(急性腹痛 急性腹痛 腹痛はよくみられる症状であり,重要ではない場合も多い。しかしながら,急性および重度の腹痛はほぼ常に腹腔内疾患の症状である。手術の必要性に関する唯一の指標である場合もあり,迅速な対処が必要である:特定の疾患では症状出現から6時間未満で 腸管の壊疽および穿孔が起こりうる(例,絞扼性閉塞または動脈塞栓による腸管への血液供給阻害)。腹痛は,非常に... さらに読む も参照のこと。)
病因
鈍的外傷と穿通性外傷のいずれによっても,消化管各部の穿孔がもたらされる可能性がある(消化管穿孔の主な原因 消化管穿孔の主な原因 の表を参照)。嚥下された異物は,たとえ鋭い物であっても,それが篏入して,局所の圧迫により虚血および壊死を引き起こさない限り,穿孔を引き起こすことはまれである( Professional.see page 消化管異物の概要 消化管異物の概要 様々な異物が意図的または誤って消化管に入り込むことがある。多くの異物は自然に消化管を通過するが,途中で詰まることで閉塞症状のほか,ときに合併症を引き起こすものもある。異物摂取の管理における画像診断の役割は標準化されていない。詰まった物はほぼ全て内視鏡検査で摘出可能であるが,ときに外科手術が必要になる場合もある。内視鏡検査のタイミングは摂取... さらに読む
)。肛門から挿入された異物によって直腸またはS状結腸が穿孔することがある(直腸異物 直腸異物 直腸異物は,通常は直腸に挿入された異物であるが,嚥下した異物である可能性もある。異物が肛門直腸壁を穿通することによって,排便中に突然,極めて激しい痛みが生じることがある。診断は指診のほか,ときに画像検査による。直腸異物の摘出は大きなリスクを伴う場合があるため,異物の摘出に熟練した外科医または消化器専門医が行うべきである。 ( 消化管異物の概要も参照のこと。) 胆石,糞石,嚥下された異物(爪楊枝,鶏の骨,魚の骨など)が肛門直腸移行部に嵌頓... さらに読む を参照)。
症状と徴候
食道,胃,十二指腸穿孔は突然かつ激烈に発症する傾向があり,重度かつ汎発性の腹痛,圧痛,および 腹膜刺激徴候 腹膜炎 腹痛はよくみられる症状であり,重要ではない場合も多い。しかしながら,急性および重度の腹痛はほぼ常に腹腔内疾患の症状である。手術の必要性に関する唯一の指標である場合もあり,迅速な対処が必要である:特定の疾患では症状出現から6時間未満で 腸管の壊疽および穿孔が起こりうる(例,絞扼性閉塞または動脈塞栓による腸管への血液供給阻害)。腹痛は,非常に... さらに読む を伴った急性腹症が突然発生する。疼痛は肩に放散することがある。
消化管の他の部位の穿孔は,疼痛と炎症を伴う他の病態においてしばしば発生する。そのような穿孔は最初しばしば小さく,大網で被覆されていることが多いため,疼痛はしばしば徐々に出現し,局所的な可能性がある。圧痛もより限局的である。これらの所見から,穿孔と基礎疾患の悪化または治療に対する反応欠如の鑑別が困難になる可能性がある。
いずれの種類の穿孔でも,悪心,嘔吐,食欲不振が高頻度にみられる。腸音は減弱または消失している。
診断
一連の腹部X線検査
診断がつかない場合は,腹部CT
一連の腹部X線検査(仰臥位および立位腹部X線ならびに胸部X線)が診断に有用なことがあり,症例の50~75%において横隔膜下に遊離ガスが認められる。この徴候の頻度は時間の経過とともに増加する。側面の胸部X線は後前方のX線よりも遊離ガスに対する感度が高い。
一連の腹部X線検査が診断の決め手とならない場合は,通常は経口,静注,および/または直腸造影剤を用いた腹部CTが役立つことがある。穿孔が疑われる場合は,バリウムを使用してはならない。
治療
手術
輸液および抗菌薬の静注
腹膜炎による死亡率は治療が遅れるほど急激に上昇するため,穿孔に気づいた場合は直ちに手術を行う必要がある。膿瘍または炎症性腫瘤の形成が認められた場合は,処置は膿瘍のドレナージに限られる可能性がある。
ときに,手術前に経鼻胃管を挿入する。体液量減少の徴候が認められる患者では,カテーテルを用いて尿量をモニタリングすべきである。十分な輸液および電解質補給によって体液状態を維持する。腸内細菌叢に効果を示す抗菌薬を静脈内投与すべきである(例,セフォテタン1~2g,1日2回,またはアミカシン5mg/kg,1日3回 + クリンダマイシン600~900mg,1日4回)。
要点
疼痛は突然で,直後に腹膜炎およびショックの徴候が続く。
単純X線および/またはCTによる画像検査を行う。
輸液蘇生(fluid resuscitation)および抗菌薬の静注と併せて外科的修復が必要である。