ポイツ-イェガース症候群

ポイツ-イェガース症候群

執筆者:Minhhuyen Nguyen, MD, Fox Chase Cancer Center, Temple University
レビュー/改訂 2021年 3月
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ポイツ-イェガース症候群は,過誤腫性ポリープが胃,小腸,および結腸に多発する常染色体優性遺伝疾患であり,特徴的な色素性皮膚病変を伴う。

大半(66~94%)の症例はがん抑制遺伝子STK11/LKB1(セリン/トレオニンキナーゼ11)の生殖細胞系列変異が原因のようである。患者は消化管および消化管以外での発がんリスクが有意に高い。消化器癌としては,膵癌胃癌小腸癌結腸癌などがある。消化器以外のがんとしては,乳癌,肺癌,子宮体がん,卵巣がん,精巣腫瘍などがある。

皮膚病変は,皮膚および粘膜のメラニン色素斑で,特に口腔周囲部,口唇と歯肉,手,および足で認められる。頬病変を除き,いずれも思春期までに消える傾向がある。ポリープは出血することがあり,しばしば閉塞または腸重積症をもたらす。

ポイツ-イェガース症候群の診断は臨床像から示唆される。口腔周囲部もしくは頬部の色素沈着および/または2つ以上の消化管の過誤腫性ポリープもしくはポイツ-イェガース症候群の家族歴を有する患者は,STK11変異の検査など,本症候群について評価すべきである(American College of Gastroenterologyの遺伝性消化器癌症候群の遺伝子検査および管理に関する診療ガイドラインも参照)。

ポイツ-イェガース症候群患者の消化器癌サーベイランスの方法としては,8歳から開始する大腸内視鏡検査,上部消化管内視鏡検査,およびビデオカプセル内視鏡検査があり,そこでの所見に応じてその後のサーベイランスの実施時期を決定する。乳癌,卵巣がん,子宮内膜癌,および子宮頸癌のサーベイランスには,18歳から開始する乳房自己検診を含めるべきであり,その後25歳からは年1回の内診,骨盤内または経腟超音波検査,パパニコロウ(Pap)検査,ならびに乳房MRIおよび/またはマンモグラフィーを含めるべきである。さらに,膵癌のサーベイランスを30歳から開始し,磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)または超音波内視鏡検査を含めるべきである。精巣診察による精巣のサーベイランス(セルトリ細胞腫に対して)を,出生時から青年期まで年1回行うべきであり,異常を触知した場合または女性化が生じた場合は超音波検査を施行すべきである。ポイツ-イェガース症候群患者は肺癌のリスクが高いにもかかわらず,特異的なスクリーニング法は推奨されていないが,患者が喫煙者である場合は考慮すべきである(American College of Gastroenterologyの遺伝性消化器癌症候群の遺伝子検査および管理に関する診療ガイドラインも参照)。

第1度近親者に対し,ポイツ-イェガース症候群の皮膚病変がないか評価すべきである。

1cmを超える大腸ポリープは典型的には切除する。

ポイツ-イェガース症候群についてのより詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. American Gastroenterological Association: Guidelines for genetic testing and management of hereditary gastrointestinal cancer syndromes

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