代謝性アルカローシスの原因

原因

備考

重炭酸イオン(HCO3)の過剰

ミルク・アルカリ症候群

慢性的な炭酸カルシウム制酸薬摂取はカルシウム負荷およびHCO3負荷を招く;高カルシウム血症はPTHを低下させることにより,HCO3の再吸収を促進する

NaHCO3負荷

過量負荷または低カリウム血症のある患者での負荷に伴って生じる;Hが細胞内に戻ると,血清はよりアルカローシスに傾く

高炭酸ガス血症後*

体液,K,およびClの喪失を伴う,代償性HCO3濃度の持続的な上昇

有機酸アシドーシス後

乳酸またはケト酸からHCO3への変換が,アシドーシスに対するHCO3療法によって悪化する

濃縮性アルカローシス*

利尿薬(全種)

嚢胞性線維症での発汗による喪失

NaClを喪失すると,より少ない総体液量に固定量のHCO3が集中する

消化管からの酸の喪失*

先天性クロール下痢症

便中へのCl喪失およびHCO3貯留

嘔吐または経鼻胃管吸引による胃酸喪失

HClおよび酸の喪失に加え,濃縮性アルカローシス(アルドステロン放出およびそれに続くHCO3再吸収に起因する)

絨毛腺腫

おそらくカリウム欠乏に続発

腎臓からの酸の喪失

バーター症候群

まれな先天性疾患で,アルドステロン症および低カリウム性代謝性アルカローシスを引き起こし,小児期早期に腎臓からの塩類喪失および体液量減少を伴い発症する

利尿薬(サイアザイド系およびループ利尿薬)‡

複合的機序:体液量減少,Cl喪失,または濃縮性アルカローシスに起因する二次性アルドステロン症:カリウム喪失が共存するためCl不応性のことがある

ギッテルマン症候群

バーター症候群と同様

低マグネシウム血症および低カルシウム尿症が追加で存在することが特徴

若年成人で発症

低カリウム血症および低マグネシウム血症

カリウムおよびマグネシウムの再吸収ならびに水素の排泄を刺激する

欠乏が是正されない限り,アルカローシスはNaClと補液には反応しない

カリウムが低値であると水素が細胞内へ移動し,細胞外pHが上昇する

原発性アルドステロン症

先天性副腎過形成症を含む

二次性アルドステロン症

体液量減少,心不全,腹水を伴う肝硬変,ネフローゼ症候群,クッシング症候群もしくはクッシング病,腎動脈狭窄,またはレニン分泌腫瘍に合併

グリチルリチン含有化合物†(例,甘草,噛みタバコ,カルベノキソロン,Lydia Pinkham’s vegetable compound)の使用

グリチルリチンは酵素を阻害して,コルチゾールがより活性の低い代謝物へ変換されるのを抑制する

その他

飢餓後の炭水化物摂取再開

飢餓性ケトーシスまたはアシドーシスの消失とそれに伴う細胞機能改善

下剤乱用*

機序不明

一部の抗菌薬(例,カルベニシリン,ペニシリン,チカルシリン)

非再吸収性陰イオンを含み,この陰イオンによりKおよびHの排泄が増加する

*Cl反応性。

†Cl不応性。

‡Cl反応性とCl不応性のいずれの場合もある。

Ca = カルシウム;Cl = 塩化物;H = 水素;HCl = 塩酸;HCO3 = 重炭酸;K = カリウム;Mg = マグネシウム;NaCl = 塩化ナトリウム;NaHCO3 = 炭酸水素ナトリウム;PTH = 副甲状腺ホルモン

関連するトピック