮,胃酸過剰分泌による消化不良などを含む。診断は皮膚もしくは骨髄の生検,またはその両方による。治療は抗ヒスタミン薬の投与,および基礎疾患の制御による。 (アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。) 肥満細胞症は,肥満細胞の増殖,および皮膚,他の器官,またはその両方への浸潤を特徴とする疾患群である。病理は主に,ヒスタ... さらに読む 肥満細胞症 (ヒスタミン),甲状腺髄様癌 甲状腺髄様癌 甲状腺癌は主に4種類がある。大半の甲状腺癌は無症候性の結節として発現する。まれに,小さい甲状腺癌の主症状が,リンパ節,肺,または骨への転移により現れる。診断はしばしば穿刺吸引細胞診によって行われるが,他の検査を要する場合もある。治療は外科的切除により行い,通常はそれに続いて放射性ヨードで残存組織を破壊する。 (甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺癌には主に次の4種類がある: 乳頭癌 濾胞癌 さらに読む カルシトニン,プロスタグランジン),カルチノイド腫瘍 カルチノイド腫瘍の概要 カルチノイド腫瘍は,消化管(90%),膵臓,および肺気管支の神経内分泌細胞から発生する。消化管カルチノイド全体の95%以上が虫垂,回腸,直腸という3カ所から発生する。 カルチノイドはしばしば良性であるか,浸潤性であっても限局的であるが,回腸および気管支を侵すものは悪性であることが多い。... さらに読む (ヒスタミン,セロトニン,ポリペプチド)などがある。これらのメディエータのいくつか(例,プロスタグランジン,セロトニン,関連化合物)も小腸の通過,大腸の通過,またはその両方を促進する。

胆汁酸塩の吸収障害は,いくつかの疾患を引き起こす可能性があり,また,水分および電解質の分泌を刺激することで下痢の原因となりうる。便は緑色またはオレンジ色を呈する。

接触時間/表面積の減少

腸管内容の急速な通過と腸管の表面積の減少は水分の吸収を阻害し,下痢の原因となる。一般的な原因としては,小腸または大腸の切除またはバイパス術,胃切除術,炎症性腸疾患 炎症性腸疾患の概要 炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし,クローン病と潰瘍性大腸炎が含まれる。 消化管粘膜における細胞性免疫応答により炎症が生じる。炎症性腸疾患の正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こすこ... さらに読む などがある。その他の原因としては,顕微鏡的大腸炎(膠原性またはリンパ球性大腸炎)やセリアック病 セリアック病 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失する。 セリアック病は吸収不良を引き起こす疾患である。... さらに読む セリアック病 などがある。甲状腺機能亢進症は,腸管内容の急速な通過による下痢を引き起こすことがある。

薬物による腸管収縮の亢進(例,マグネシウム含有制酸薬,緩下薬,コリンエステラーゼ阻害薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬)または液性因子の投与(例,プロスタグランジン,セロトニン)による刺激も通過を促進する。

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評価

病歴

現病歴の聴取では,下痢の持続期間および重症度,発生の状況(最近の旅行,摂取した食物,水の供給源),薬物の使用(過去3カ月以内の抗菌薬の使用を含む),腹痛または嘔吐,排便の回数およびタイミング,便の特徴の変化(例,血液,膿,または粘液の存在,色または硬さの変化,脂肪便の所見),関連する体重または食欲の変化,および便意切迫またはしぶり腹について確認すべきである。濃厚な接触者における下痢の同時発生について確認すべきである。下痢を引き起こす可能性がある薬剤に変更がなかったかを具体的に尋ねるべきである。

システムレビュー(review of systems)では,考えられる原因を示唆する症状がないか検討すべきであり,具体的には関節痛(炎症性腸疾患,セリアック病),紅潮(カルチノイド,VIPoma,肥満細胞症),慢性腹痛(過敏性腸症候群,炎症性腸疾患,ガストリノーマ),消化管出血(潰瘍性大腸炎,腫瘍)などがある。

既往歴の聴取では,下痢の既知の危険因子を同定すべきであり,具体的には炎症性腸疾患,過敏性腸症候群,HIV感染症,消化管手術の既往(例,腸管または胃のバイパス術または切除,膵切除術)などがある。家族歴および社会歴の聴取では,濃厚な接触者における下痢の同時発生について尋ねるべきである。

身体診察

体液および水分補給の状態を評価すべきである。腹部に焦点を置いた全身の診察,括約筋の機能を調べる直腸指診,便潜血検査が重要である。

警戒すべき事項(Red Flag)

特定の所見を認める場合には,下痢の病因として器質的な病態や重篤な病態の疑いが高まる:

  • 便中の血液または膿

  • 発熱

  • 脱水の徴候

  • 慢性下痢

  • 体重減少

所見の解釈

その他の点では健康な人における急性の水様性下痢は,感染性の病因である可能性が高く,特に旅行(おそらく汚染された食物),または発生源が1点のアウトブレイクが関与する場合にその可能性が高い。

緑色またはオレンジ色の便を伴う下痢は,胆汁酸塩の吸収障害を示唆する。

腸管の罹患部位を同定するのに,症状が参考になる場合がある。一般に,小腸疾患では,便は多量で,水様便または脂肪便である。大腸疾患では,排便回数が多く,便の量はときに少なく,場合によっては血液,粘液,膿,腹部不快感を伴う。

過敏性腸症候群 過敏性腸症候群(IBS) 過敏性腸症候群は,繰り返す腹部不快感または腹痛を特徴とし,さらに排便との関連性,排便頻度の変化との関連性,または便の硬さの変化との関連性という特徴のうち少なくとも2つが認められる。原因は不明であり,病態生理も完全には解明されていない。診断は臨床的に行う。治療は対症療法であり,食事管理と薬剤投与(抗コリン薬やセロトニン受容体に作用する薬剤な... さらに読む (IBS)では,腹痛に排便との関連がみられ,排便回数,便の硬さ,またはその両方の変化を伴っている。しかしながら,これらの症状だけではIBSを他の疾患(例,炎症性腸疾患)と鑑別できない。機能性下痢は,診断の6カ月以上前に発症して,直近の3カ月間持続している軟便または水様便を特徴とする。患者はIBSの基準を満たさず,腹痛および/または腹部膨満を呈することがあるが,これらは主要な症状ではない(1 評価に関する参考文献 便の60~90%は水分である。欧米では,便の量は健康な成人で100~200g/日,乳児で10g/kg/日で,非吸収性食物(主に炭水化物)の量によって異なる。下痢は,排便量が1日当たり200gを超える場合と定義される。しかしながら,多くの人は便の流動性が高まることを下痢と考えている。これに対して,食物繊維を摂取した多くの人が体積の大きな有形の便を出すが,それを下痢とみなすことはない。... さらに読む )。ときに急性腸管感染症の後に,下痢を伴うIBSが発生することがある(感染後IBS)。

病因を示唆する腹部以外の所見として,皮膚病変または紅潮(肥満細胞症 肥満細胞症 肥満細胞症は,皮膚または他の組織および器官の肥満細胞浸潤である。症状は主にメディエータ放出に起因し,そう痒,紅潮,胃酸過剰分泌による消化不良などを含む。診断は皮膚もしくは骨髄の生検,またはその両方による。治療は抗ヒスタミン薬の投与,および基礎疾患の制御による。 (アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。) 肥満細胞症は,肥満細胞の増殖,および皮膚,他の器官,またはその両方への浸潤を特徴とする疾患群である。病理は主に,ヒスタ... さらに読む 肥満細胞症 ),甲状腺結節(甲状腺髄様癌 甲状腺髄様癌 甲状腺癌は主に4種類がある。大半の甲状腺癌は無症候性の結節として発現する。まれに,小さい甲状腺癌の主症状が,リンパ節,肺,または骨への転移により現れる。診断はしばしば穿刺吸引細胞診によって行われるが,他の検査を要する場合もある。治療は外科的切除により行い,通常はそれに続いて放射性ヨードで残存組織を破壊する。 (甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺癌には主に次の4種類がある: 乳頭癌 濾胞癌 さらに読む ),右心雑音(カルチノイド),リンパ節腫脹(リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫は,網内系およびリンパ系から発生する不均一な一群の腫瘍である。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫(NHL)に大別される(Professional.see table ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の比較)。 リンパ腫はかつて,白血病とは全く異なる疾患と考えられていた。しかし現在では,細胞マーカーとそれらのマーカーを評価する... さらに読む AIDS ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ),関節炎(炎症性腸疾患,セリアック病 セリアック病 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失する。 セリアック病は吸収不良を引き起こす疾患である。... さらに読む セリアック病 )などがある。

検査

急性下痢(4日未満)は典型的には検査を必要としない。例外は,脱水の徴候,血便,発熱,重度の疼痛,低血圧,または毒性の特徴を有する患者,特に非常に若い患者または非常に高齢の患者である。これらの患者では,血算と電解質,血中尿素窒素,およびクレアチニンの測定を行うべきである。鏡検および培養のために,また抗菌薬を最近使用していた場合はC. difficile毒素検査用として,便検体を採取すべきである。

慢性下痢(4週間を超える)の場合,またはこれより短期間(1~3週間)の下痢でも易感染性患者または顕著に重度の様相を呈する患者では,評価を行う必要がある。診断のための評価は,可能であれば病歴聴取と身体診察の結果を参考にすべきである。このアプローチで診断も方向性も得られない場合は,より広範なアプローチが必要である。最初の検査には,便潜血,脂肪(ズダン染色または便中エラスターゼによる),電解質(便の浸透圧ギャップを算出するため),およびジアルジア(Giardia)抗原またはポリメラーゼ連鎖反応検査;血算と白血球分画;セリアック病の血清学的検査(IgA組織トランスグルタミナーゼ);甲状腺刺激ホルモン(TSH)および遊離サイロキシン(T4);ならびに便中カルプロテクチンまたは便中ラクトフェリン(炎症性腸疾患[IBD]のスクリーニングのため)を含めるべきである。機能性下痢および下痢型IBS(IBS-D)の臨床検査評価に関するAmerican Gastroenterological Associationの2019年版ガイドラインでは,IBDに対する感度を最適化するために,便中カルプロテクチンの閾値を50μg/g,便中ラクトフェリンの範囲を4.0~7.25μg/gとすることが推奨されている。高リスク地域への最近の旅行歴がある患者と高リスク地域から最近移住してきた患者には,寄生虫の虫卵および虫体を検索するための顕微鏡検査を行うべきである。最近抗菌薬を使用した患者とC. difficile感染症が疑われる患者では,C. difficileに対する便検査を行うべきである。続いて,炎症の原因を検索するために,S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査と生検を行うべきである。

診断が不明で,ズダン染色または便中エラスターゼで脂肪陽性と判定された場合は,便中脂肪排泄量を測定し,続いてCT小腸造影(器質的疾患),および小腸内視鏡検査による生検(粘膜疾患)を行うべきである。評価で依然として陰性所見が確認される場合は,原因不明の脂肪便を呈する患者に対して膵臓の構造および機能の評価(Professional.see page 臨床検査 臨床検査 急性膵炎は,膵臓(および,ときに隣接組織)の急性炎症である。最も頻度が高い誘因は胆石および飲酒である。急性膵炎の重症度は,局所合併症および一過性または持続性の臓器不全の有無に基づいて,軽症,中等症,重症に区分される。診断は臨床像,血清アミラーゼおよびリパーゼ値,ならびに画像検査に基づく。治療は支持療法であり,輸液,鎮痛薬,栄養サポートを行う。急性膵炎の全死亡率は低いが,重症例における罹患率および死亡率はかなり高い。... さらに読む  臨床検査 )を考慮する必要がある。まれに,カプセル内視鏡検査で,他の診断法では同定できなかった病変,主にクローン病または非ステロイド系抗炎症薬による腸症の病変を発見することがある。

便の浸透圧ギャップは,290 2 ×(便中ナトリウム + 便中カリウム)という数式で計算され,下痢が分泌性か浸透圧性かを示す。浸透圧ギャップが50mEq/L未満の場合は分泌性下痢,それよりも大きなギャップは浸透圧性下痢であることが示唆される。浸透圧性下痢患者では,マグネシウム緩下薬の隠れた摂取(便中マグネシウム濃度によって検出可能)または炭水化物吸収不良(水素呼気試験,ラクターゼアッセイ,食事のレビューによって診断)を有している可能性がある。

診断未確定の分泌性下痢は,内分泌に関連した原因を調べる検査(例,血漿ガストリン,カルシトニン,血管作動性腸管ペプチド濃度,ヒスタミン,尿中5-ヒドロキシインドール酢酸[5-HIAA])を行う必要がある。副腎機能不全の症状の評価を行うべきである。密かに下剤を乱用している可能性も考慮しなければならず,これは便の緩下薬の測定で除外できる。

評価に関する参考文献

治療

  • 脱水に対して水分および電解質

  • 全身毒性を認めない非血性下痢の患者にはときに止瀉薬

重度の下痢では,脱水,電解質平衡異常,アシドーシスを是正するために,輸液および電解質の補給を行う必要がある。一般に,塩化ナトリウム,塩化カリウム,ブドウ糖含有の輸液が必要である。血清重炭酸濃度が15mEq/L(15mmol/L)未満の場合は,アシドーシスを是正する塩(乳酸ナトリウム,酢酸,重炭酸塩)の投与が適応となりうる。下痢が重度でなく,悪心および嘔吐がほとんどない場合は,ブドウ糖電解質液を経口投与できる(Professional.see page 溶液 溶液 経口補液療法は,静注療法に比べて効果的で安全,便利,かつ安価である。経口補液療法は米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)およびWHOにより推奨されており,軽度から中等度の脱水のある経口摂取が可能な小児では,頻回の嘔吐または基礎疾患(例,急性腹症,腸閉塞)によって不可能でなければ,経口補液療法を用いるべきである。 (小児における脱水も参照のこと。)... さらに読む )。水分と電解質を大量に補給する必要がある場合(例,コレラ)には,ときに経口補液と輸液が同時に投与される。

下痢は症状である。可能であれば,基礎疾患を治療すべきであるが,しばしば対症療法が必要になる。下痢は経口ロペラミド2~4mg,1日3回もしくは1日4回(食事前30分の投与が望ましい),ジフェノキシラート(diphenoxylate)2.5~5mg(錠剤または液剤),1日3回もしくは1日4回,経口リン酸コデイン15~30mg,1日2回もしくは1日3回,またはパレゴリック(樟脳アヘンチンキ)経口液5~10mL,1日1回~1日4回の投与により緩和することがある。

止瀉薬の使用によって,C. difficile大腸炎の悪化や,志賀(Shiga)毒素産生性大腸菌(Escherichia coli)感染症での溶血性尿毒症症候群の可能性増大がもたらされる恐れがあるため,原因不明の血性下痢に対して止瀉薬を使用してはならない。止瀉薬は全身毒性の徴候が認められない水様性下痢患者に限定して使用すべきである。一方,かつて懸念されていた止瀉薬による病原細菌の排泄期間の延長については,それを正当化するだけのエビデンスはほとんどない。

オオバコまたはメチルセルロース化合物は便の容量を増加させる。膨張性下剤は,通常,便秘に対して処方されるが,少量では液状便の流動性を低下させる。カオリン,ペクチン,および活性アタパルジャイトは液体を吸着する。浸透圧に影響を及ぼす食物中の物質(Professional.see table 下痢を悪化させることがある食事性因子 下痢を悪化させることがある食事性因子 下痢を悪化させることがある食事性因子 )および刺激性薬物は避けるべきである。

μオピオイド受容体作動薬の作用とδオピオイド受容体拮抗薬の作用を有するeluxadolineは,IBSに関連した下痢の治療に使用できる。用量は100mg,1日2回(100mgで耐えられない場合は75mg,1日2回)である。胆嚢摘出術の既往がある患者に使用してはならない。

要点

  • 急性下痢の患者については,症状が遷延している(すなわち1週間以上続いている)か,レッドフラグサインがあるか,非常に若年であるか,非常に高齢である患者にのみ検査が必要となる。

  • C. difficile大腸炎,サルモネラ(Salmonella)感染症,または細菌性赤痢の可能性がある場合,止瀉薬は慎重に使用する。

  • 急性感染性腸炎後に患者の10%で感染後過敏性腸症候群が発生する。

より詳細な情報

  • 成人における機能性下痢および下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)の臨床検査評価に関するAmerican Gastroenterological Associationのガイドライン

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