成人における黄疸の機序と主な原因

機序

示唆する所見*

非抱合型高ビリルビン血症

ビリルビン産生の亢進

一般的:溶血

比較的まれ:大きな血腫の吸収,無効造血

肝胆道疾患の臨床症状はあっても少ない;ときに貧血,斑状出血

血清ビリルビン値は通常3.5mg/dL未満(59μmol/L未満),尿中にビリルビンは認められず,アミノトランスフェラーゼ値は正常

肝臓へのビリルビン取込みの減少

一般的:心不全

比較的まれ:薬物,絶食,門脈大循環シャント

肝臓での抱合の低下

一般的:ジルベール症候群

比較的まれ:エチニルエストラジオール,クリグラー-ナジャー症候群甲状腺機能亢進症

抱合型高ビリルビン血症†

肝細胞機能障害

一般的:薬物毒性物質ウイルス性肝炎

比較的まれ:アルコール性肝疾患ヘモクロマトーシス原発性胆汁性胆管炎原発性硬化性胆管炎脂肪肝炎ウィルソン病

アミノトランスフェラーゼ値は通常500U/L(8.35μkat/L)を超える

肝内胆汁うっ滞

一般的:アルコール性肝疾患薬物毒性物質ウイルス性肝炎

比較的まれ:浸潤性疾患(例,アミロイドーシスリンパ腫サルコイドーシス結核),妊娠,原発性胆汁性胆管炎脂肪肝炎

黄疸は徐々に発症し,ときにそう痒を伴う

重度の場合,粘土色の便,脂肪便

長期間にわたる場合,体重減少

アルカリホスファターゼおよびGGT値は通常,正常上限値の3倍を超える

アミノトランスフェラーゼ値は200U/L(3.34μkat/L)を下回る

肝外胆汁うっ滞

一般的:総胆管結石膵癌

比較的まれ:急性胆管炎,膵仮性嚢胞,原発性硬化性胆管炎,過去の手術による総胆管狭窄,その他の腫瘍

原因に応じて,臨床像が肝内胆汁うっ滞と類似する場合や,より急性の疾患となる場合(例,総胆管結石や急性膵炎による腹痛または嘔吐)がある

アルカリホスファターゼおよびGGT値は通常,正常上限値の3倍を超える

アミノトランスフェラーゼ値は200U/L(3.34μkat/L)を下回る

その他の比較的まれな機序

遺伝性疾患(主にデュビン-ジョンソン症候群ローター症候群

肝酵素値は正常

* 原因疾患の症状や徴候を認めることがある。

†尿中にビリルビンが認められる。

GGT = γ-グルタミルトランスフェラーゼ。

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